第3話 私はここに誓います。


 私は教会の中を見回します。


 今教会にいるのは……。

 神官が十数人。

神官長が一人。

 神官長の治療係が二人。


 治療係の人は神官長に雇われているだけで、教会関係者ではありませんね。別に殺してもいいんですが、無駄な労力はしたくありませんね。

 出て行ってもらいましょう。


 私は治療係の二人の元へと歩いて行きます。


「すいません。貴方達は今日・・でお勤めは終わりなので、教会から……、いえ、この町から出て行ってください」

「え? どういう事?」


 治療魔法の専門職は頭が良いと聞いた事がありますけど、この程度の事が理解できないようですね。仕方ありません。ここは優しく教えてあげましょう。


「神官長さんが言っていたでしょう? 聖女は必要ないから死んで当然だと」

「は……はい」

「神官長さんが言うには、必要のないモノは死んで当然なのでしょう?」

「そ、そうですね」

「という事は、私にとって教会は必要ありませんし、教会関係者は死んで当然という事です。貴女達二人は教会関係者ですか?」

「「ち、違います!!」」


 治療係の二人は青褪めたまま教会を走り去ってしまいます。

 

 私は腕が無くなり転げまわっている神官長さんに視線を移します。

 転げまわって泣いているかと思ったのですが、私を睨みつけていますねぇ……。


「まだ、睨み返す気力があるのですねぇ……。少しだけ見直しましたよ」


 神官長さんは痛みで表情を歪めながらも私を睨みつけてきます。それに比べて、神官達は隙を見て逃げようと考えている様です。


「あぁ、逃げたかったら逃げても構いませんよ。教会関係者である以上は死ぬのが・・・・少しだけ遅くなるだけですから。生き延びたかったら、逃げ切って教会関係者をやめる事ですね」


 私の言葉に神官達が動揺し始めます。


「そ、それはどういう事だ?」

「私にとって教会は必要ないんです。だから、滅ぼすと言っているんですよ」

「ふざけるな! 教会は……アブゾル教は人々の救いだ!? その教会を滅ぼすだと!?」


 神官長が必死に怒鳴ってきます。


「聞いているのか!! 教会を敵に回すというこ……ぶふぉ!!」


 私の拳が、神官長の顔にめり込みます。いつもならここで終わるのですが、今日からは終わりません。

 

「さて、もう一度言いますよ。私の優しさはここまでです。死にたくないというのであれば、この町から逃げて一生教会と関わらずに生きなさい。それができないのであれば、ここで神官長と共に死になさい」


 私の言葉に神官の数人が教会から逃げていきました。

 神官というのは、自分の財や命をも神に捧げていると聞いたのですが、どうやら自分の命の方が大事な人もいたみたいですね。


「残った人は……死を希望しているのですね? もう一度だけ言いますよ。これが最後の警告です」


 私は優しさでそう言いますが、誰も動こうとしません。

 そうですか……。

 なら神官長と共に死ねばいいです。

 とはいえ、神官長は気絶している様です。私は神官長を起こすためにお腹を思いっきり蹴ってあげますが、やり過ぎたみたいで泡を吹いて気絶してしまいました。


「起きてください。気絶したまま死にたいのですか?」


 反応がありません。

 これじゃあ、恐怖を与えて殺す事ができないじゃないですか……。

 まぁ、良いです。目を覚ますまで待っててあげましょう。

 先に彼等と遊ぶとしましょう。



 時間にして一時間。神官長がようやく目を覚ました。


「遅いお目覚めですねぇ。気分はどうですか?」

「こ、これは……?」

「動けないでしょう?」


 神官長の体は、アブゾル教のシンボルである十字架にしっかりと括りつけています。

 括りつけている両足と無くなっていない方の腕は強く縛った結果、紫色に変色しているのでもう使いものにならないでしょう。

 まぁ、もう使う事は無いでしょうけどね……。


「き、キサマ。私を下ろせ!」

「嫌です。それとアレ・・を見てください」

 

 神官長が起きるまでの間、暇だったので神官達を殺し、死体を積み上げておきました。

 神様に敬意を示したのですが……、どうでしょう?


「貴方達の大好きな神様への供物です。神様の供物になれるなんて幸せでしょう?」

「き、貴様……。なんて非道な事を……」

「非道? 何を言っているのですか?」

「なに?」

「貴方達もエレンを聖女として勇者に捧げようとしていましたよね? それは非道ではないのですか? いえ、むしろ私の方が優しいじゃないですか。勇者という良く分からないモノに捧げるより、貴女達の信じる神アブゾルというモノに捧げたんですから」

「な、何を……」

「さて、始めましょうか」

「何をするつもりだ!」

「神に供物を捧げる儀式・・ですよ……」


 私は床に突き立てておいた何本もの剣を一本手に取り神官長に突き刺します。あ、ちゃんと死なないところを狙っていますよ。


「ぎゃああああああ!!」


 耐えましたね。次の剣を刺しましょう。

 さて……何本まで耐えれますかね?



 はて。

 動かなくなってしまいました。

 十字架には十二本の剣が刺さった神官長が血を滴らせながら息絶えています。良い光景ですねぇ。

 そうだ! ついでに元凶である神に祈っておきましょう。


「信愛などありませんが私は神に誓いましょう。私の大切な親友を奪ったこの国……勇者……魔王……教会……そして、神アブゾル。全てに復讐する事を!!」

 

 祈り終わった私は神官長の死体に炎魔法で火をつけ、教会ごと焼き払いました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る