親友が酷い目に遭わされたので全てに復讐します。

ふるか162号

第1話 親友が勇者と共に旅に出てしまいました


 私の名前はレティシア。親しい人からは、レティと呼ばれています。


 私には、エレンという大事な親友がいます。エレンは長く綺麗な金色の髪で、誰もが振り返るほどの美人さんで性格も良い女の子でした。

 更に治療系の魔法の才能があるらしく、怪我をした時はいつも治してくれました。

 

 そんなエレンとは対照的に私は背が低くて、幼児体型で、黒髪を長く伸ばしただけの少しやんちゃなだけの小娘です。

 

 領主に嫌われていて町に簡単に入れない私と、領主の娘であるエレンはとても仲が良く、いつも一緒にいました。

 

 でも、エレンが教会から『聖女』と呼ばれだし、教会によくいるようになってからが余り遊べなくなっていました。エレンは神官長と一緒にお城によく連れていかれている様でした。

 ある日、お城から帰ったエレンが私を呼び出します。


「エレン? 浮かない顔しているけど、教会で何かあったんですか?」


 エレンは私の顔を見るなり泣き出しそうな顔をして抱きついてきました。

 どうしたのでしょうか?


「レティ。私、聖女として勇者様と共に魔王討伐の旅に出なくちゃいけなくなったの。お父さんもお母さんも名誉の出世と言って私を送り出そうとしている。私……行きたくない」


 エレンは泣きながら、自分の心の内を吐き出します。

 魔王ですか……。噂には聞いていました。なんでも、魔物を引き連れて、ファビエ王国に攻め込んでいるそうです。

 人類の王と自負するファビエ王が、異世界から勇者を呼び出したらしく、その勇者と共に魔王を倒す旅に出るよう、エレンに命じたそうです。

 エレンは人を傷つけるような事はできない女の子です。例え、魔王であったとしても倒すなんて行為はできないでしょう。

 国王は何を考えているのでしょうか。


 一度、国王に話を聞きに行ってみましょうか……。いえ、先に教会に事情を聞きに行ってみましょう。

 エレンを一度家に帰し、その足で教会へ向かいます。


 教会は、連日昼夜を問わずにお祝いムードになっているそうです。

 いつもは門番に追い返されるのですが、門番はお酒を飲んで気が緩んでいるみたいで簡単に教会の中に入る事ができました。


 私は神官長の下へと歩いていきます。

 神官長は私を見るなり嫌そうな表情をしています。やんちゃな私とエレンが一緒にいる事をよく思っていないのでしょう。


「これはこれはレティシア嬢。なんの用ですかな? 貴女のような方はこの教会に相応しくない。即刻出て行っていただきたいのですが?」


 神官長は私を突き飛ばそうとしてきますが、その程度の力で私を転ばせるとでも思ったのでしょうか? 私は、神官長の腕を掴み、強く握ってみました。


「ぎゃああああああああ!!」


 神官長は大げさに騒ぎ立てます。

 きっと、いつもの嫌がらせでしょう。この後に腕が折れているという人が現れます。


「し、神官長の腕が折れている!! 誰か聖女を連れてきてくれ!!」


 ほら、いつも通りです。エレンがパフォーマンスに利用されるんです。こんな人が神官長をやっていいんでしょうか?

 そして、エレンが神官長を治療している間に、教会から追い出されます。

 いつもの事です。


 このままでは騒ぎになるので、一度、家に帰る事にします。

 明日、神官長に勇者様の事を聞くとしましょう。


 家に帰った私は、今日の晩御飯の魔物を狩る事にしました。今日のご飯はドラゴンのステーキです。ドラゴンの尻尾を少し貰いに山に行きます。

 ドラゴンはそこら辺の魔物と違い、少し斬っただけでは死にません。最近は戦う事もせずに尻尾を差し出してくれるようになりました。

 一週間に一度斬っていますが、尻尾は元に戻るのでしょうか?


 今日の晩御飯をドラゴンさんに分けてもらい、家に帰ると、神官長が私の家の前にいます。また苦情ですか? 

 とはいえ、私も聞きたい事があります。私が話をしようとすると、神官長は意地汚い顔でニヤケついています。


「なんですか? 気持ちが悪いです」

「ふふふ……。君が仲が良かった聖女の事だ。一応君にも教えておいてやろうと思ってね」

「何をですか? 私も聞きたい事があるのですが、先に話を聞いてあげます。早く話してください」

「き、貴様! 私が誰か分かっているのか!?」

「神官長ですよね。知っていますよ。本当は貴方程度に時間を使いたくないんです。早く話してくれませんか?」

「口の減らないガキだ。いいか、よく聞けよ……」


 神官長は話し方がねちっこくていちいちムカつきますが、話の内容はおおよそ理解しました。


 話を要約すると、つい先程、エレンは旅に出てしまったようです。

 神官長は私への嫌がらせに、エレンとのお別れをさせなかったそうです。ムカつきますねぇ……。。とはいえ、旅に出てしまった以上、私にはどうする事もできません。

 もし、エレンが助けを求めて帰ってきた場合、力になれるように、準備だけはしておきましょう。


「エレン。もし困ったら帰ってきてくださいね……」


 私は、少しだけ痛めつけた神官長をゴミ捨て場に捨てに行き、エレンの無事を神様に祈りつつ、家の中へと戻りました。

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