第43話 クッション
アランとオルガに僕達の建てた丸太小屋を見せたが、やはり内装はきちんとしたい。
魔道具制作をすることを前提にするなら、鉱石から精錬するための
庭に出て邪魔にならないところで、いつも通り制作作業を開始する。
とりあえず殺風景な内装を変えるため、簡単な棚をパパっと作り設置する。僕の横でノエルも同じように棚を作っていたので、部屋には棚が2台設置された。
机については引き出しのある机がいいかもしれない。バックドアでいつでも小物は取り出せるが、細かいものを毎回仕舞うのもめんどくさそうだ。
机の形状を考えながら、作ろうと木材を適当な大きさにしているとき、ノエルがそれを見ながら話しかけてきた。
「それって机作る材料にするの?」
「うん、そのつもり」
「どんなのにするの?」
「とりあえず引き出しがあって、小物が取り出しやすい感じにしたいかな」
「ふ~ん……ならそれは私が作るわ」
「そう?じゃ僕は椅子でも作ろうかな。でも机の大きさと兼ね合いも必要か。まぁ後でいくらでも調整は利くから、
「そうね。椅子作るならついでにロッキングチェアも作って頂戴」
「ロッキングチェア?」
「ロッキングチェアはロッキングチェアよ。知らないの?」
いや、急に言われても椅子の種類の何かとしかわからないよ。
「それってどういうやつ?」
「椅子の脚の部分がこう前後にくっついて湾曲してて、前後に揺れる椅子のことよ」
あぁ何となくわかるかな、あれだよね探偵が座っていそうな椅子っていうのかな?いや、それは偏見か。
「まぁ何となくはわかったけど、それ作ってどうするの?」
「私が座るに決まってるじゃない」
「あ、そう」
決まってるし、自分では作らないスタイルね。なるほど。ノエルは自分が愛用したいものは自分では作らず、僕に作らせて使うスタイルが多いよね。まぁ大切にしてくれるから、それはそれで嬉しいけど。
「わかった。じゃロッキングチェアは僕が作るから、机と時間があったら椅子もお願いね」
「ええ」
ノエルに机と椅子をまかせて、早速ロッキングチェアの設計を考える。ノエルのことだから本を読むためのロッキングチェアではなく、絶対寛ぐためだけのを所望しているはずだ。
背もたれはある程度角度をつけ、寝やすい設計にして、ノエルは狐人族で尻尾があるため、背もたれと座る部分に隙間を若干開ける。ふくらはぎを乗せる部分は作らず、フットマン的な別で足を乗せる台を作ろう。
木で作るのはいいとして、寝心地を考えるとやっぱりクッション性のあるものは欲しいかなぁ。でも逆に通気性を考えて……いや、やっぱりクッションだな。座る
「ノエル、台座にクッションが欲しいから、買い物に行こうと思うんだけど」
「そうね、こっちの椅子にも取り付けた方がいいだろうし、買いに行きましょうか」
一旦作業を止めて、ささっと簡単に片付けをしたあと、家にいる母さんとシンシアに買い物に出掛けてくることを告げる。買い物に使うリュックを背負いながら、出かける準備をすると、シンシアがついて来たかったが、ただ椅子に使うクッションを買うだけだと話して、それならと母さんはおこずかいを僕に渡し、シンシアの分も買ってくるようにと言われた。
ロッキングチェアをもう1台作ることになりそうだ……
「椅子のクッションと他に何か買うものってあるかな?」
買い物をするため、村の広場方面へ向かいながら、ノエルと買うものを相談する。必要なものがあるなら、一度に済ませたいしね。
「そうね魔法で木はツルツルに出来るけど、机や椅子は肌に触れるから、
「なるほど、確かにそうだね。それじゃそれもついでに買っていこうか」
ノエルと話しながら村の中心部へ到着した僕達は、クッションなどを売っている店に向かう。手芸系は専門の職人の商品もあるが、内職をしている村の奥様方も多く、そちらは専門職の商品より若干安いため、結構需要があるのだ。
「ロッキングチェアに使うクッションって、どんな感じがいいの?」
「そうね……座る台座部分は固めの方がいいかしら。背もたれは包み込んでくれるのがいいわね」
「なるほど。ノエルが選ぶ?」
「ん~……フィルはクッション作れないの?」
「……材料があれば作れるけど、作ってもここにあるクッションと同じ感じだよ?」
「それじゃ私とシンシアのはフィルが作って、サンプルとして1つ買っていきましょ。買ったのは普通の椅子に使えばいいから」
買い物に来たのに作る物が増えたぞ……まぁいいけど。とりあえずよさげなクッションを1つ選び、それを参考に2人の分を作ろう。
「後はクッションに使う布と中に
店員におすすめの布を紹介してもらいながら、買う品を確認する。それを聞いた店員が布を裏から持ってきながら、それならと話してくれた。
「座るための中身なら、ダウン系じゃなくフェザー系か、それくらい
「その2つの違いは?」
「ダウン系は羽毛のことで、鳥の胸毛部分で取れる素材で、
「なるほど。そのフェザーって売ってますか?」
「ああ、売ってるぞ。裏から持ってくるから、ちょっと待ってな。どのくらい必要だ?」
「2つ分あれば」
「わかった。初めて作るんだろ?ちょっと多めでおまけしといてやるよ」
「ありがとうございます」
これでクッション関係は全部買えたことになるから、後は木の艶出しに使うワックスだな。
店員さんにお金を払いながら、艶出しに使うワックスがあるか聞くが、ここには小物ぐらいに使うのはあるけど、机や椅子など大物系だと、職人しか取り扱わないため、直接卸しているとこに買いに行った方がいいそうだ。
「それってどこですか?」
「ん~艶出しに使う素材って結構色々種類があるんだよ。着色とかせずに質感は木がいいなら、ワックスだな。ワニスは保護力が高いけど光沢が出て、膜で
「ありがとうございます。早速行ってみますね」
一筆書いてもらった手紙を持って、家具を売っている店に向かう前に、人目がつかないところで、先ほど買ったクッションとフェザーを、アイテムボックスに収納する。バックドアは勘づかれないけど、物がいきなり消えたように見えるからね。一応人目が着つかないところでしなくちゃ。
家具屋の店員に手紙を渡すと、丸い木箱に入った蜜蝋ワックスを持ってきてくれたので、それを買う。これで全部そろったので、背負っているリュックに入れる振りをしながら、バックドアで収納して家へ帰宅する。
家に帰ると母さんがシンシアの魔法の練習を見ていたが、僕が帰ってきたことでシンシアの集中力が切れたので、みんなで休憩をするために母さんが紅茶を淹れてくれた。
「お兄ちゃん、クッション買えた?」
「ああ、1つは買ってきたけど、ノエルが僕の作ったのが欲しいって言ってさ、材料だけ買ってきたんだ」
「え~!私もお兄ちゃんが作ったクッションがいい!」
「大丈夫、シンシアの分も作るよ。2つ分の材料買ってきたから」
「ホント!?ありがとう、お兄ちゃん!」
抱き着いてきた妹の頭を撫でながら、2つ分買ってきたことに安堵する。機嫌を損ねると後で大変だからな。チラッと元凶であるノエルを見るが、我関せずの態度で、母さんが焼いてくれたクッキーを頬張っていた。
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