教会編 4話 マイザー王国? 知りませんねぇ……。
ファビエ王国の兵士を鍛え始めてから、一週間が経ちました。
兵士の皆さんも私の特訓を喜んでくれています。
「レティシアちゃん。兵士達にも一週間のうち、一日くらい休みを与えてもいいんじゃないのか?」
今日も、兵士さん達と特訓していると、レッグさんが私に声をかけてきました。
レッグさんも一緒に私の特訓を受けていたのですが、流石はレッグさん。私の特訓についてこれる貴重な一人です。
レッグさんは良く私にアドバイスをしてくれたりしますが、今日は愚痴みたいです。
「はて? 休みって何ですか? 国を守るのに休みなんて必要ありませんよ」
姫様が言っていました。
教会は強大だと。生半可な気持ちでは、国は守れないとなぜ分からないのでしょうか?
しかし、レッグさんは愚痴を止めません。
「レティシアちゃん。兵士にだって家族や友人がいるんだ。彼等にも休息や交友は必要だ。これは、レティシアちゃんにも言える事だ」
レッグさんが真面目な顔をして話します。
私の交友関係ですか……。
私は常にカチュアさんと一緒にいますし、姫様にもたまに晩御飯を一緒に食べます。エレンにだって毎朝晩会いに行っています。
充実していますよ?
一緒に鍛錬しているカチュアさんはどう思っているか聞こうとすると、レッグさんに「カチュアに聞いても答えは分かっているから聞かなくていい」と聞くのを阻止します。どうしてでしょうか?
まぁ、レッグさんの言い分もわかりましたので、一応検討してみましょう。レッグさんも、お年を召していますから愚痴っぽくなってしまったのでしょう。
レッグさんと話が終わった後、いつものように兵士さんに再生魔法をかけていると、今日はお休みだった兵士長さんが入ってきます。
アレ?
普通に兵士長さんはお休みしているじゃないですか。
確か、兵士さんには非番という、それぞれ一週間に一日のお休みがあるはずです。
レッグさんはその事を知っていて……、失礼な人です。後でツルツルにしましょうか? ……いえ、姫様が悲しみます。止めておきましょう
「で? 兵士長さん、慌ててますが、どうしました?」
「今、ネリー女王陛下の下にマイザー王国の使者が来ているんだ。どうもレティシアちゃんを差し出せと言っているそうだ」
「マイザー王国? 聞いた事がありませんねぇ……」
私が首を傾げていると、兵士長さんは呆れていました。
「レティシアちゃんは本当にマイザー王国を知らないのか?」
後ろからレッグさんが話しかけてきます。
「はい。興味が無いので」と私が答えると、レッグさんが笑いだします。
「はて? なぜ、笑いますか?」
「いや、レティシアちゃんは元々いた町の事を何も知らないんだな」
「はて? 元いた町?」
レッグさんの話では、私にいた町はマイザー王国の領地だったそうです。
エレンがウジ虫達に偽聖女と言われてから、マイザー王は肩身の狭い思いをしていたそうです。
しかし、私がエレンの濡れ衣を晴らした事で、マイザー王が再び調子に乗って、私の所有権を主張しているそうです。
「まぁ、マイザー王の気持ちは分からんでもないな。今のレティシアちゃんは魔王を
魔王と和解ですか。
確かに魔王の置かれている状況に同情し、封印しましたが、和解したつもりはなかったのですがねぇ……。
「レティ様を物扱いして。なんて無礼で愚か者なのでしょう。不快ですね。殺しましょう」
カチュアさんが、自主鍛錬から戻って来たようです。カチュアさんが入ってきた事で、兵士の皆さんの目が釘付けになります。
カチュアさんは、スタイルも良く、出るとこも出ていて、滅多に見ないほどの美人さんです。見た目が素晴らしいカチュアさんが薄着で鍛錬場に入ってくると、男性の目が釘付けになるのは仕方のない事です。
私ですか? 私は小さいので、誰からも見られませんよ?
私が笑顔でいると、レッグさんが「お前の場合は、見た目よりも中身がやば過ぎるからな。兵士は恐怖でまともに見れないだけだよ」とフォローしてくれます。が、それはフォローになっていないと思うのですが……。
「兵士長。ネリーの様子はどうなんだ? 助けが必要か?」
「いえ、聞くに値しないと追い返しましたが、その使者の立場が立場なので、邪険に扱えないようで……」
「どういう事だ? いったい誰が使者としてきているんだ?」
兵士長が言うには、使者は、マイザー王国の第三王子だそうで、今は客間で待ってもらっているそうです。
しかし、都合のいい話ですね。
そうです。いい事を思いつきましたよ。
「レッグさん。そいつを人質に使いましょう。私は姫様の下以外には付く気もありませんし、何よりもエレンの事を放置していたくせに、いまさら私の所有権を求めるなんて都合が良すぎます」
「そうです!! 愚か者どもの国は滅ぼしてしまいましょう!!」
カチュアさんが良い事を言います。
「レティシアちゃんもカチュアも落ち着け。ネリーがお前を引き渡すはずがないし、たかが王族の三男坊なんざ、人質にする価値すらねぇよ。それにカチュア。お前はネリーとレティシアちゃんの事になると暴走し過ぎだ」
価値がないのであれば人質にもなりやしません。
さて、姫様はどうするのでしょうか?
私達が、どうするかを悩んでいると鍛錬上に一人の馬鹿そうな男が入ってきました。
「ここにいるのか!? マイハニーは!?」
まいはにー?
何を言っているのでしょうか?
馬鹿は、カチュアさんを見つけると真っ直ぐカチュアさんの下へと歩いてきます。
カチュアさん。人をゴミのように見てはいけませんよ。
「やっと見つけたよ。マイハニー!!」
馬鹿は、カチュアさんの手を握ります。その瞬間、カチュアさんの膝が馬鹿の股間に命中します。
「ぎょぼぉおお!!」
馬鹿は変な声を上げて、股間を押さえながらその場に蹲りました。
「なんですか? この馬鹿は?」
カチュアさんは馬鹿の頭を踏みつけます。
「ま、待て。ぼ、僕を誰だと思っている?」
馬鹿が、か細い声で何かを言っていますが、カチュアさんには、それが頭に来たらしく頭を踏みつける力を強めました。
「言いたい事があるのなら、ハッキリと言ってください。声が小さくて、何も聞こえません!!」
カチュアさんに大声で怒鳴られて、泣きそうになっている馬鹿……いえ、思いっきり号泣していますねぇ……。
「うぐ……えぐ……。マイハニー。僕と結婚するのに、こんな事じゃ困る……。僕は怖いじゃないか」
結婚? この馬鹿は何を言っているんですか? 何か怖いのですが……。
私はふと兵士長の方を見てみました。何故か兵士長が青褪めています。
あ……。これはもしかして、もしかしますか?
「兵士長さん……。この馬鹿は何者ですか?」
私は、少し呆れながら聞いてみると「それがマイザー王国の第三王子です」と分かり切った答えが返ってきました。
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