第33話 神様? 何がそんなに偉いんですか?


 あぁ……。

 心が躍ります。


 今日、この瞬間からウジ虫は私のストレス発散の道具です。そう考えたら、ついつい興奮してしまいます。

 あぁ……、表情が緩んでしまいます。

 これが楽しいという感情なんでしょうね。

 

 ウジ虫は、私の表情に怯え、逃げようとしています。 


「何を逃げようとしているんですか? 先ほどまで、余裕だったじゃないですか。その自慢の硬い体はどうなったんですか?」

「く、来るな……」


 ウジ虫は必死に逃げようと這っています。

 なぜ、立って逃げないのでしょう? 私は足を斬りましたっけ?

 そもそも、手を引き千切ったり、足を引き千切るのは今からですよ?


 私はウジ虫の足を掴みます。

 その瞬間、ウジ虫が騒ぎ始めました。


「は、離せ!! 俺は勇者だぞ!!」

「離すわけないじゃないですか。今から引き千切るんですから」


 しかし引き千切るにしても、足を引っ張れば体も一緒についてきてしまいます。

 どうすればいいのでしょう?


 あ、そうです。


 私はウジ虫の腰に剣を突き刺します。その剣は床も一緒に突き刺し、動かなくなります。


「これで、引っ張っても体が動きません。えい!」


 私はウジ虫の足を引き千切ります。


「あぎゃああああああ!!」


 はて?

 痛みがないのになぜ叫ぶのでしょう?


 しかし、汚い足です。焼却処分してしまいましょう。


 ウジ虫は涙を流しながら逃げようとしています。しかし、剣が刺さっているので逃げられません。


「次は腕を引き千切りましょう」


 私は腕を思いっきり引っ張ります。するとぶちぶちっといい音がしました。


「ぎゃあああああああ!!」


 ウジ虫の腕の付け根からは血がいっぱい出ています。

 血が噴き出していてとっても楽しいです。


 そういえば、シンの勇者とか言って、パワーアップしたのでしょうが、血は普通なんですね。


「貴方の性格は真っ黒なのに、血は真っ赤なんですね。あははははは」


 ついつい笑ってしまいます。

 ここまでしても死なないんですから、これからも楽しく遊べそうです。


 しかし、私の楽しい時間を邪魔するように聖女が魔法を撃ってきます。


「はて?」

 

 聖女の魔法は光の球を飛ばすものらしく、直感であの球は危険と判断しましたので、ウジ虫で光の球を弾く事にしました。

 ウジ虫は、光の球に当たった瞬間、絶叫を上げます。

 聖女は私の行動に驚いています。


『き、貴様!! なんと非道な事をするのだ!!』


 聖女の口からは、男性の老人の声が発せられます。

 しかし、面白い事を言いますね。


「非道とは何ですか? 貴方にとっては勇者は特別かもしれませんが、私にとっては、その辺のゴミと何ら変わらないですよ。目の前に振り回せそうな物があったのでそれを使っただけですよ? その物がウジ虫だけだっただけじゃないですか」


 と魔法で苦しむウジ虫を地面に叩きつけます。


「ぎゃああああああああ!!」


 一度では面白くないので、二度三度と地面に叩きつけました。

 一回一回、悲鳴を上げるウジ虫はとても楽しいです。

 しかし、その光景を見て、聖女が驚きます。


『な、何故だ。タロウには痛覚無効と恐怖耐性を持たせている筈だ。き、貴様!! 何をした!?』

「はて? 知りませんよ。あ! さっき、貴方の魔法で痛みを与えたのは計算通りですけどね。貴方なら意味が分かるでしょう? 勇者と魔王を作ったのは貴方・・なんですから」

『な、なに?』

「あはははは。もしかして、気付かれないとでも思っていましたか? コソコソばっかりしていないで、と堂々と襲ってきたらどうなんですか? あはは。そうでしょう? 神様・・


 私がそう尋ねると、聖女は立ち上がり大声で笑い出します。

 

『はははは!! まさか正体を気付かれるとは思わなかったぞ。人間』


 聖女の顔が崩れていき、中から老人の顔が現れます。


「はて? 聖女の時は綺麗な顔でしたが、本体は小汚い爺ですか」

『きさま。ワシを誰と思っておる。神であるぞ』


 神だったら何なのでしょうか?


「だから何ですか?」

『なんだと?』

「あ、貴方が神かどうかなんてどうでもいいですが、気になる事はありますね。本物の聖女はどこですか?」

『ははははは。そんな存在最初からいないさ。聖女マリテはワシが化けていたのだからな』


 …………。

 ……。


 はて?


「うわぁ……。気持ちが悪いですね。ウジ虫の性格上、綺麗な女の人がいたら、そういう行為をするでしょう? いやぁ……。ウジ虫と爺が抱きついたりしていたと考えると……うぷっ……」


 私は吐き気を感じます。

 私と神が話をしていると、ウジ虫が這いずって逃げようとします。


「あ。神様。少し待っていてくれますか? ウジ虫を痛めつけなくてはいけませんので」


 私はそう言うと、ウジ虫の背中を踏みつけて、剣を振り上げます。


「次は確か……臓物を一つずつ抉りだすでしたっけ?」


 私はウジ虫の背中を刺します。そして、適当に中の物を剣で掬い出します。


「あ、あ、あ、あ、あ」


 ウジ虫は痛みで叫ぶ事も出来ないようです。

 私は、もう一度背中を刺します。次は何が出てきますかねぇ。


『待て……』

「嫌です」


 私は神を無視して、ウジ虫の剣をグリグリ動かします。中を混ぜてみましょう。

 普通の人間ならば、死んでいてもおかしくないのでしょうが、流石は神の加護です。まだまだ死にませんねぇ。


『貴様、神に対する態度が不敬ではないのか?』

「なぜ、貴方を敬わなければいかないんですか? 神というのは、そこまで偉いものなのですか? 私にとってはタダの傲慢な小物でしかありません。魔王と勇者の戦い? そんなモノを誰が望んだんですか? 実際、この争いで誰が幸せになりますか? 勇者に選ばれたウジ虫ですか? 確かにウジ虫は幸せだってでしょうねぇ……」


 私が厭味ったらしくそう言うと、神の顔が歪みます。

 そして、偉そうに講釈を垂れだします。


『ワシは幸せだぞ。この世界はワシが楽しむための場所だ。勇者を含めて、この世界に生きるのであれば、ワシを楽しませるのが仕事じゃ。貴様はバグだ。ここで殺しておこうと思うが、抵抗しても構わんぞ?』

「いいですよ。ただし、その前にウジ虫を殺します。もう必要ないでしょう?」


 私がそう聞くと、神は笑います。


『それは出来ぬな。そいつには百の命を与えておる。だからこそ、百回殺さないとそいつは死なん」


 百回も殺さなきゃいけないんですか。

 とても楽しくなりそうです。


「分かりました。貴方を殺した後、ゆっくり百回殺しましょう」

『ほぅ。抵抗してもいいとは言ったが、神に逆らうのだな。面白い。神罰を与えてやろう』


 神罰ですか……。

 とても楽しそうです。

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