公式イベント
第47話 レッド部屋集合
「お疲れ様です、レッドさん」
「おつかれ~」
私とエリノルは挨拶をしながら、その部屋に入った。木製の壁と天井、部屋の中央に椅子とテーブルだけが置かれていて他には何も無いような、非常にシンプルな造りの室内。
「おつかれ、フォルトゥナ様、エリノル」
そんな部屋の中には男性が一人、鎧と武器を外した状態で椅子に座りウィンドウを操作して何かの作業をしていたレッドが挨拶を返してくれた。
ここは、とある酒場の地下にあるプライベートルームの一つだった。レッドが借りている部屋である。だが、皆で集まって会議をしたり情報共有するのに利用しているような場所だった。
公認プレイヤーの皆がいつでも自由に出入りできるように、レッドが皆の入室許可する設定をしているらしいので私達は出入りが自由だった。
外だと、万が一の場合に会話を聞かれたりすると困るような事も話す時があるので、他のプレイヤーが入ってこられないように設定して、話し合いにもちょうど良い場所として彼がメンバー皆の為に、この場所を提供してくれていた。
「他の皆は?」
「ヴェルとブルーはもうすぐ来るってさ。ティティアナは」
「ここに居るよ!」
他のメンバーの居場所についてレッドから聞いている最中に、ピョコッと部屋の奥から顔を出して挨拶してくれたのはティティアナだ。この部屋は地下にあるが、意外と部屋数が多いのかな。部屋が更に奥へと続いていそうだった。
「いやいや、待ってたよ二人共。レッドと二人っきりは緊張するから」
「俺って、そんなに緊張するのか?」
ティティアナってレッドのことが苦手なのか。そんな話は聞いてなかったけれど、確かに二人で会話している場面を見た覚えが無いかも。
「あー、これは私自身の問題だから気にしないで。レッドが悪いんじゃないから」
「まぁ、ティティアナがそう言うのなら気にしないが」
そう言いつつも、ちょっと気落ちしている様子のレッド。
「大丈夫ですよ、レッドさん。いつもレッドさんがゲームを真剣に楽しむ姿勢があるから、良い意味で緊張感が生まれてるんですよ」
「そう、フォルトゥナ! それが言いたかったの。私は、あんまりゲームが上手じゃないから気圧されるというか、なんというか」
私がレッドをフォローすると、今度はティティアナが少し気落ちする。すかさず、エリノルがフォローに入った。
「バトルに関してはそうかも知れないけれど、知識とか頭の回転はめっちゃ速いし、ゲームの仕組みに気づくのが一番早いからねティティアナは。ある意味、攻略に一番貢献してると思うよアタシは」
「……そ、そうかな! 私はエリノルとフォルトゥナの2人が、ゲームがすごく上手だから羨ましいと思うんだけどなぁ」
照れくさそうにしつつ、嬉しがるティティアナ。本気でエリノルが褒めているのが分かったからだろう、素直な褒め言葉に顔を赤くして恥ずかしながら評価を受け止めていた。
そして、何故かティティアナは続けて私のことも色々と褒めてもくれる。実は頭が良いとか、しっかりしてるとか、気が利くとか色々な事を。というか何だ、この皆で褒め合う空間は顔が熱くなるぐらいに恥ずかしい。
「ところで、今度開催されるRTAのレギュレーションは確認しましたか?」
私は慌てて話題を変えるため、近々開催される予定だという公式イベントについて皆に尋ねた。
「あぁ、それね。もちろん確認したよ」
おそらく、メンバーの中で一番のやる気を見せている様子のレッドが反応した。
「今回は、個人戦のみって事らしいが皆は出るか?」
「もちろん!」
「私も出たいと思ってます」
「プレイスキルを磨くために、今回のイベントは丁度いいかもしれないぞ」
この場に居る皆が、もちろんと参加すると答えた。競い合って、結果によって豪華賞品も出ると言ってるイベントだし、参加しないという理由がない。
「俺も参加するぞ」
「同じく」
狙っていたかのような丁度良いタイミングで、ブルーとヴェルの2人が部屋の中に入ってきた。ということで、公認プレイヤーは全員がダンジョンRTAのイベントに挑戦する意思を見せていた。
「ソロだけど、皆でイベント対策について話し合いをしておこうか」
「賛成だ」
「イベント対策か。どうしよっか」
ということで皆で仲良く、レッドの購入したプライベートルームに集まってきて、ダンジョンRTAに向けての対策会議が開かれた。
「一番初めに挑戦する難易度、チュートリアル的で簡単なダンジョンだよね」
「ただ、今回のルール的には最初のダンジョンでも油断はできないかな」
ダンジョンRTAのイベントルールでは、ある特殊な装備を身につけることで全員のレベルが1からスタートに統一される事になっている。それから覚えたスキルも、制限レベルに見合ったモノしか使えないという。キャラクターのレベル差によって、明らかな不平等が生じるからだろうから、その不平等を無くすためにスタートは統一するらしい。
私の普段の冒険で使い慣れている魔法、ライトニング・アローやファイアストームなんかはスキル制限で使えないようだ。
「戦士とか騎士とかもスキル制限によって攻撃力が大幅にダウンするから、スタートからしばらくの間はダメージが期待できない。それが厄介だ」
「まぁ、最初はモンスターも弱いから大丈夫じゃないか?」
「なるほど」
騎士のエリノルと戦士のレッド、あとは鍛冶屋のヴェルもスキル制限されてしまうと、ダンジョンの難易度がグッと上がるだろう。
「フォルトゥナ様、それを言うなら魔法使いも結構ヤバイよ」
エリノルの指摘。遠距離から攻撃できるのは強いが、最初期のスキルは火力が無さすぎるから。モンスターによっては序盤でも何発か当てて、ようやく倒せる、というようなダメージだから不安だ。
「武器も制限されるから、弓使いも苦しいし賢者も大変だろ」
「イベントに出てプレイスキルを磨こうと思ってたけれど、想像以上に大変そう」
まぁ、結局どの職業でも序盤は苦しそうだった。武器制限もあるから、モンスターを倒すのが困難そうだった。そこがクリアタイムを縮める鍵にもなりそう。
「後衛組として、一位は無理だろうけれど上位入賞は目指して頑張りたいな」
「おー、そうだね」
私が、大会に挑むにあたって目標について呟くとティティアナが賛同してくていれた。これは、本当に上位を目指して頑張らないと。
「そうね。諦めちゃダメ、って事か」
ダンジョンRTAに向けて、これは詳しい調査と入念な事前準備が必要かな。最初のダンジョンだからといって、侮ってはいけないか。
けれど、逆にここまでステータスを制限させられたら純粋なゲームプレイの能力が問われる。是非、今までのゲームをプレイして鍛えてきた私のプレイングスキルを発揮して上位入賞を果たしたい、と心の底から思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます