リアル交流
第28話 オフライン・ミーティング1
リフゼロの公認プレイヤーとして今後これから、色々な活動が増えていく予定だ。公式番組、歌、ゲーム内でのロールプレイ等の様々なスケジュールが組み立てられていく。ここ数日でスタッフとの打ち合わせを何度も繰り返し行ってきた。
今まではオンライン上でボイスチャット、もしくはリフゼロのゲーム内という仮想空間内での打ち合わせがメインだった。
公認プレイヤーとしての活動がどんどん増えてきているので、近々オフラインでの打ち合わせをする、ということが決定した。オンライン上では話せない今後に関する重要な取り決めについての話し合いが必要らしい。
これは、オンライン上だけで決定するのが難しい議題もあるから、実際に顔合わせをして会議して決めたい、という事らしい。
つまり私は、現実世界でリフゼロというゲームの開発元であるフェニレートのビルを訪れて、スタッフ達やゲーム仲間の皆と初対面して話し合いを行う、ということ。
しかし私は、彼らと初めての顔合わせに強い不安を感じていた。
ネット上で出会ってから色々なゲームを一緒に楽しんだり、今では一緒に働く同僚の公認プレイヤー同士の仲間にもなった。会うのに不安を感じるというのは、彼らが嫌いだから、という訳ではない。
むしろ、好きだからこそ彼らと初対面して悪印象を持たれたりして、嫌われたくはないという思いが強かった。
今に至るまで詳しいプロフィールや過去を詮索したり、現実世界の顔については誰にも聞かなかったから質問はしなかった。だから、今回が初めて彼らのリアルを知ることになる機会。興味はあったけど詮索はしたくなかったし、されたくなかった。
私はレッドやエリノルの顔は知らないし、本名や職業についても聞いたことがないから詳しくは知らない。彼らの声を知ったのも、リフゼロをプレイし始めてからだったから、かなり最近のこと。友達だけど、ネット上だけの交流が主だったから。
でも、すごく仲は良いと思う。現実の顔は知らない、という奇妙な間柄だけど。
ゲームのアバターがあったから、今までお互い顔について言及してこなかったし、機会も無かった。ネット上の繋がりである彼らに対して、どんな顔をして居るのかというのは聞きづらい。
だから今回のオフラインでの打ち合わせが、現実世界での初対面の良い機会となるかもしれない。でも、私は不安に感じている。
まったく知らない者同士だったらなら、今現在の私のような不安を感じなかったと思う。ゲーム友達であるエリノル、ティティアナ、レッド、ブルー、ヴェルの5人にリアルで初めて会う、というのが怖いと思った。
自分でも何が不安なのか、何が怖いのか、こんなに怖がってしまうのは何故なのかを上手く理解できない。でも彼らと会ってみたいとも思っている。だから今回の機会で、なんとか勇気を振り絞れば克服できそうだとも感じていた。
とにかく、皆と出会う前に慣れておけばいい。私が頼ったのはエリノルだった。
【オフラインで皆とするミーティングの前に私達二人で会いませんか?】
まるで出会い系でもするかのような文面で突然メールを送りつけてしまった。急な誘いだったので都合が悪くて断られるかも、無理かもしれない。
これで、エリノルから断られてしまったらどうしようかな。やっぱり先輩にメールなんて送らなければよかった、という感じでパソコンの前で心配していた。すると、すぐに返事があった。
【いいよ! 私も、皆よりも先にフォルトゥナに会っておきたいな!】
【よかったです。いつ会えますか】
【予定は、いつでも合わせられるよ】
【なら、3日後とかどうですか?】
【オッケー問題なし。顔合わせしてから、一緒に遊ぼう!】
【よろしくおねがいします】
思っていたよりもスムーズに約束を取り付けることが出来た。エリノルが乗り気で居てくれたので、すごく気が楽になった。楽しみでもあり不安も大きい。
ネット上ではチャットでやり取りしているし、リフゼロのゲーム内では雑談をしながら2人でマップを放浪したりする仲だった。かなり親しい友達だけど、相手の顔を知らない人と会う約束する。通算40歳を超えている私だったが、初めての体験だ。
というか、そんな年齢を重ねているのに初めての人に会うというだけで、こんなに緊張してしまうのか。自分はいつからこんな人見知りになってしまったのだろうか。思考がぐるぐると、ネガティブな考えに嵌っていってしまう。
駄目だ。今はエリノルとの初めての顔合わせに集中をしよう。快く会う約束もしてくれたし、彼女との出会いが成功すれば後の4人も大丈夫そうだと思う。だからこそ頑張ろう。
そして、約束の三日後はすぐにやって来た。
***
どうしよう、見つからないな。
約束していた時間、約束の場所である都内の初めて来る大きな駅に到着したのだが、そこにエリノルの姿は見当たらなかった。
静岡県に住んでいる私の方から、都内に住んでいるというエリノルに会いに来た。約束をした私のほうが会いに来るべきだと思ったのと、いずれ打ち合わせで訪れる事になるであろう、フェニレート本社ビルが東京にあったから一度は来てみて、確認をして慣れておこうと考えたから。
事前に教えてもらった服装の目印を頼りにして、彼女を探してみる。だが、一向にそれらしい姿を見つけることが出来ない。念の為に約束していた場所の近場をぐるりと歩いて探してみたけれど、出会えなかった。
もしかして集合場所や約束した日時を間違えたのかもしれない。目印の服装が間違っているかも。もしくは、今までの間に見落としていたとか。色々な可能性を考えてみるが、エリノルとは出会えなかった。
というか、これだけ見つからないのなら事前にお互いの顔だけでも写真なり何なり送って、教えあっておけば良かったと今更になって後悔する。だが、もう遅かった。よくよく考えれば、目印の服装とかよりも先に顔を知っておかないと。
友達だけど顔は知らない人物を駅前で人が沢山居る中を必死で探してみるが、どこにも見当たらなかった。連絡先は聞いていた事を思い出す。ここに連絡するべきか。でも、もうちょっと連絡するのは待って探してみようか。
どうしようかとテンパりながら、どうしようと行動を迷っていると、突然後ろから聞き覚えのある女性の声で呼びかけられた。
「あの、フォルトゥナちゃん、ですか?」
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