黎明期

第18話 デビュー

 本日、撮影したPVが公式サイトで公開された。確認してみると、その出来栄えに私はかなり驚いた。


 動画がスタートすると、まずはフォルトゥナ・フレモンスリィという貴族のお嬢様キャラクターについての説明がされている。私のことだ。


 貴族の令嬢だったフォルトゥナは、小さい頃から魔法使いを目指して独力で学び、魔法学校に入学するためにフレモンスリィ領から王都へと旅してきた。護衛として、一緒にエリノルも付いてきてくれた、という設定らしい。


 そして、入学した学校でレッド達と出会い冒険者パーティーを組んでダンジョンを攻略する楽しく充実した日々を送っている、というのが今回の映像で発表されていたキャラクター・ストーリーの流れらしい。


 レッド達みんなも公式キャラクターとして次々に紹介されていく。数日前に、撮影したという映像が流れていた。他の皆も演技をしている様子を見て楽しんだ。編集も上手くていい感じに見られるモノに完成している。


 撮影が終わった直後は大丈夫なのかと不安だったのが、PVを見終わった時に不安は一気に解消された。


 こんなに凄い映像作品に仕上げてくれたスタッフの技術力に感謝。そして、こんなに素晴らしい映像に出られている自分も誇らしく思えた。


 というか、今までゲームをプレイしている間は一人称視点だったので、自分の姿があまりちゃんと見えていなかった。けれども、こうして撮影された映像で確認をして客観的に見てみると、キャラクターが可愛らしい出来栄えだなと自己評価もできた。編集の力で出来が良く見えたのも大きいか。


 それから、新要素の緋色の秘宝が隠されているという新ダンジョンが紹介される。今回の目玉で、多くのプレイヤーが気になっていたであろう情報が解禁された。


 実はそのダンジョンを最初に発見したのがフォルトゥナという事らしい。


 もう少し詳しく言うと緋色の秘宝についての話がフレモンスリィ家に古くから言い伝えられていた。


 それを知ったフォルトゥナが、言い伝えを頼りにして緋色の秘宝を探してみると、そこには誰にも知られていない未知のダンジョンがあるのを発見した。


 というような展開が、リミットファンタジーゼロの正史としてPV内で紹介されていた。


 なるほど、私はそんな設定が付いたキャラクターを演じるのだな、と改めて自覚をする。設定を忘れないように、しっかりと脳裏に焼き付けて覚えておいた。


 まさか転生して女性になったと思ったら、今度はゲームの仮想世界でキャラクターとして生まれた貴族の令嬢になってしまうとは。こんな事になるとは、思いもしていなかったな。



***



 ゲームにログインするとフォルトゥナ・フレモンスリィというキャラクターを操作して、演じるプレイする事が契約内容の条件になっている。


 つまり今の私は、フレモンスリィ家の令嬢であり魔法学校の生徒である、という事を強く意識しないといけない。


「フォルトゥナちゃん、どこ行くの?」

「今から、学校で出された課題をこなすためにダンジョンに行ってきます」


「手伝おうか?」

「ありがとうございます。でも、他の人の手を借りたって先生にバレたら減点されてしまうので、手伝いは別の日にお願いします」


「そっか。なら、頑張って」

「行ってきます」


 ゲームをプレイしていると声を掛けてくれるプレイヤーに、ロールプレイして考えたそれっぽい答えを返していく。声を掛けてくれたプレイヤーは、それっぽい会話を楽しんでくれているようだ。


 ゲームのキャラクターとして仮想世界に入り込んで、役になりきって演技して皆で交流を楽しむ。リアルだと演技なんて難しいけれど、アバターのあるこの仮想の世界だから姿も変えて入り込むことで、私でも演技ができていた。。




 そんな風に過ごしていくうちに私達が運営の公認プレイヤーであり、ストーリーに絡んでくるキャラクターであるということが徐々にゲーム内のプレイヤーに認知され始めてきた。



 そんな訳で私達は次の活動予定が組まれた。今回のPVで披露した、新要素の緋色の秘宝ダンジョン初攻略をメンバー皆で挑戦する様子を公開生放送する、という企画だ。

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