第45話 新機能2プライベートルーム

「それでは、次に2つ目の新機能について説明します。こちらです!」


 画面には誰かの部屋というような画像が、次々と切り替わって映し出されていく。映画のセットのようなファンタジー風の木製アンティーク家具が置かれている部屋、石造りの寒々とした部屋に、咲き乱れた花で飾られた部屋等など。


「こちらは、リフゼロの新しい機能プライベートルームです」


 画面に映る場所は、プレイヤーが利用することの出来る部屋。その利用イメージが映し出されていた。


【なになに?】

【新マップか】

【部屋の中?】

【プライベートルームとは?】


「新機能によってプレイヤーの皆さんは、リフゼロの世界に自分だけの空間を持つ事が出来るようになります!」


【さっき画像に映った部屋に住みたい】

【自分だけの空間?】

【詳しく】

【どういうこと?】


「詳しく説明する前に、まずは見てもらいましょう」

「プレイヤーの皆さん移動しますね」


 私は魔法を駆使して、リフゼロ世界の中をエリノルを連れて瞬間移動する。本来はダンジョンから街へ緊急帰還するための魔法なのだが、今日は本来とは違った使い方で、私のプライベートルームに直接飛べるように設定されている。


 ということで、私達はムルガルディア国の魔法学校にある学生寮に来ていた。


「到着しました。ココは私の部屋ですよ」

「お邪魔しまーす」


 私は他のプレイヤーに先んじて、学生寮というプライベートルームを運営から提供されていた。新機能であるプライベートルームについて、皆よりも先に体験させてもらっていたのだ。


 公認プレイヤーの中でも、私一人だけが先に体験させてもらっていた。エリノルや、レッド達もまだプライベートルームは提供されておらず体験はしていなかった。


 一度だけ、入室許可したプレイヤーのみ室内に入れることが出来るという招待機能を確認するためにエリノルに来てもらったことがある。それ以外は色々と興味津々で聞いてくる仲間にも、黙秘を行使して情報漏えいを何とか阻止してきた。そして今日ようやく正式に情報を口に出すことが出来る。


「ここがフォルトゥナ様の部屋ですか。可愛いお部屋ですね」

「そんな事ないですよ。学生生活するのに使ってる普通の部屋です」


 ジロジロと室内をじっくり観察されると、やはり仮想空間とはいえ自分の部屋だし恥ずかしい気持ちになった。とは言っても、部屋の中に置かれている家具はベッドと机にアイテム整理のチェスト、あとは魔法使いっぽさを演出する為の家具アイテムをインテリアとして置いてあるぐらい。何の変哲もない学生の部屋だ。


 これは、可愛いと言えるのだろうか?


【魔法使いっぽい部屋だな】

【水晶とか特にそれっぽい】

【モンスターからのドロップ品も部屋のインテリアとして飾れるのか】

【めちゃくちゃシンプルな部屋】

【ベッドとか机は平民の農夫が使うヤツみたい】

【貴族のお嬢様なのに意外と質素な設定?】


「あれ? そういえば前に来た時とは、ちょっと家具の配置が違ってる?」

「片付けたんですよ。基本的にはプライベートルームは部屋主のプレイヤーだけしか入れないのですが、今やっているように許可を出せば他のプレイヤーを自室に招く、ということも出来るんです」


 エリノルを部屋に招いた時は色々と試していた時期だったから。その頃と比べると確かに家具とかは少し違う配置になっているかも。


【観賞用? ゲームの攻略には関係ない感じかな】

【許可がなければ他人は入れない。まさに文字通りゲーム内で自分だけの空間か】

【部屋の作り込みエグそう。本来のゲームの目的を忘れてハマってしまいそうだ】


「ぬいぐるみも片付けたの?」

「ぬいぐるみ? いやいや、そんなの置いてなかったですよ!?」


 突然、そんな事を言い出したエリノルにびっくりした。そんなのは一度も置いてない。


 ……いや、モンスターのぬいぐるみがアイテム欄にあったから、ちょっと確認するのに置いてみたりした事もあったかもしれない。


 けれど流石にぬいぐるみを置くのは、女の子アピールのし過ぎかと反省していた。それに恥ずかしかったから、一瞬だけ置いて止めた事があったかもしれない。でも、それは誰にも見られていないはず。いつ知られたんだろうか。


【ホントに?】

【照れ隠し?】

【なんだかフォルトゥナの慌て方からマジっぽい】

【いいじゃん可愛いよ。女の子がぬいぐるみ】

【顔が赤くなってない?】

【改めて見るとキャラクターの表情認識とか凄いよな。凄くない?】

【感情がちゃんと分かるのが良いよね】


「あら、そうだったっけ。フフフ」

「焦るんで、からかわないで下さい。視聴者も勘違いしないで下さい、ぬいぐるみは部屋には置いてないので。ここは、学生生活をするのに生活して勉強したりする部屋なので」


「せっかく紹介するんだから、もっと飾り付けとかしておけば良かったのに」

「いいんですよ。私が普段から使ってる部屋を紹介するって事だったんですから」


「でも、キレイに見せるために片付けたんでしょ? 普段とは違うんじゃない?」

「流石に、汚いままの部屋は見せられないですよ」


 ゲーム内とはいえ乱雑な部屋の中で過ごすのは嫌だし、そんな部屋で過ごしていると思われるのも嫌だった。だから新機能の紹介とはいえ部屋をシンプルにしてから、家具やインテリアを飾っている所を見せる事にした。ちゃんと新機能を紹介するなら色々と試してみた様子を見せたほうが良い、とは思うけれども。


【もしやフォルトゥナちゃん汚部屋女子なのか】

【そうだとしたらショックだ】

【いや俺は信じないぞ】

【でも貴族の女の子だから解釈通りなのかも】

【屋敷内の清掃はメイドに任せるということね】

【片付けはちゃんとできるのに】


「視聴者の皆さんは安心して下さい。フォルトゥナ様は家事とかも上手ですよ。私の部屋も綺麗に掃除してくれたんだよね」

「たしかに、そんな事もありましたね」


 彼女の部屋を掃除したとかはゲーム内の話ではなく、現実世界の方での事だった。ちょっと部屋を掃除してあげたことがある。あれだけで、家事が上手と言われる程の事じゃないとは思うけれど。


【そうだよね! 信じてた】

【安心した】

【というか護衛対象に何をさせているのか】

【むしろエリノルが片付けろ】


「ご覧の通り、自分の好きなように、自由自在に部屋を作ることが出来るんですよ。自由度が非常に高くて、プレイヤーの皆さんも楽しめると思います」

「部屋の中のインテリアや家具を思う通りに配置することが出来るらしいです。家具については、リフゼロの世界を旅する道中で様々な方法によって入手することが出来ます。ぜひ、色々と試行錯誤して家具集めを楽しんでみて下さい」


【面白そう】

【見た感じでは確かに自由度が高そうだ】

【友達を呼んで自慢したい】

【部屋うpスレとか流行りそう】

【どうやって自分の部屋は手に入るの?】


 視聴者から送られてきた質問メッセージの一つが目に留まったので、私はソレを手にとって答えについて話す。


「ストーリーを進めていくと、各街で部屋を借りられるようになりますよ。そして、買うことも出来るようになりますよ。今後のイベント報酬や課金要素としても景品として出される予定があるみたいですね。様々な入手方法が有るので、頑張って探してみて下さい」


 事前に色々と運営にしつこく質問していたので、視聴者の疑問にスラスラと答えることが出来た。


「ちなみにこの学生寮は魔法使いキャラが私が在学しているムルガルディア国の魔法学校に入学することで、学生なら誰でも部屋を借りることが出来ますよ」


【魔法使いキャラのみ?】

【うわっ魔法使いを選んでおいてよかった】

【さっそく入学してきます】

【ソレが条件ということは他にも色々と条件は推理できそうだな】

【戦士の場合はどうやってプライベートルームを入手したら良いのかな?】


 まだまだ色々と質問が来ている事に気付いていたけれど、放送予定の時間もあるのでここは強引に切り上げる。


「ということで、私の部屋の紹介も終わり。さっきの場所に戻りましょう」

「えー、せっかくだからココで放送の続きをしようよ」


【もっとフォルトゥナちゃんの部屋を見たいな】

【隅々まで見せて】

【放送場所変更に賛成】

【フォルトゥナの部屋の中で2人が会話してる様子もっと見せて】


「ダメです。戻りますよ!」


 ベッドの上に座ってくつろぎ始めたエリノルを引っ張り立たせて、強引に部屋から移動させる。引き留めようとする彼女の言葉に聞く耳も持たず間髪入れずに、先程の番組美術セットが置かれた場所まで瞬間移動をして戻ってきた。

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