第10話 お着替え
建物の中に入ると、現実にあるような服屋のように服やアイテムが店内にずらりと並べられてある。
「さぁ、選ぼう」
中も作り込みが凄いな、と感心しながらエリノルに最初の装備を選んでもらう。
「着てみて」
装備アイテムを手渡されて、着替えを急かされる。しかし、コレどうやって着替えるのだろうか。ゲームによくある方法だとしたら、ウィンドウから装備を選んでから着替えるのだが。このリフゼロでは、どうか。というかVRではどうやるのか。
「これって、ウィンドウの装備入れ替えで着替えられるんですか」
「そう、それ。入れ替えるだけで見た目が変わるよ」
なるほど、普通のゲームとあまり変わりはないのか。理解して半透明のウィンドウをタッチ、装備変更から服装をチェンジする。
身体がパッと眩しいぐらいに光ったと思ったら、次の瞬間には私の着ていた服装が変わっていた。
「そうか、こうやって一瞬で終わるんですね」
「せっかくなら、ちゃんとした着替えるシーンを見せてくれたら良いのに」
「いや、流石にそれはちょっと色々と難しそう」
あまりリアルに作りすぎると、着替えだけで年齢制限が必要になってきそうだ。
「まぁ、そうだよね。それじゃあ、次はコレを着て」
「うー」
店の中にある服装を次々と試着を繰り返して、エリノルが気に入る装備探しに付き合わされた。何着もチェンジさせられたけれど、着替えが楽なのが良かった。次々に装備を渡されても、あまり面倒くさくはなかった。
「服装のパターン、いっぱいあるんですね」
「それね。アタシも驚いた」
3Dモデルに合わせた服装パターンが、確認しただけでも10種類以上も有った。しかも、似たようなモノの色違いとかではなく、系統が別で様々なデザインのモノが用意されている。
そして、コレでも全体のほんの一部だというから驚きだ。
「ヴェルが色々とアイテムを作ってるから、見せてもらったら面白いかも。ホントに凄い数のアイテムを作ってるから」
ヴェルとはチャットメンバーの仲間である。特にものづくりが好きで、ゲームでもクラフト系のジャンルを好んでいるというイメージのある人。
「ヴェルさんは確か生産系をメインにしてる、って言ってましたよね」
「うん。やっぱり彼は、そういうジャンルが好きっぽいね。このゲームでも、職人を目指して頑張っているよ」
「へー、そうなんですか。他の3人はどんな感じですか」
チャットメンバーの皆も、このゲームをプレイしているのは聞いていたので他の人がどんな感じで楽しんでいるのかが気になったので尋ねてみた。エリノルが答えてくれる。
「レッドとブルーの二人は、攻略組に加わって遊んでるみたいよ。ベータテストから参加して、初日から今までずっとダンジョンに籠もってレベル上げしているみたい」
「あー、やっぱり」
レッドは、チャットのグループを作ってメンバーの皆を集めたリーダー的な存在だ。名前もレッドと名乗っていて、それっぽい。
ブルーは、レッドのリアルでも友達という関係らしい。いつも二人一緒になって、ゲームをプレイしているという印象。
「それからティティアナは、ゲームの世界観を楽しんでた。ストーリー考察隊を立ち上げて、今は王都に居るNPCキャラの過去を探偵のように探って楽しんでる状況だって」
「このゲーム、そんな事も出来るんですね」
ティティアナは、ストーリー系重視のゲームを好んでいるイメージ通り。コチラでも同じ様に遊んでいるらしい。
「NPCの会話は一定パターンらしいけど、そのパターンから読み解いたり、各所に置かれた文書を見つけて整理してストーリーを楽しんでるね」
「ほう! それは、なかなか面白そうですね」
「情報とかテキストを探し出すのは大変そうだけど、ティティアナから話を聞くのは面白いよ」
それぞれ皆が自分好みの楽しみ方を見つけて、ゲームを楽しんでいるようだ。
「みんな、それぞれで楽しんでるんですね」
「アタシたちも楽しもうか。じゃあ、行こう」
「行きましょう!」
買い物を終えて私達は建物から出た。装備の支払いもエリノルに出してもらって、上から下まで一式を買ってもらうことになった。
買ってもらった服装は、魔女っぽい帽子に膝下まであるワンピース。足元はブーツという組み合わせの、若くて活発な印象がある格好だった。
前衛は大剣を装備しているエリノルに任せて、後衛は魔法を駆使する私が担当して2人で役割分担をして隊形を組む。
***
街の外に出ていくと、早速モンスターが目の前に現れて戦闘が始まった。
最初のクエストだけあって、エリノルの手伝いもあったからだろう。結局、5分も掛からずクエストの目標を達成してクリアしてしまった。
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