第21話 剣が折れましたが復活しました。


 ブレインは口だけではなく、しっかりと実力を兼ね備えていました。

 斬撃は流れるようで、しかもかなりの手練れの様です。私もブレインの斬撃を剣で受けています。

 相手の魔剣は良い剣だけあって、このままでは私の剣が折れてしまいそうです。


「どうした!? 反撃する事もできないか!?」

「はい?」

「手も足も出ないのか!?」

「手は貴方の攻撃を捌いているじゃないですか。しかし、今のセリフはムカつきますね。足でも出してみましょうか」

「なに!?」


 私はブレインの太ももを蹴ります。この場所は蹴られるとかなり痛いのを知っていますか?


「ぐっ……」

「どうしました? 攻撃の手が緩みましたよ?」


 クスッ。

 結構痛かったんですね。


「だ、黙れ!」


 攻撃の手を緩めたのは一瞬で、ブレインはすぐに体制を整えました。なかなかやりますね。


「やはり強いな」


 ブレインは少し楽しそうな顔をしています。……ムカつきますねぇ。


「余裕ですか?」

「……」


 アレ?

 無視されました。

 あ、もしかして聞こえていませんか?

 剣の音で聞こえませんか? しょうがないですねぇ……。

 私はブレインの耳元に顔を持っていきます。

 

「余裕ですかぁあああ!!」

「うるさいわ!?」


 返事をしてくれないのが悪いんです。

 私が大声を出してから、ブレインはその場で立ち止まり魔剣を見つめています。


「無視するからいけなんですよ。それよりもボーっとしてどうしましたか?」

「この魔剣を見てみろ。美しい輝きだろう?」


 見ようによっては黒光りなので綺麗だと思いますが、魔剣から出ている禍々しい魔力がその綺麗さを曇らせています。


「美しいですかねぇ……。目が腐っていませんか?」

「ふふふ。それに比べ貴様の剣を見てみろ」


 私の剣ですか?

 あ、刀身がヒビだらけになっています。これは……。

 

 パキィ!


 あ、真ん中で折れてしまいました。

 

「ぐぼぉ!?」


 私はブレインの腹部を殴ります。

 一撃で殺さないように、痛めつけるつもりで殴りつけます。


「な、何をする!?」

「私の大事な剣を折っておいて、自分の剣を見て酔っているのがムカつきます」


 私は自分の剣を床に置きます。

 大事に置いておいて、エレンのお墓の近くに埋めましょう。エレンも私との思い出の品が近くにあれば喜んでくれるでしょう。

 しかし、これを折ったブレインは許しません。


「いや、精鋭達との戦いでもそうだったが、お前の剣の使い方が悪いから剣が折れたんだろうが!」

「うるさいです」


 ブレインは魔剣を私に向け余裕そうにしています。武器が無くなったら私が戦えないとでも?


「さて、負けを認めるのなら殺さずにいてやる。しかし、まだ抵抗するのなら……ここで……殺す」

「殺すですか……。私が剣が無いからと言って私を倒せると思いますか?」

「なに?」


 私は、ブレインの顔を殴りに行きます。しかし、避けられてしまいました。まぁ、避けられる速さで攻撃したので避けられて当然です。


「貴方よりも弱いとは思いますが、筋肉と戦った時も……ハヤイと戦った時も……素手でしたよ?」

「な、なに!?」


 私は、笑いながらブレインに近付きます。

 

「さて、楽に死ねると思わないでくださいね。私の大事な剣を折った罪は重いです」

「くっ……」


 あれ?

 ブレインは私の後ろを見ている様です。後ろには誰もいませんよ。私くらいになれば気配を感じる事ができるので騙し討ちは通用しません。


「おや? さっきまでの威勢はどうしましたか? もう諦めたのですか?」

「な、なんだ……。その剣は……」

「はて?」


 剣?

 私は折れた剣を見ます。

 

 あ!?

 私の剣が青い炎で燃えています。


「な、何て事をするんですか!? アレは私の大事な剣と言っていたじゃないですか!? 貴方は惨たらしく殺します!!」


 私はブレインを睨みつけますが、ブレインは剣を見て怯えています。

 なぜでしょう?

 私が剣をもう一度見ると、青い炎を上げながら剣が浮いています。そして、剣も綺麗になっています。


「はて。剣が元に戻りましたよ」

「ふ、ふざけるな……。せ、聖剣だと?」


 聖剣ですか?

 剣は私の下へと飛んできます。


 そして、剣を掴みます。

 とてもしっくりくる剣です。今までよりも素晴らしい剣です。

 私は試し斬りに魔剣を攻撃してみます。

 すると、魔剣が奇麗に斬れました。


「な!? お、俺の魔剣が!?」

「折れましたね。今なら魔剣も燃やせそうです」


 私の剣の炎はブレインの魔剣に燃え移ります。


「ば、馬鹿な!?」


 ブレインの魔剣が燃え尽きた後、ブレインは無防備になります。よほどショックだったのでしょう。


「じゃあ、さようならです」


 私はブレインの腕を斬り落とします。


「ぎゃああああ!!」

「く、くそっ……。ば、化け物め……」


 誰が化け物ですか。失礼な事を言う魔族です。

 私はブレインを何度も殴ります。


「そろそろ終わりにしましょうか」

「く、くそっ。私はまだ、負けていないぞ……」

「まだ立ちますか?」


 ブレインは立とうとしますが、結局立てないようです。


「ちっ。クソっ……。もう立てねぇ……か」


 はて?

 ブレインはなぜか笑っています。どうしてでしょうか?


「何をニヤニヤしているんですか? 気持ち悪いです」

「くくく……。殺すんなら早く殺せ」


 ふむ。

 まぁ、殺せと言っているのですから、殺しますか。

 私は剣を振り上げます。


「さぁ……死んでください」

「じゃあな。また会おう……」


 私はブレインを斬り、燃やし尽くしました。

 しかし、気になる事を言っていましたね。


「また、会おう……ですか。死んだら生き返れないと思いますが不思議な事を言いますね」


 まさかと思いますが、魔族は生き返れるんですか?


「まぁ、良いです。さて……残りの四天王は後一人です」

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