第40話 公式番組の打ち合わせ
「みなさま本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
プロデューサーの伊田さんが会議室に入ってくると挨拶もそこそこに、打ち合わせが始まった。そして彼の他に二人の男性も一緒に部屋の中へ入ってきた。
「こちらは、ディレクターの中宮。前に一度だけゲームの中で皆さんと会ったことがありますね」
「よろしくおねがいします」
ホワイトボードの前に立って進行をする伊田さんが、スタッフを紹介してくれた。頭を下げて挨拶する男性は、たしか以前ゲーム内で出会った人だった。
「そしてこちらが、チーフプログラマーの木下です」
「どうも」
伊田さんに紹介されて一言だけ口にする男性。そっけない挨拶で済ませる彼とは、初めて出会った。その後、黙ったまま静かに椅子に座った。
「それで本日の議題なんですけど、以前から話し合って準備を進めてきた公式番組について、ですね」
事前にボイスチャットでも何回か会議を行ってきた、直前に控えている公式番組についての最終的な情報交換を今日行う予定だと聞いている。
「この番組の目的はもちろん、リフゼロについての情報をユーザーに発信していく事です」
伊田さんが打ち合わせの資料を配りながら、改めてみんなの共通認識となっている目的を口に出して確認する。私達は資料を受け取って頷きながら応えた。
「それではまず番組のオープニング曲についてなんですが、以前からお知らせをしていた通り、小野間さんにお任せしています」
「はい、レコーディングも無事に終了したので大丈夫ですよ」
実は今日まで色々と作業をしてきて完成まで至っている。ゲーム外だからだろう、私はプロデューサーから初めて本名で呼ばれた。そんな事を考えつつ進捗についてを報告する。
「へぇ、楽しみ」
「どんな曲だろうな」
「小野間さんは歌が上手いからなぁ」
皆から、楽しみだと期待する言葉を掛けられた。
「是非、番組の本番を楽しみにしていて下さい」
私は自信満々に彼らを期待させる言葉を放った。レコーディングを終えて数日後に送られてきた音源をミックスした完成版を初めて聞いた時、普段そんなに自信を持てない私でも満足できる自信作と言えるモノが出来たと喜べたから。
私の歌が上手いというよりも、音を調整してくれたミックスを行った人の技術力が非常に高かったお陰だろうと思うけど。とにかく、人に誇れるぐらいの自信が持てる良い曲に仕上がっている。
「実はオープニングについて伊礼さんにも関わってもらって、作業を進めていたんですよね」
「え? 伊礼さんも何かやってたの?」
それは初耳の事実だった。彼女からは特に何かしているという話は聞いていない事だったので、どこで関わっていたのか私は知らない。一体どこだろうか。
「アタシのも本番までのお楽しみだよ、志穗ちゃん」
どうやら秘密の話らしい、そう言って伊礼さんは教えてくれないようだ。伊田さんに視線を向けるが、彼も含み笑いをして話してくれそうになかった。本当に、本番になるまでのお楽しみということらしい。
「伊礼さんがそう言うので、そういうことで」
「わかりました、なら本番の時まで楽しみにしていますね」
一体なんだろう、想像がつかないがワクワクする。とにかく楽しみにしておこう。そこでオープニング曲についての話し合いは終わり、次の話題に移る。
「次に番組内で紹介する新機能、ギルド制度とプライベートルームですね」
今まではダンジョンを攻略する直前にパーティーを組んで、終わったら解散となるパーティー制度しかなかった。より強い繋がりを実現するためにプレイヤーが集まり軍団を作るギルド制度、というものが今回実装されるという。ゲーム内でも結構要望が多かったらしくて、ようやく実装となるのかと思った。
このお知らせを聞いて、喜ぶプレイヤーも多いだろう。
ギルドに所属することで今後はイベントや大会にも関係してくるらしい。他にも、様々な恩恵を受けられるようにする機能等が増えていく予定だそうだ。
「それから、プライベートルームについて」
自分だけの拠点を構えることが出来るようになる機能。実は、私は他のプレイヤーに先んじてプライベートルームを体験させてもらっていた。私のキャラクターであるフォルトゥナが魔法学校に通っている、ということで魔法学校の学生寮にある一室をプライベートルームとして利用していた。
他のプレイヤーは許可が無ければ入ってこられないように出来る自分だけの場所で、家具や内装を自由に変更したりアイテムの保管場所として使える。
「この2つが、今回の番組で発表する新情報ですね。何か質問などあれば」
「あ、はい。質問あります」
思いついた疑問について次々と質問していく。私は第一回の公式番組に出演をする予定だったので、番組を無事に成功させるためにも新機能について正しく紹介できるように把握しておかないといけないと思ったから。
「それじゃあ大体、第一回放送についての話し合いは以上ですね」
一時間程して打ち合わせは終わった。主に情報交換と確認についての話し合いが、行われた。
「一応、公式番組の放送は三回までを予定していて様子を見ていきます。それから、第二回の出演者にはティティアナの大和屋さんとブルーの千木良さんの二人に任せる予定で、第三回にはレッドの石坂さんと、ヴェルの黒石さんにお任せする予定です。放送内容はまだ未定ですので決まり次第、追って連絡をします」
「うん」「了解」「わかりました」「はい」
まずは第一回目を任された私と伊礼さんの二人で上手くスタートを切れるように、頑張らないと。プレッシャーが凄いな。
「打ち合わせはコレで終わりです。それで次に、実はみなさんに体験してもらいたいVRデバイスの最新機を用意してあるんです」
打ち合わせが終わった後、伊田さんに連れられて私達は会議室から出て別の部屋へと案内された。
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