第7話 ゲーム・スタート
キャラクタークリエイトとチュートリアルを消化するのに2日も掛かったが、今日ようやくゲームをスタートすることができた。
VRデバイスを身体に装着して横になる。ゲームを始めると、早速オープニングの映像が目の前に大きな画面で流れ出した。これで、このゲームのストーリーを教えてくれるらしい。
***
大賢者シャムウェルが死ぬ間際に残したと言われる予言。
――人類は、そう遠くない未来に滅びるであろう。
滅びる定めがあるという人類の未来を回避するためには、4つの秘宝を集める事が必要らしい。そして、その秘宝はダンジョンの最深部に隠されているという。
プレイヤーの目的は、世界各地にあるダンジョンを攻略して隠された4つの秘宝を集めること。
映像と調和した音楽が流れるのを見て聞いて、鳥肌が立つのを感じるぐらいに私は興奮していた。久しぶりにゲームのオープニングを見て、ワクワクしていた。事前に何も情報を調べていないので、これからどんな事が起こるのか心が弾んでいる。
***
オープニングの映像が終わって、地面の上に降り立った。スッと視界が開けると、街の風景が目に入ってくる。
足の裏からも本当にその場に立っている、という様な感覚が本当に伝わってきた。凄い技術だなぁと、ただただ関心する。リアル過ぎる、この世界に本当に居るんだと錯覚してしまいそうな没入感。
前世でも、フルダイブ型のVRゲームはプレイした、という経験は無かったから。いきなり、こんな進化した技術を味わえるなんて幸せだ。
というか私の記憶によれば、その頃はまだVRの技術が完成に至っていなかった筈。私の前世は、今よりも一昔前の年代だったみたいだと今更になって知る。
生まれ変わりによって、未来の技術だったVRゲームをプレイできる。その事を、本当に感謝していた。生まれ変わりがなければ、この体験が出来なかったんだなぁと、しみじみ思う。
ゲームが始まって最初に降り立った場所は、街の中だった。
私と同じように、今日からゲームをスタートさせたであろうプレイヤーが何人か居た。私と同じ様に質素な服装を着ていて、街の風景をキョロキョロと見回している。これは、ゲームスタートと同時に配布された初期装備だろう。
聞いた話によれば、このゲームは装備の数が豊富で自由に着飾ったり好きに出来るらしい。アイテムの数が多いということは、防具選びも大変だろうし心躍るらしいとのこと。とても楽しみだ。
しかし私と同時期にゲームを始めた彼ら、彼女らは早々にこの場から移動を開始した。慣れた様子で、足取りには迷いもない感じだ。VR系ゲームに慣れたプレイヤーなんだろうな。
私のようなVR系ゲームが初体験の者にとっては、このスタート地点から既に力の入った風景に目を奪われて、しばらくの間その風景を眺めていた。
本当の世界なんじゃないかと錯覚する程にリアルな景色で、ただ眺めているだけで楽しくて、街の中を歩いて見て回ってみた。
「本当に、綺麗だなぁ……」
レンガ製の建物が建ち並ぶ風景の中には、街の住人達もいる。ノンプレイヤーキャラクターみたいだけれど、一人ひとりに名前と年齢、レベルや職業なんかが設定されているらしい。
それだけではなくて、本当かどうかは定かでないが、一人ひとりのキャラクター達に異なったバックストーリーまで用意されているらしくて、同一のキャラクターはこのゲーム内に存在しないらしい。
プレイヤーが操作するキャラクターも、きっちりと設定を決めて作り上げている。なので、この仮想世界には同じ人物は存在しないと言える。
さらに、ノンプレイヤーキャラクターの設定と実際に存在してゲームをプレイするキャラクターの設定が組み合わさって、ストーリーに反映される事もあるらしい。
その相互作用によって、リミット・ファンタジー・ゼロはリアルだと感じる世界観を生み出している。
なるほど、世間で評価されている理由を垣間見たという感じだった。
【ゲーム始めた?】
街の中を歩いて見て回ってると目の前に突然、パソコン・モニターのような半透明の画面が現れた。そこに文字が表示されている。
送り元は”エリノル”というキャラクター。それは、チャットの仲間からゲーム内で送られてきたメッセージのようだった。
昨日、プレイを始めると伝えてあった。私が、ゲームの中にログインした事に気付いて連絡をしてくれたようだった。
【うん。いま最初の地点で観光してる】
【おっけー、合流しようよ。すぐ向かうから待ってて】
返信をすると、そんな答えが返ってきた。ここで待っていたら良いのかな。いま私がいる場所とか、しっかりと伝えたりした方がいいのか。
でも、自分が居る場所について詳しく分かっていない。風景に気を取られて目的先もなく適当に歩き回っている間にちょっとした迷子になっていた。
でも、向こうから来てくれるみたいだし、とりあえず待っておこう。
【了解】
私は、来てくれることを信じて簡単なメッセージをエリオル宛に送って仲間の到着を待つことにした。
「よ。おまたせ」
「え!?」
しばらく待っていると、ハスキーな女性の声が背後から聞こえてきた。
慌てて振り返ると、全身鎧を身に纏った長身の女性キャラクターが片手を上げて、フランクな感じで立っていた。
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