教会編 2話 教会側の言い分
教会の人達が押し寄せてきた……ですか。
しかし、この国の教会は滅ぼしたはずですのに、まだごちゃごちゃ言って来る人がいるんですか?
姫様からはついてきちゃダメと言われましたけど、こっそりと後を付いて行きます。
お城の入り口のある広間では、教会の人達が、怒りの形相でお城の兵士達に怒鳴っていました。
こんな狂った連中の相手をしなきゃいけないなんて、兵士さん達も大変です。
私が兵士さんだったら、即刻斬り殺しているでしょうね。あんな狂った人達の相手をしている兵士さんは優しいです。
「神敵、レティシアを出せ!! 偉大なる教皇様を惨殺し教会を破壊した犯人を匿うとは何事だ!!」
「この国は、唯一神アブゾル様を愚弄するのか!!」
「不当な拷問を受ける勇者様を解放しろ!!」
ふむ。
好き放題言っているみたいですね。
しかし、聞く価値もない言葉です。
「あの……屑共……」
あ、カチュアさんもついてきたんですね。
教会の連中がムカつくのは仕方がないかもしれませんね。
「レティシア様。あの愚か者どもを殲滅しましょう。この国に教会は必要ありません。そもそも、建物の教会はもうないでしょう?」
「そうですね。姫様に逆らった事を後悔させてやりましょう」
私とカチュアさんが教会の人達を殺す為に出ようとすると、レッグさんに肩を掴まれます。
「なんですか?」
「汚い手でレティシア様に触れないでください」
「おいおい……。山賊みたいな面でも、一応は
「知りません!!」
これがカチュアさんのいいところであり、悪いところでもあると姫様が言っていました。
「ところで……。お前達は何をしようとしていたんだ?」
「愚か者共に、死という救済を与えてあげようと思いまして……」
「なんだよ……。死という救済って」
「だって、神は死んだじゃないですか。その神を崇拝するなら、同じように死ぬのが救済になると思ったのですが? という事で」
レッグさんも納得してくれたでしょうし、殺しに行こうとしたのですが、やはり止められてしまいます。
「だから、なんですか?」
「今はネリーに任せておけ。お前が出るとややこしくなる」
ややこしいとは失礼な事を言う人です。
王族になったのですから、ツルツルにしてしまいましょうか……。
ダメです。
姫様が悲しんでしまいます。
私はそっと兵士さんを見ます。
あ、姫様が教会の人と話をしています。
「貴方達の言い分はわかったわ。で? レティが関わっているという決定的な証拠でもあるの?」
「アブゾル様の神託だ!! それ以上に……「ふざけるんじゃないわよ!!」……な、なに!?」
神託と聞いた瞬間に姫様が怒鳴りました。
「神の神託か何かは知らないけど、その神に選ばれた存在である勇者が何をしたのか、貴方達はもう忘れたの!? ここに抗議をしている人達の中にも王都暮らしの人々もいるようだけど、勇者の横暴を貴方達が許したおかげで不幸な人が沢山出たわ。それに関する謝罪と賠償を教会がしてくれたの? 答えなさい!!」
まったくもってその通りです。
私達の後ろにいたレッグさんも、姫様の隣まで歩いて行きました。
「で? あんたら教会は、あんたらが崇めた勇者の被害者達にどう謝罪と賠償を行う気だ? まさかと思うが、神の意志だから自分達には関係ないとは言わんよな? 現に神の神託とやらで、この国の英雄であるレティシアちゃんに仇をなそうとしているのだからな」
「な……。教皇を殺した罪人を英雄だと?」
「少なくとも、勇者タロウの被害者を守ったのは事実だろう? しかも魔王まで倒している。それに比べ、教会は何をした? 勇者タロウと共に魔王とでも戦いに行ったのか?」
レッグさんの問いに、教会の人達は何も答えません。
「何も答えないのか? ここに神敵レティシアがいるんだろう? 神とやらは都合の悪い事は何も答えないのか?」
「だ、黙れ。元冒険者風情の男が何を偉そうに!! 王女ネリーも同じだ!!」
はて?
今、姫様を呼び捨てにしましたか?
姫様は今ファビエ王国の女王なのですよ?
私が出ていこうとした瞬間、カチュアさんが姫様を呼び捨てにした男の胸ぐらをつかみます。
「貴方!! 不敬ですよ!!」
「な、なんだ、き、貴様は!?」
「お黙りなさい!! 教会が国とは不干渉なのは知っていますが、相手はこの国の女王陛下なのですよ!! そんな御方を敬称なく呼ぶとは、アブゾル教だからと言って、そんな無礼が許されるとでも思っているのですか!!」
「し、しかし……。この国は神敵を匿って……」
「お黙りなさい!! そのアブゾルの神託が何だというのですか!! 町に出てみなさい!! 貴方達をよく見ている人などいませんよ!!」
「き、貴様!! アブゾル様に対して……『様』をつけんか!!」
「そう言うのであれば、ネリー様に敬称をつけなさい!! それが当り前でしょう!!」
カチュアさんの剣幕に、教会の人達は少し及び腰になっています。
これで、教会の人達は何も言えなくなると思っていたのですが、一人勇気のある人が、カチュアさんに話しかけます。
「ま、待て……。確かに、敬称を付けなかった事はこちらに非がある。だが、神様と女王陛下など比べるまでもなく、神様を崇めるのが普通だろう?」
あぁ……。
あの人は馬鹿なのですか?
今の言葉にカチュアさんの肩が震えています。
「はい? 何故、この場にもいない神を崇める必要があるのですか? そうですね。神は糞野郎とでも言っておきましょうか? さぁ、神罰……、裁きを起こして見なさい!!」
カチュアさんは、両手を広げます。
「さぁ、早く裁きとやらを起こしなさい!! 神にはその力があるのでしょう!?」
すると、教会の人が動こうとします。それにカチュアさんが気付くと「何を動いているのですか!?」と怒鳴り付けます。
「貴方が動かなくとも、全知全能である神ならば私を殺せるでしょう!! 何故、信者でしかない貴方が動いて、私に何かをしようとするのですか!! 貴方の行動は、神が無能だと言っているようなものなのですよ!!」
確かにその通りです。
動けば神が無能と自分達で認めるようなものなのですから、動けるわけがありません。
あ、こそこそ隠れて魔法の詠唱をしようとしても同じです。
「魔法を使おうとしても同じです。私は魔力の流れを読み取る事ができるんですよ!! そこの貴方が今、私を魔法で殺そうとしている事にも気づいています」
カチュアさんは後ろの方にいる魔導士風の信者を指さします。その先を一斉にみんなが注目します。
信者は注目される事で、魔法の詠唱を中断したようです。
まぁ、例え詠唱に気付いてなくとも、私がいる以上、魔法が当たる事はないのですが……。
「さぁ!! どうしましたか? まぁ、無理でしょうね……。神など所詮は偶像にしかすぎません。神は誰も救わず、誰を傷つける事もありません。これがこの世界の真理です」
カチュアさんはそう言っていますが、この世界に神はすでにいませんけどね……。カチュアさんにも話してありますから、多分わかって言っているのでしょうね。
「で? これで神がいない事が立証されました。貴方がたは何を理由にこのお城へ来たのですか?」
教会の人達は何も言わずに黙り込んでいます。
はぁ……。そろそろ、私が出ますか。
「カチュアさん。そこまでにしておきましょう。あの髭爺を崇めているような連中にまともな話が出来ると思いません」
「レティ!?」「レティシアちゃん!!」「レティシア様……」
私は、ゆっくりと一番前にいる人の前へと足を運びます。
あれ?
顔が青褪めていますよ?
「私がレティシアです。さぁ、話し合いましょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます