第21話 緋色の秘宝ダンジョン2
ダンジョンに入って30分が経過した。いま私達は四階層にまで到達していたが、しかし予定していた地点よりも少し遅れていた。
「次の階層への階段を発見したわ」
「トラップも無さそう」
賢者ティティアナと狩人ブルーで二人がかりの素早い調査により、周囲には危険が無さそうだということが判明。次の階層へ向かおうとした、その前にレッドが一言。
「よし、次の階層で一旦休憩を取ろうか」
「オッケー」「了解!」「お休みですね」
レッドの指示により皆の士気が高まる。階段を降りて行けば次は五階層に到着するということで、ちょうど予定の半分というところ。休憩するのにも、ピッタリのタイミングだった。
事前に打ち合わせした予定では、50分で十階層まで到達してから階層ボスと勝敗を決するまでに1時間というぐらい。
1時間あれば目標達成出来るだろうと予定していたけれど、ちょっと難しそうだ。かといって、焦ってダンジョンを進むスピードを上げるのは危険そう。不慮の事態によって簡単に全滅、という事もあり得る。
なので、タイムアップになるまでは慎重に進めつつ、死なないように注意しながら皆で目標達成を目指す。
「聖域を構築しました。皆さん、お疲れさまです」
「ありがとう、ティティアナ」
ティティアナが、賢者のスキルを使ってモンスターの侵入を防ぐ領域を作って休憩できる場所を準備した。皆が彼女に一言お礼を言って、休憩場に入っていく。
戦いで消耗するヒットポイント、マジックポイント。時間が経てば緩やかに回復をしていく。
ダンジョンに持ち込める回復薬も数が限られているから、緊急の時以外になるべく出し惜しみした方が良い。だから、このように途中で休憩を挟む事がダンジョン攻略では非常に大事だった。
【休憩ターイム】
【今のうちにトイレに行く人は行っておいで】
【まだ大丈夫かな】
【早く続きが超気になる】
「視聴者の反応とかメッセージはどんな感じ?」
「いい感じですよ」
戦闘で後衛を任されていた私は、モンスターとの戦闘中やダンジョンの道中で手の空いたタイミングで、視聴者の反応やメッセージの確認を行っていた。
「同時接続視聴者数が1万人を超えてますよ。今も、じわじわと増えていて1万人と1000人に届くか届かないか、という感じです」
「ということは、このゲームにログインしているプレイヤーの半分ぐらい、この放送を見てくれているということか」
リフゼロのアクティブユーザー数は約15万人。そのうち同時ログインユーザー数の平均が1万~2万5千人というデータが公式から発表されている。おそらく、今の時間にログインしているユーザーの数は、おおよそ2万人ぐらいだったか。
この公式生放送の映像は、街の特別区間に設置されていた巨大スクリーンや、各地のダンジョン前にも置かれている巨大スクリーンで見れるようになっている。
そして今、私達が潜って攻略している緋色の秘宝ダンジョン入り口に、巨大なスクリーンが設置されていて、多くの視聴者やプレイヤーから見られているという状況になっている。
その他に、ウィンドウを開いて生放送の映像を見ることが出来る。そうやって見ているプレイヤーが1万人以上も居ると考えると、とんでもないことだと改めて思う。
【つまり視聴率50%超えってこと? ヤバッ】
【後に伝説として記録に残る】
【おーい見てるよー!】
【見てま~ス!】
【コッチ向いてフォルトゥナ様~】
【記念に、自分のメッセージを残しとこ】
「ホントだな。どうだ、今の所見ていて面白いのか視聴者さん?」
レッドがウィンドウを開いて、メッセージをチェックする。そして、現時点での評価を視聴者に尋ねた。
【面白い】
【リアルな冒険者パーティーが、リアルなダンジョン攻略をしている様子が最高】
【戦闘見ているだけで、楽しいです】
【レッド! なかなか、良いリーダー振りだぞ】
【ダンジョン攻略、パーティーへの指示、参考になります】
「こうやって、レスポンスが有るのが面白いよね」
かなり好意的な評価が返ってきて、ブルーは喜びながら面白がっていた。
「ほら、視聴者に向けて手を降ってあげなさいよフォルトゥナちゃん」
カメラを指差して含み笑いを浮かべながら、私にそう言うエリノル。
「敬語を忘れてるよ、エリノル」
「お願いできますか? お嬢様」
「フフッ」
エリノルの切り替える速さに思わず笑いながら、私はカメラに向かって手を振ってみた。すると、即座に物凄い反応が返ってきた。
【うぉぉぉ! 笑顔カワイイ】
【カワイイ!】
【かわいい】
【かわいい】
【俺に手を降ってくれている。尊い】
【笑顔を生んだ騎士ナイス。しかし貴様は不敬罪だ】
【今の二人の関係は趣があるなぁ】
「あ、うわ、ちょっと視聴者さん落ち着いて」
ババッとメッセージが次々に流れていく。その数の多さとスピードに思わず待ったをかける。
【慌てている姿もイイ!】
【ハの字の眉毛が最高】
【困っているカワイイ】
【落ち着くのはフォルトゥナちゃんの方だね】
【わっしょい! わっしょい!】
「あ、駄目ですね。休憩は終わりにして次に進みましょう!」
「え? あ、おう。わかった。休憩は終わりにして、次に進もうか」
生放送を見てくれている視聴者とのやり取りをしている間に皆の回復も終わって、次は五階層の攻略が始まった。
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