教会編 6話 魔族からの会談の要請
馬鹿をこの世から消してから、二週間経ちました。
一度、レッグさんがマイザーに行ったのですが、マイザー王は知らぬ存ぜぬを繰り返したそうです。
しかし、レッグさんが帰って来てからというもの、マイザーからの使者が毎日のように来るようになったそうです。
マイザーの使者達は、あの馬鹿がこちらに来ていないかと聞いてきているようですが、レッグさんは「この国に入ったという報告は受けていないが?」と平気で嘘をついています。
全く顔色を変えずに嘘を吐くので、レッグさんに「信用できなくなってしまいます」と言ったら「殺しちまったのを正直に言ってどうするんだよ」と言われてしまいました。
私はあれからも毎日のように兵士さん達を鍛えています。
兵士さん達も私の特訓に耐えているだけあって、毎日少しずつ強くなっています。
今では、紫頭が引きつれていた魔族達くらいには勝てると思います。
それと同時にレッグさんとカチュアさん。ついでに紫頭も鍛えているのですが、紫頭を除く二人は、マジックやブレインくらいには強くなりました。
今の二人ならば、
ウジ虫は今も復讐者達にボコボコにされている様です。
たまに再生魔法をかけるのを忘れて、死ぬ事もあるのですが、まだまだ、命にストックがあるので安心です。
もし、死ねる回数が十回を下回れば、命を増やす魔法を考えようかと思っています。
今後のウジ虫拷問の予約表を眺めていると、紫頭が訓練から戻ってきて私に「そう言えば、この間、ブレイン様から連絡があってな、ネリー女王に一度会いたいから、日程を調整して欲しいと頼まれたんだ。レティシア、どう思う?」と聞いてきます。
「ブレインは生き返ったのですか? そういえば、魔王の封印も解いていなかったと思うのですが……」
「あぁ、その事だがな……」
紫頭の話では、私が神を殺した直後に、魔王の封印が解け、死んでも生き返るという呪いも、無事に解除されたとの事です。
「はて? なぜ死んでもいないのに、そんな事が分かるのですか?」
「あぁ……。それはな……」
なんでも、魔族の一人が魔王さんに反旗を翻したらしく、その魔族を処刑したところ、いつまでたっても生き返らなかったそうです。
「懐かしいですね。今の紫頭なら、ブレインなら倒せるかもしれませんよ?」
私がそう言うと「ブレイン様を超えたとしても、尊敬の念は忘れない」とカッコつけていました。
こいつは、自分の命惜しさに魔族を裏切ったのを忘れたのですかね?
「魔族が謁見か。魔族に対して失礼かもしれんが、危険はないのか?」
レッグさんが、私と紫頭の会話に入ってきます。やはり王族として、元々魔王と争っていた事を考えれば、そんな考えになるのは分かります。
「大丈夫だとは思うぜ。もし、この国を消したいのであれば、いちいち会おうなんて考えないさ。魔王四天王は俺達でどうにかなるとしても、魔王軍本隊には、うちの軍はまだまだ届かない。もし、ファビエを滅ぼしたいんであれば、マイザー王国と戦争が始まってから、ファビエを背中から攻めればいいだけだ。それならばレティシアを避ける事も可能となる。だが、一度、レティシアに負けている魔王様ならそんな愚行はしないだろうよ」
「そりゃそうか。一度レティシアちゃんの恐怖を味わっている以上、仮にうちの国を滅ぼせたとしても、確実にレティシアちゃんという名の牙が魔王軍に向く。そうなれば今度こそ滅びる事になるだろうしな」
お二人共……。私の事を良く分かっているじゃないですか……。
私は軽く、二人に殺気を飛ばしておきます。
二人は背筋が伸び「特訓再開しようか?」「あ、あぁ」と言って鍛錬場へと逃げていきます。
しばらく二人を追いかけ嫌がらせをしていたのですが、カチュアさんが私を呼びに来たので名残惜しいですが、嫌がらせを止めます。
あ、ちょうどいいです。私は紫頭から魔族との会談の事を詳しく聞き、姫様に報告する事にしました。
「魔族ねぇ……。レティ、そのブレインっていう人は信用できるの?」
「まぁ、あの時は敵でしたので、信用できるとは言いにくいですが、魔王さんへの忠誠は本物みたいでした。今回の会談が魔王の意志だというのならば、大丈夫です」
私がそう言うと、姫様がカチュアさんに紫頭を連れて来るように頼んでいます。
「何か用か?」
紫頭は軽い口調で王の間へと入ってきます。
「ケン。魔王四天王のブレインという人が、私に会いたがっているといったらしいけど、どうやって連絡を取ったの?」
姫様がそう尋ねると、ケンは懐から綺麗な板を取り出します。なんでしょう?
「これは連絡用の魔法板というモノで、遠くの人へと連絡を取れるものなんだよ。これにブレイン様から連絡があってな……。なんでも、魔王クランヌ様が「ファビエ王国の女王と話がしたい」と言っているそうだ。ブレイン様は、直接連絡が取れる俺に連絡をとったらしい」
「魔王が何かを考えているという事ね。レティ。どう思う?」
「滅ぼしましょう」
私がそう答えると、紫頭が「何故その答えにいきついたのか説明しろよ」とため息を吐いて私を見ます。
「紫頭。ブレインはこの国に私がいるのを知っているのですか? もし、知っているというのなら、この話は無かった事にするのが良いでしょう。魔王さんは私と戦いました。もし、何らかの形で魔族が賠償を求めてきたりすれば大変です」
私がそう言うと、紫頭が反論します。
「クランヌ様を含む、魔族側はお前がこの国に留まっている事は知っている筈だ。だが、賠償を求めたりなどは無い。ブレイン様の話では、クランヌ様が興味を持ったのは、教会とこの国の関係性だそうだ」
教会との関係性?
「ケン。魔族と教会がどう関係があるの?」
「あぁ。人間と魔族はずっと争っていた。俺達、魔族はいつからか、人間との戦争の意味に疑問を抱き始めた。死ねないクランヌ様が死にたがり始めたのもこの時期からだと聞いている。俺はブレイン様の部下だったから、そこまでは知らなかったが、ブレイン様は昔からクランヌ様の側近だったから、その事を知っていたわけだ」
ブレインはそこまでだったのですか。頭悪そうでしたけど。
「人間側もそんな戦争に疑問を持ちだした頃に、ネリー女王の爺さんに当たる先々代国王が魔族討伐を止めようとしたらしい。あー。ここまで話しておいて悪いが、ネリー女王。ここから先を本当に聞くか?」
紫頭が少し、神妙な顔をしています。
姫様も意味が分かったのか「ようやく、あの処刑の意味を理解できたわ」と辛そうな顔をしていました。
私はエレンを抜きます。
「お前。姫様に辛い顔をさせて、覚悟はできているのでしょうね」
紫頭を殺してしまおうとしたところ、姫様から止められました。
「はぁ……。レティシア。お前は少しだけでいいから考える事を覚えろ。お前は思い込んだら歯止めが利かなくなる。俺が話しにくいといったのは、ネリー女王の爺さんが教会の思惑によって、不当に処刑され、教会の傀儡となった先代国王が即位したという事を娘であるネリー女王に言いにくかったという事だけだ」
「私も疑問に思っていたのよ。お爺様は、孫の私が言うのも何だったけど、いい国王だったと思うわ。魔族との戦争も、王国軍が疲弊していた事もあり、タイミング的に進軍を止めたのも理解が出来るわ。そんなお爺様が、突然教会から異端と言われ拘束され処刑された。いくら何でも、裁判から処刑までが早すぎたのよ」
そんなに昔から、教会は腐っていたのですね。
「教会をこの世から排除しましょう。信徒は全員死刑でいいでしょう。もし難しいというなら、私が全て殺します」
私はエレンを持つ手に力を入れます。そして部屋を出ようとすると、あの少女が光の中から現れました。
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