番外編 タロウ編 2話 王都の変化


 エレンが仲間になって半年が経った。

 聖女であるエレンは最初は嫌がっていたが、無理やり犯し続けた結果、今では無抵抗で俺を受け入れるようになっていた。

 しばらく弄んでいたのだが、ある日からエレンの目から光がなくなり、俺の言葉にほとんど言葉に反応しなくなっていた。

 それはそれで、俺としては屈服させたと思い込み、楽しんだ。

 

 ある日、エレンはネリーに引き取られた。

 まぁ、壊れた女にこれ以上は興味がなかったし、もう体にも飽きていた。

 だが、ある日、エレンが自殺したと聞いた。


 糞女が……。

 ちょっと弄んでやっただけで、勝手に死にやがって。


 だが、俺自身がエレンを聖女に祭り上げたせいで、自殺という噂が流れるのは不味い。

 俺は仲間たちに相談を持ち掛けた。


「エレンが自殺しやがった。アイツは聖女だ。聖女が自殺したと知れ渡っちまえば、俺達の評判を下げる事になっちまう」

「そうですわね。勇者パーティに選ばれたのに、勝手に壊れて死ぬなんて、なんて情けないの……」

「死人に口なしね。ネリーが殺したと押し付ければいいね」

「馬鹿野郎。ネリーは俺の妻になる女だ。アイツが妻にならねぇと、ファビエが手に入らねぇじゃねぇか」

「そ、それはごめんね……」

「いい方法があるわよ」


 ジゼルがいい案を出してくれた。


 俺は早速、ファビエの教会に向かい、新しい聖女を用意してもらった。

 そして、勝手に自殺した聖女エレンは、偽物として勇者に体を使って取り入った事にした。

 

 教皇は新たな聖女を用意する見返りに、多額の金を要求してきたが、それくらいは簡単に払える。まぁ、金が足りなかったら、金持ちの家に言って金を巻き上げればいいだけだがな。

 金を受け取った教皇は、全世界の教会にエレンの情報を捏造・・してばらまいた。

 一週間で噂は全世界に広がり、エレンは稀代の悪女として語られる事になった。

  

 これで安心だ……。

 俺はそう思っていたのだが、エレンを看取ったネリーは黙っていなかった。

 だが、教会が発表したのだから、ネリー一人の力で覆る事はない。そう思っていた。



 新しく用意された聖女の名はマリテ。

 俺好みの女だった。

 俺は早速マリテが加入した日の夜に抱いた。


 くくく……。

 エレンが自殺した時は少しだけ焦ったが、マリテがいればそれでいい。

 俺達が五人が楽しく旅をしていると、妙な噂を耳にした。


 エレンがいた町の教会が滅びた……。


 ジゼルとマリテは「まさか聖女の呪い?」と意味の分からない事を言っていた。

 だが、俺は呪いとは思えなかった。


「エレンは俺が用意した聖女だぞ? そんな女が死んだからと言って、呪いなんて起きねぇよ」


 俺は本気でそう思っていた。

 その日の夜。

 商人から、さらに意味の分からない噂話を聞かされた。

 エレンがいた町が滅びたというのだ……。


 あの町には高い壁があった。という事は元々魔物による脅威に晒されていたのだろう。

 俺は確信した。


「エレンのいた町が滅びたらしい。魔物に襲われたと思われる……。だから呪いなんかじゃなかったって事だ」


 俺達はあの町が滅びた理由を、魔物が原因と決めつけた。

 だからこそ、俺達は楽しみながら旅をつづけた。


 そして……ついにあの噂を耳にしてしまった。


「なんだと? 国王が死んだだと? ネリーはどうなったんだ!?」

「ネリーが女王になったそうよ……。タロウ、ファビエ王がいなくなれば……」

「あ……、あぁ……」


 あくまで噂話だ……。

 俺達は一度ファビエ王都に戻る事を決めた。



 ファビエ王都に戻ってきた俺達を待っていたのは、ファビエ国民や兵士達の冷たい軽蔑の目だった。


「おい。俺は勇者だぞ? たかが門番程度になぜそんな目で見られなきゃいけねぇんだ?」


 俺は兵士の胸ぐらを掴む。

 しかし、門番は「貴方がたは、魔王をまだ倒していません。だから、今はまだ勇者ではありません」とぬかしやがった。


 ふざけんなよ。

 俺は兵士を殴る。


「国王はどうした? てめぇのような無能な兵士は処刑させる」

「前国王は処刑された。今はネリー様が女王だ……。もう、貴方が好き勝手出来る国じゃなくなったんだ」

 

 ふざけるなよ……。

 俺は兵士を斬った。俺に逆らう馬鹿は死ねばいい。


 兵士は仲間が殺された事に何かを言っていたが、文句を言った兵士も斬った。

 俺達は王都の中に入り、仲間たちに別行動を指示した。

 仲間達も慣れた様子で王都に散っていった。

 

「さて、今日はどの女に声をかけるかな」



 俺はいつも通り、道行く女をひっかけようと声をかける。

 しかし、今までと違い反抗してきやがった。


「俺の言う事が聞けないだと? ふざけるなよ」

「タロウ様は勇者かもしれませんが、何も結果を残していません。ネリー様がそうおっしゃった以上、もう貴方の蛮行に屈する必要が無くなったのです!!」


 ふざけるなよ……。

 俺は勇者だ!!

 この国の人間は俺の言う事を聞いておけばいいんだよ!!


 俺は聖剣を手にして女に斬りかかった。


「俺の言う事を聞けないやつは死ね!!」


 女は悲鳴を上げたが、俺が斬った瞬間に、その場に崩れ落ちる。


「きゃあ―――――!! 勇者様が!! 勇者様が人を殺したわ!!」


 チッ。見られてたか!?

 俺はその場から逃げ出す。


 クソっ。どうなってやがる。国王が生きていた時は、人を殺したくらいでは何も言われなかった。

 何が原因だ? 

 いや、原因は一つだ。


 ネリー!!


 いい女だと思って数々の暴言を許してやっていたが、もう我慢の限界だ。

 今の俺達ならば、レッグを殺せるはずだ。


 俺は物陰に隠れながら、王城に向かう。

 俺が高級宿屋の陰で隠れていると、立派な剣を担いだガキが歩いていた。

 

 あのガキは、エレンと一緒にいた小汚いガキじゃないか!? 

 なんで、あのガキがこの国にいるんだ? しかも、あんなに血まみれの格好で何をしてやがる!?


 いや、気にする必要もねぇ……。

 今の俺はさらに強くなった。ガキ一人簡単に殺せるはずだ。

 俺はガキに剣を寄越せと声をかける。ついでに味見をしてやろうと手を引いた……。その瞬間、腕を折られた!?

 

 え?

 ちょ、ちょっと待て……。

 なんで俺の腕が折れてるんだ?


 ふざけんな!! 

 そう思って襲いかかったら、意識が飛んだ……。



 俺は下半身が寒いと感じて、目が覚めた。


 な、何があったんだ?

 ガキに何かされたのか?

 いや、この俺があんなガキに何かされたとは考えにくい。

 というより、どうして俺は下半身丸出しで宿の前で倒れていたんだ?

 

 だ、誰だ!! 俺をこんな目に合わせたのは!?

 俺は、羞恥心を感じ、路地裏へと逃げ込む。

 あのガキ……許さねぇ……。


 路地裏でズボンをはき替えた俺は仲間を呼ぶ。


 五分後、仲間が集まったのだが、仲間達は機嫌が悪そうな顔をしていた。


「どうだった?」

「私達を蔑んだ目で見て来たわ。この国の国民は、感謝という気持ちは無いのかしらね」

「私も同じ。食事をしようとしたら、入店拒否されたよ。暴れて店を破壊してやったけど」


 そう言って、笑うアルジー。


「マリテ。教会の方はどうだった?」

「教会は跡形もなく破壊されていました。教皇も殺されたらしく、王都では教会の威光はもう使えないかと……。誰がそんな酷い事を……」

「ネリーだろうな。アイツは教会の腐敗に気付いていた。エレンが聖女に選ばれた事も疑っていたようだし、アイツが間違いなく絡んでいる」


 まったくふざけている……。


「タロウ。どうするの?」


 ジゼルが俺に聞いてくる。


「そうだな……。城を堕とすぞ!!」


 俺達は、兵士達を皆殺しにする為に、ネリーのいる城へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る