第35話 神を殺すのか? ……ですか? 殺しますよ。


 この剣の名前はエレンです。

 私はエレンと共に、神を殺して見せましょう。


 しかし、エレンの能力を把握しなくてはいけません。まずは魔力を流してみましょう。


 ……ふむ。

 私の魔力はエレンに寄り添うように纏わりついています。

 これは……。


 今なら斬撃が神に届きそうな気がしますね。


 私は紙に向かい思いっきりエレンを振り抜きます。すると、斬撃が神に向かい飛んでいきました。


「な!?」


 さすがの私でも斬撃が飛ぶとは思いませんでした。これには神も驚いたらしく、その斬撃を慌てて薙ぎ払いました。


「ふ、ふざけるな!! 今の攻撃には神気が込められていた!! なぜ矮小な人間でしかない貴様が神気を扱える!?」


 神気?

 何を言っているのでしょうか?

 私はエレンに魔力を込めましたが、神気などという得体のしれないモノは込めていませんし、そんなモノ使えません。


「貴様。その武器はなんだ!? どうして聖剣と魔剣が混ざり合った!?」

「知りません」


「ふざけるな。砕け散れ、矮小な人間がぁああああ!!」


 神は手を上げ、再び先ほどの魔法を使ってきます。

 しかし、先ほどの魔法と違い、的確に私を狙い刃を降り注がせてきます。


「ふむ。確かに刃の密度はさっきまでとは違いますね。でも、エレンがあれば危険とも何ともありません」


 私は先ほどと同じように、光の刃に向かい剣を薙ぎ払うようにエレンを振ります。すると、まるで刀身が伸びたかのように、飛び光の刃をすべて薙ぎ払えました。

 

 これは素晴らしいです。

 光の刃はなくなったので、神に向かって斬撃を伸ばしてみましょう。


 私は神を両断するつもりで、エレンを振り下ろします。

 エレンの刃の先に七色の刃が伸び、神に襲い掛かります。


 神は斬撃を焦って弾きます。


「ば、馬鹿な!? 貴様、その剣は……。神気を発するとは、貴様も神族なのか!?」


 神族?

 神は何を言っているのでしょうか?

 神というのは、この世界に一人ではないのですかね?

 まぁ、仮に神が複数人いるとしても、私はただの人間です。


「あ、そうです。貴方は絶対的な強者だそうですが、今はどんな気分ですか? 貴方を殺そうとする者が現れてどんな気分ですか?」

「だ、黙れ!! ワシを侮辱するな!!」


 神は怒りの表情で、空中から降りてきました。


「貴様は神罰ではなく、神たるワシ自ら殺してやろう」


 神はどこかから剣を召喚しました。

 剣は金色で、キラキラしています。


「成金が好きそうな色ですね。金色。お金の色ですか。俗物にも程があります」


 私がくすくすと笑っていると、神の表情はさらに怒りに染まります。

 あ、そうです。


「そもそも、貴方がこの世界を管理・・しているのならば、こうやって直接対峙しなくとも、私を消す事は可能でしょう?」

「な!?」

「なぜ、それをしないのですか?」


 もし神が万能の存在であれば、自然災害だろうとなんだろうと、矮小な人間である私を殺す事など簡単に可能なはずです。


 神がどんな反応をすると思っていたのですが、思った以上に驚愕しているようでした。


「き、貴様。今何と言った?」

「はい? 何の事です?」

「何故、貴様が世界の管理・・・・・という言葉を知っている!?」


 世界の管理?

 神というのであれば、世界を管理していると思っただけなのですが、何を驚いているのでしょう?


「はて? 少し考えれば、すぐにその考えに行きつくと思うのですが?」


 私がそういって首を傾げていると、神は強力な殺気を放ち始めます。


 少しだけ背筋がぶるっとしましたよ。

 流石は神です。

 一瞬でも私に恐怖を感じさせるとはなかなかやりますね。


 ……屈辱ですね。


 私も負けじと神に殺気を放ちます。

 すると、ウジ虫と戦っていた時のように、ドス黒い羽根が生えました。


 本当にこれは何なんでしょう?


「なぜ貴様が殺気の翼が使える!? その力は一部の神だけが使える力のはずだ!?」


 殺気の翼?

 神だけが使える力? 

 ただの人間の私にそんなものがあるわけないでしょう?


 私は神にエレンを突き付けます。


「さぁ。殺し合いをしましょう。神様?」


 私と髪は斬り合い、金属音がこの白い空間内に響きます。


 そして、剣を交えて気付きました。


 ……。

 弱いですねぇ……。 


 魔王やマジックの剣技を体験した私にとっては、神の剣技は大した事はありません。

 魔王や勇者の攻撃が効かないだけで、そこまで強くないのかもしれません。


 これは……。

 殺せますね。

 しかし、まだ力を隠しているかもしれません。挑発してみましょう。


「おかしいですねぇ……。貴方の剣技は魔王以下です。いえ、ウジ虫以下かもしれません」


 私は神の一瞬の隙を突き、神の腕を斬り落とします。


「ぐぁ!?」

「あはっ! 神様のお手てがどこかに飛びましたよ? 痛いですかぁ?」

「く、くそっ……。神たるワシに傷をつけるなんて……」


 神は腕を拾いに行き、くっつけます。


「貴様……。許さんぞ……」


 あはははは。

 楽しいですねぇ……。

 

「貴方も楽しいでしょう? 絶対強者である神様が殺される恐怖というのを感じているのですから」

「ま、待て。ワシはこの世界の頂点だ。ワシを殺せば、世界は混乱するぞ? それでも貴様はワシを殺すというのか?」


 世界の混乱ですか……。


「確かに混乱するかもしれませんが、私は断言できますよ。世界は何一つ変わらない。貴方がいようといまいと関係ありません。世界は何一つ変わりません」

「ま、待て。貴様は、ワシの存在に意味がないというのか?」


 私は、呆れ切った顔をしてしまいます。


「じゃあ。聞きますが、貴方の存在がこの世界の生きとし生けるものにとって何の得になりますか? そもそも、貴方が一体何をしましたか? 勇者というウジ虫と魔王という不幸を生み出しただけじゃないですか。そんな貴方を誰が必要としますか?」


 神は、信じられないと言った顔になっています。


「教会の者達はどうする!?」


 私は溜息を吐きます。


「貴方が教会関係者の前に出たとして、誰が貴方に気付きますか? 教会に縋る人々は貴方自身を崇拝しているわけじゃなく、貴方という偶像を崇拝しているのですよ。そこに貴方が居なくても偶像が消える事はありません」

「貴様は、ワシを殺すというのか? いや、神を殺すというのか?」


 そうですね……。

 私には、必要ないですからね……。


「はい。殺しますよ・・・・・

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