第2話 親友が自ら命を絶ってしまいました。

 

 エレンが旅立ち、半年が経ちました。

 エレンがいない日々は面白くありませんが、エレンも頑張っているんです。私も我が儘を言わずにエレンの帰りを待っています。


 しかし、半年ですか……。

 この半年で勇者一行がどこで何をしているのかは知りませんが、町々で噂になっているそうです。

 それにも関わらず、聖女であるエレンの噂はある日を境にまるで聞く事が無くなりました。

 なぜでしょう?


 勇者に言い寄られて、それを拒否した……というのが最後に聞いた噂でした。

 私は毎日教会にエレンの事を聞きに行っていたので、その噂を最後に一切の話はなくなりました。

 それからも毎日、教会の神官にエレンの話を聞きに行っています。


 教会に入ろうとすると、神官長が私を邪魔してきますがその度に拳が痛くなってしまいます。

 しかし、毎日ボロ雑巾の様になりながらもよく私の邪魔をするものです。

 最近は神官長専属の回復魔法の使い手・・・・・・・・が雇われたそうです。全く、お金のある人は違いますね。

 今日も、うるさい神官長を物理的に黙らせて、教会勤めの神官に話を聞きに来ます。

 こいつも最初は抵抗していたんですが、一度痛い目を遭わせてみたら素直に話をするようになりました。

 今日こそ、エレンの事を何か聞ければいいのですが……。


「今日も同じ事を聞きますが、エレンの近況は入ってきましたか?」

「い、いえ……。相変わらず聖女様の情報は入りません……」

「そうですか。じゃあ、今日も帰りますが、明日も来ますね」


 いつもと同じ答え……。

 エレンは無事なんでしょうか……。


 私は家に帰る為に教会の入り口に向かいます。すると、教会の扉が激しく開き、神官が一人、駆け込んできました。

 そして、その神官の口から耳を疑う言葉が聞こえてきました。

 

「聖女エレンが自ら命を絶った! これは神アブゾル様に対する冒涜だ!!」


 冒涜?

 勝手に聖女に選んでおいて冒涜?


 エレンの近況を教えてくれている神官は、慌てて駆け込んできた神官の口を押さえます。

 そして、私を見て青褪めている様です。

 私は駆け込んできた神官の傍に近付きます。


「すみません……。今の話を、もう一度聞かせて貰えませんか? できれば詳しく」


 口を塞ぐ神官を引き剥がし、駆け込んできた神官の胸ぐらを掴み上げます。私は背が低いので持ち上げる事はできませんので跪かせます。


「さぁ……話をしてください」


 ちゃんと笑顔で聞いてあげますよ。

 睨みつけてはいません。

 しかし、治療が終わった神官長が、いつもの如く私に言いがかりをつけてきます。


「野蛮人がその手を離せ!!」

「はぁ? 今日は貴方の相手をするつもりはありません。口を閉じてくれませんか? 殺しますよ?」


 しかし、神官長は黙りませんでした。


「そんなに聞きたかったら教えてやるよ。聖女は、エレンは死んだんだよ!! それもこれもお前のせいだ!!」


 私のせい? どういう事ですか?

 私は胸ぐらをつかんでいた神官を捨てて、神官長の腕を握り潰します。


「ぎゃああああ!! は、離せ!?」

「じゃあ。詳しく話しなさい」

「あ、あんな女を聖女にしたのが間違いだったのだ!! お前のような頭のおかしな野蛮人と仲が良かった時点で聖女の資格はなかったんだよ!!」

「資格? 聖女認定は貴方達が勝手にやった事でしょう?」


 エレンは聖女と呼ばれる事を嫌がっていたと思いますが……むしろ、この人達が聖女と持ち上げていましたよね?


「エレンは嫌がっていましたよねぇ? それを貴方達がバカ騒ぎしていただけでしょう?」

「勇者の寵愛を自ら貰い、聖女の力を失うとは馬鹿すぎるのだ!! その上自殺だと!? あんな女、死んで当然だ!!」


 勇者の寵愛を自ら?

 おかしいですねぇ。私が聞いていた話では、拒否していたと聞きましたが?

 そんな事は後で調べるとして……。


 死んで当然?


 この人は何を言っているんですか? エレンが死んで当然? そうですか……。


 私は神官長の腕を引き千切ります。


「ぎゃああああああ!!」


 腕を無くし転がる神官長を見て、周りの神官達が青褪めています。

 エレンが死んで当然なのなら、この人達・・・・も死んで当然ですよね……。

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