第34話 私とエレン


 神は金色の翼を広げて浮かび上がります。


 はて?

 空中?


 いつの間にか、周りの風景が変わっています。

 お城の中にいたはずなのに、今は真っ白な場所にいます。


「ここはどこでしょう? いつの間にか、別の場所に飛ばされていました」

「ふはははは、ここは神の空間だ!! 矮小な人間では使えない高度な魔法によって作られた空間だ」


 へぇ……。

 こんな魔法があるんですね。

 私にもいつか使えますかね?


 ……しかし、教えてくれますかね?


「ここからどうやって出れますか?」


 神を殺すのは確定なのですが、殺した後にここから出られないのは嫌です。


「矮小な人間風情には出る事は不可能だ」


 それは困りますねぇ……。


「だが、貴様に無駄な希望だけは与えてやろう。ワシを倒せばここから出れるぞ」

「そうなのですか? 一番簡単な方法じゃないですか」

「なんだと?」

「私は元々貴方を殺すつもりなんですよ? それが方法なら一石二鳥じゃないですか」

「ほぅ……。随分と自信を持っているようだが、それが絶望に変わらんといいな」


 神の方こそ、随分と自信を持っているようです。

 やはり神を倒すのは簡単な事ではないかもしれませんが、最初からそんな考えでは負けてしまいますね。


 とはいえ、神は空中に浮いています。

 私は飛べませんし、下りてきていただきたいものです。


 ……。

 まぁ、何を考えていても仕方ありません。

 一回ジャンプしてみましょう。


 私は神に向かって、思いっきりジャンプします。

 一瞬で神の目の前に到達しましたが、神は掌をこちらに向けて笑っていました。


 あ、これは不味いですかね?


「馬鹿め!! 滅びるがいい!!」


 神は手のひらから、光の様な炎を放出させます。空中にいても斬る事は可能なので、魔剣で光の炎を斬ります。

 しかし、そのせいで神に攻撃できずに落ちていってしまいます。落ちる私を見て、神はほくそ笑みます。


 ムカつきますねぇ……。


 私は着地した後、何とか神を地上に落とせないかを考えます。

 挑発してみますか?


 ……ふむ。

 ゆっくりと考えている暇は与えてくれませんか……。


 神は片手を上げます。魔力を集めているみたいですね。


「これが神罰だ!!」


 神がそう叫ぶと、光の刃が雨の様に降り注ぎます。

 これはウジ虫が使った光魔法ですね。威力も量も桁違いみたいですけど。

 

 私は降り注ぐ光の刃を魔剣で弾きます。

 聖剣では光の刃は弾く事はできませんでした。


 そのせいで、玉のお肌に傷がついてしまったではないですか。


「ふはははは!! 気づいたみたいだが、正解だ。光魔法は聖剣では防げん!!」


 なるほど。

 半属性のモノは弾いたり、消滅させる事はできますが、同属性のモノは効果がないのですね。一つ勉強になりました。


 ……となると、勇者や魔王では神に勝てない……。しかも、その両方を神が作ったという事は、神に攻撃は通用するのでしょうか?

 しかし、今の言葉を聞いて、私は少しだけ焦ってしまいました。


「予想以上に鬱陶しい相手ですねぇ……。どうしましょうか?」


 両方の属性が効かないのであれば、両方を同時に使えればいいのですが……。

 この二本の剣が合体しませんかねぇ……。


 とはいえ、勝手に私が決めるわけにはいきませんねぇ……。

 相談してみましょうか? でも、どうやったら相談できますかね。

 私は、心の中で呟きます。

 私の為に協力してくれませんか? 神を殺すために協力してください……と。


 すると、私の声が届いたのか聖剣と魔剣が輝きだします。剣が放つ光は神が出した光の刃全てを飲み込み収束していきます。


「な、なんだ!? なぜワシの魔法が消えてしまったのだ!? その光輝く剣はなんだ!?」


 はて?

 光り輝く?

 私は自分の剣を見ます。


 はて?

 二本あった剣が一本になってしまいました。

 剣はとても綺麗な刀身で、半分は黒く光り半分は光り輝いています。


「合体してしまいましたか」

「な、なんだと!? 光と闇の属性が合体しただと!? そんなモノ存在するはずがない!? そんなモノ、神剣以外ありえない!?」


 神剣?

 なんですかそれは……?


 私は剣をジッと見ます。

 不思議ですねぇ……。この剣を見ていると、なぜか懐かしく、そして愛おしい気配を感じます。

 

 この剣には、相応しい名をつけなくてはいけません。

 私が最も愛し、大事な名前を……。


「貴女の名前は『エレン』です」


 私にとっては、エレンという名は特別ですが、一生一緒にいるのならば、相応しい名になるでしょう。


 私が名付けていい気分になっていると、剣が淡く光り、喜んでいるようにも見えました。


 嬉しいですか? 私も嬉しいです。

 一緒に……。


 神を屠りましょう。

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