第41話 小屋建築
午前中の剣の稽古を終え、昼食を食べた後、早速小屋を作るための作業に移る。今日もいつも通り、午前中から一緒に稽古をしたノエルを引き連れ、建設予定地へ向かおうとするところに、声がかかる。
「お兄ちゃん、ついていっていい?」
妹のシンシアから、上目遣いに連れて行って欲しいという要望があるが、いつも午後はアリシア母さんと一緒に、魔法の練習をするはずである。
母さんに目配せすると、僕に頷き返してくれたので、事前に話していたのかもしれない。まぁこちらが気になって、魔法の練習に身が入らないよりはいいのかもしれない。
「いいよ。でも危ないときは離れて見ているんだぞ」
「うん!」
OKをもらえたことに喜んで、僕に抱き着いてくる。こういうことを自然にやる辺り、将来は小悪魔っぷりを発揮しそうで、お兄ちゃんは心配だよ。
シンシアの頭を撫でながら、家を出て小屋建設予定地に向かう。向かうといってもそんな離れているわけじゃない。家のすぐ隣だ。もう同じ庭だと言っていい。
それでも家と通路で繋げたりする予定はないので、ある程度離して建てる。
まずは土台作りからだが、普通は土台になる範囲の土を固め、
しかし地面が固く締まっていれば必要はないので、魔法で強引に圧縮する。昨日西の森から帰った後、建設予定地を決めるため、ある程度やってみたのだが、予想以上に魔素を消費し、なおかつ圧縮したため、地面が凹んでしまい急遽違うところから土を持ってこなければいけなくなった。
魔法で土を出してもいいのだが、思った以上に圧縮で魔素を消費してしまったので、余計に魔素を消費しないために、午前中のランニング中にいつものコースを外れ、村で陶器のための粘土を採掘している山で、余った土を譲ってもらいに行った。
こういう時ノエルがいてくれると助かる。僕もある程度は顔が知れているけど、領主の娘であるノエルには及ばないからね。管理している人から訳を話して、快く譲ってもらえた。
凹んだ建設予定地に、バックドアから土を下に落とすように出した後、
次に建てる木材を加工するために、取ってきた原木全てをアイテムゲートから取り出し、皮を剥いた後、乾燥させる。
この作業をしている最中で、魔素もかなり消費されたので、今日はこの辺りにして小屋建築は一旦終了する。家に戻りひと息入れた後は、ずっと見学していた妹と3人で遊んでその日は終わった。
次の日も午後から作業を開始する。今日はシンシアは母さんと一緒に魔法の訓練とそれが終わったら、買い物へ行くらしいので、一緒にいるのはノエルだけだ。
本日の作業は、床板になる木材を切り出し、
これなら木材で全て出来るし、加工は魔法で行うので正確だ。前世では神職をしていたので、宮大工についてもある程度知識はあるが、わからないところはノエルに聞けば何とかなるのはありがたい。
床板を張り終わると、次は壁を丸太で継手をしていく。1段目は半分にした丸太で2段目から丸太そのままを組んでいく。床は正方形なので同じ長さの丸太を加工するだけで、重ねるのも身体強化を使えば楽々だ。ノエルと一緒に作っては重ねを繰り返す。
壁が作り終わったら、ドアを付ける出入口と窓を切り出し開ける。遠目から見ると段々家らしくなってきた。
買い物に出かけた母さんと妹が帰ってきたので、今日はこの辺りで終わり、母さん達に今日の進捗状況を話しながら、この日を終える。
小屋建築3日目、今日は2面が頂部で合わさる屋根、
壁丸太の最上段、入口の上に屋根の柱になる棟、母屋、桁と建てるため、反対側の壁丸太にも設置。屋根板を張れるように柱と柱に継手で
柱と柱を繋ぐ軒桁、母屋、棟木が渡された後は、その上に等間隔に
これで大本は完成したので、あとはドアや窓の設置と内装を整えることになるため、今日はこれで終わりにして、必要なものを買いにいく。
机や椅子もこの際作ってしまってもいいだろうけど、ガラスは設備が無いと作るのが難しいので、板ガラスを買いに行く。西の森で討伐した素材や、採取して得たお金である程度足りるかな。足りなければ、貯金しているおこずかいを使おう。
まず目的である板ガラスは買えたが、小屋でやりたかった魔道具作成で使う魔鉱石から精錬した魔素金属が思いのほか高かった。精錬前の魔鉱石でもそれなりの値段がするので、今回は諦めるしかないか。
小屋建築4日目、窓にはめる枠組みを作り、その中に昨日買ってきた板ガラスを切り出してはめ込む。ドア付近と左右の壁、ドア向かいにも引き違い窓になるように設置した。
ドアは上半分を6つの小枠にして板ガラスをはめたドアにした。開閉に蝶番が必要だが、これも構造は単純なので、木で作ってしまった。摩耗する部分は木を圧縮して、さらに固めることで対応できるのは、さす魔である。
「これで一通りは完成かな」
「そうね、これぐらいの小屋を作るのに4日かかったけど、今度はもう少し早くできそうね」
「まぁ探り探りだったし、さすがこれぐらいの大物を作るとなると、魔素消費がかなりあったからね」
「それは今後の成長に期待だわ」
「何だかんだいってもまだ僕達5歳だからね。そもそも5歳でこれ建てちゃうことがすごいと思うけど」
「魔法が無ければ無理ね。小さい頃から魔法を訓練してきて正解だったわ」
「まぁね」
普通の5歳児が小屋など作れないのはこの際置いておこう。出来た丸太小屋を遠目から眺めていると、家から母さんとシンシアが出てくる。
「お兄ちゃん、出来たの?」
「ああ、外側はこれで完成だよ。中はまだ何も置いてないけどね」
「あら、机とか椅子は買ってこなかったの?」
「うん、それも自分で作ろうと思って、板ガラスだけ買ってきたんだ」
「そうなのね。それにしてもよくできてるわ」
「お兄ちゃん、中見ていい?」
「いいよ」
「お母さん見に行こ!」
母さんの手を引っ張りながら、シンシアが小屋の中を見に行く。
「内装や小物作りは明日かしらね」
「そうだね」
窓から見える母さんとシンシアを見ながら、ノエルと今後の相談をしていく。机や椅子を作って、内装を完成させたら、今度は設備の充実かなぁ。
出来ればここで魔道具制作を行える様にはしたいところだ。部屋が足りなくなったら増築すればいいし、気長にやっていこう。
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