第36話 さようならです……。

 

 私は徐々に神を追い詰めます。

 私が繰り出す斬撃を、神は必死に弾いています。


 しかし、自身が矮小と言っていた人間に追い詰められるのはどんな気分ですかね?


「どうしました? 先ほどまで、私の事を矮小な人間と言っていたじゃないですか。それに追い詰められている貴方は一体何なのですか?」

「だ、黙れ!? くっ!?」


 神は必死な顔で私の斬撃を弾きます。

 あはは。

 別に本気で斬っているわけではないので、まだまだ速度を上げれるんですよぉ……。


 私は徐々にエレンを振るう速度を速めていきます。神は必死に弾いていますが、きっとこれが限界だと思います。


 さて……。

 そろそろ、神を傷つけていくとしましょう。


 神は、私の剣の速さについてこれなくなり、徐々に体が傷ついていきました。


「く、くそっ!? これはどういう事だ。ワシは神だぞ!?」

「どうしました? 私の斬撃にについてこれてないじゃないですか。あ、魔法はどうしました? 魔法を使えば、もう少し戦い・・になると思いますよ」

「だ、黙れ……!?」


 はて?

 挑発したというのに、神はいまだに魔法ではなく剣で戦っています。


 しかし、神の剣技は……、いえ、神のそれは剣技ではなく、ただ剣を振り回しているだけでした。


「あの……。これは何の冗談ですか?」

「な、なんだと!?」


 神を散々斬っているのですが、神は再生能力があるのか、傷は瞬く間に治ってしまいます。

 しかし、神の表情は曇っています。


 そろそろ気づきましたかね?


「私が手加減している事にそろそろ気づいてくれませんか? それとも、気付いているけど、どうにもならないんですか?」


 神は何も答えません。

 これ以上は無駄ですかね?


「もう無理なのですか? では、ちゃっちゃと死んでください」


 私は神の腹部を刺し、そのまま肩から斬り抜きます。 


「ぎゃあああああ!!」

「はて?」


 神に痛覚はないのじゃないのですか?

 しかし、初めて痛がりましたね。すぐに傷は塞がってしまいましたが……。


「再生能力が厄介ですねぇ……。本当に鬱陶しい」


 私が嫌そうな顔をすると、神は余裕が出てきたようです。

 

 はて?

 なぜ、そこで余裕ぶるのでしょう?


「あの~? 何か勘違いしていませんか? 傷が再生されるという事は、いつまでも殺し続ける事ができるという事ですよ?」

「な!?」


 神の顔が驚愕に染まります。

 まさか、自分がこんな目に遭うとは思っていなかったのでしょう。

 さらに追い打ちをかけてみましょう。


「矮小な人間に永遠の苦しみを与えられる。どんな気分なんですか?」


 私がそう言うと、神は口角を吊り上げます。何か勝ち誇る術でも見つけましたか?


「確かに貴様は強い……。だが、それでも貴様は時間が有限な人間だ。それに比べて神たるワシは永遠だ!!」


 神は永遠……。不死という事ですか?

 ここで、私に疑問に思う事があります。

 不老不死・・・・ならば、なぜあれほど攻撃を必死に弾いていたのでしょう?

 自分が死なないのであれば、防御を捨てて私を殺す事も可能でしょう。ウジ虫がそうしようとしたように……。

 

「はて?」


 もしかしてですが……。

 神の言う永遠というのは、不老であって不死ではないのでは?

 再生能力のせいで、不死のように見えていますが、まだ絶命・・するほどの攻撃を与えていません。


 もしかしたら……。

 一撃で殺す事ができれば……、殺せるんじゃないんですか?


 ここで一つカマをかけてみましょう……。


「そうですね。確かに私は不老不死ではありません。不老不死の貴方を殺す事は不可能でしょう……」


 そう言うと、神の表情が明るくなります。

 あははは。

 ダメですよぉ……。


「あははー。何を安心しているんですか? 殺せないのなら、心を殺すつもりで拷問するだけですが……。もしかして、私が諦めるとでも思ったんですか?」

「なんだと?」

「最初のうちは死に難い場所を攻撃し続けます。でも傷は勝手に治るので傷つけ続けなくてはいけません」

「ふはははは。お前がいかに酷い拷問を繰り返そうと、数日もあれば人間である以上、眠る事になる。そうなれば、お前を殺す事は可能だ」


 ふふふ。

 思っている以上に餌に食いついてくれましたね。

 さて、最後の言葉を言いましょうかね。

 これによって……、神が不老不死かどうかがわかります。


「ふふふ。では、私を殺せるまで、一週間くらいは覚悟してくださいね。その間は拷問を続けますから。あ、たまには苦しめずに一撃・・で殺せそうなほどの攻撃もするかもしれませんが、不老不死・・・・なのですから安心ですね。心を強く持てば心は死にません。頑張ってくださいね」


 私がそう言うと、神の表情が一気に変わります。

 駄目ですよ。そうやって表情を変えるから、分かりやすいんです。

 これで確定・・しましたね。


 神は殺す事ができます。


「さて、神様。最初はどんな死に方が良いですか? 毒殺? 刺殺? 好きな方を選んでください。あ、神ですから毒は効きませんか? でも美味しいモノではありませんから、嫌がらせにはなりますよね?」

「ふ、ふざけるな。殺し方を聞かれて喜んで答える馬鹿がどこにいる!?」

「え? どうしてですか? 神は死なないのでしょう? 今の話を聞く限り、神は長く生きているのですから、たまには刺激も必要でしょう?」

「ふざけるな!! 神であっても死ぬときは死ぬんだ!! ……はっ!?」


 あはは。自分からボロを出してどうするんですか。


「ふふふ……。安心してください。気づいていましたよ・・・・・・・・・


 私がそう笑顔で言うと、神の顔が一気に青褪めます。


「一撃で殺せば死ぬんでしょう? 貴方は不老であって不死じゃない。寿命で死ぬ事はなくとも、殺されれば死ぬ。そういう事でしょう?」


 私はそう言って、神に迫ります。


「ま、待て!! 分かった。ワシと手を組もう!! 二人でこの世界を好き勝手しようではないか!!」

「あははは。さっきも言ったじゃないですか。貴方はこの世界に必要とされてないと」

「何を言っている!? 教会があれば、好き勝手に生きれて自由にできる!? ワシの意のままに操る事が出来る。そうだ! 教会を二人で支配しよう。教会には、今も神に縋って助けを求めてくるものもいる。そんな人間にはワシが必要だろう?」


 ふぅ……。

 私は溜息を吐きます。


「その人達に、貴方は何かをしてあげるんですか? 何もしないじゃないですか」


 私がそう聞くと、神は怒りのままに叫んできます。


「ワシという存在が、救いになっているのだろうが!! ワシがこれほど譲歩しているというのに、何が気に入らん!!」


 全く。それが勘違いなのですよ。

 見えない貴方がそこ・・にいても、気づかれなければ何もいないのと同じです。


 私は、神の懐に入り、神の太ももを突き刺します。

 どうせ傷は癒されるでしょうが、痛みを与える事は忘れてはいけません。



 それからしばらくの間は、神に痛みを与え続けました。

 神は、私に斬られ続けながらも、私を勧誘しようと必死でした。

 そんな事、無理に決まっているのに。

 私は、終わらせるために、剣を構えます。


「貴様は!! 神を!!」


 もうその言葉は良いんですよ。

 私は、神に近付き、心臓の辺りを突き刺します。

 すると、神の動きが明らかにおかしくなります。


「ぐふぅ……」


 私は剣を抜き首に剣を当てます。


「さようならです……」


 私は一気に剣を振りぬきます。

 神の首は転がった後、黒い炎で燃えていきます。


 神が燃え尽きた後、神の空間が消えて、元の部屋に戻ってきました。

 これで、本当に神を殺せたのでしょうか?


 まぁ、いいです。

 殺せていなかったら、また殺せばいいです。

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