第22話 復讐の四天王ですか。私と同じですね。


「へぇ~。大きいですね。これが魔王城ですか……」

 

 私の目の前には、魔王城の大きな門があります。その奥に見える魔王城も、門に相応しいほどに大きく立派なお城でした。

 私の足元には、門番だった魔族の死体が転がっていました。


「しかし、一撃で殺せるような魔族に門番をさせるなんて、不用心ですね。もしかしたら、魔王軍とやらもたいした事は無いかもしれませんね」


 私は中に入る為に、門を斬り刻みます。剣で斬れるなんて脆いですねぇ……。


 門から魔王城の入り口は、そこそこ離れていたのですが、警備の魔族は一人もいませんでした。

 魔王城に入ってみると、中はとても豪華絢爛に作られていました。

 

 魔族の癖に、ムカつきますねぇ……。


 私は炎魔法を色々な方向に投げつけます。すると、豪華な壁などが、次々と崩れていきます。


 暫く破壊活動をしていると、奥の通路から何人かの魔族が走ってきました。


「貴様!! 何をしている!?」


 何をしていると言われても、破壊活動としか言いようがありません。破壊するモノの中には、魔族も含まれているので、私は駆け付けてきた魔族を皆殺しにします。

 

 私は破壊活動を起しながら、先に進みます。

 当然、大きな音をたてている以上、色々な魔族達がも襲ってきます。

 襲ってくる魔族も逃げる魔族も全て殺しているので、私の通った後は、魔族の死体があふれていました。


「しかし、こんなに騒がしく侵入しているのに、なぜ気付かれないのでしょう? もしかして、魔王は一番奥で私を待っているのでしょうか? それに四天王の最後の一人もまだ現れません」


 私は首を傾げながら、窓の外の中庭に魔法を撃ちこみます。

 二・三発撃ち込んでみると、爆発とともに魔族達の悲鳴が聞こえてきます。

 魔族の悲鳴を聞いていると、背筋がゾクゾクしてきます。


 しかし、最後の四天王は悠長な人の様です。

 部下が、悲鳴を上げているのに、助けにもこないなんて……。


「酷いと思いませんか?」


 私の背後に立っている魔族にそう聞いてみます。全く、まだまだ強そうな魔族がいるではありませんか。


「酷いか……。酷いと思うのなら、お前も魔法を撃ちこむのを止めようと考えないのか?」

「え? 魔族は皆殺しにするので、酷くないですよ?」

「そうか……。これ以上、同胞を殺させるわけにはいかんな……」


 同胞? これが最後の四天王ですか。ブレインよりも強い魔力を感じます。

 まぁ、ブレインよりも強いといっても、焦るほどは無いので、ゆっくりと振り返ります。

 そこに立っていたのは、金色の髪の毛を腰まで伸ばした、痩せ型の老齢の魔族です。というか魔族ですよね? 魔族の特徴が一切なく、人間と見た目が変わりません。

 強いて言うなら、眼が赤いくらいですか。


「ふん。随分と余裕だな。俺は、魔王四天王筆頭、魔力のマジックだ。お前も名乗れ」


 名乗れですか。他の三人は、私の素性も聞かずに襲ってきたというのに紳士的ですね。

 ……いいでしょう。


「私はレティシア。ただの人間の小娘です」


 私は、勇者でもなければ、どこかの兵士でもない。ただの小娘。これが一番しっくりきます。


「ただの小娘に四天王の三人が殺されたというのか? 全く、笑えない冗談だ……」


 そう言って、マジックは小さく笑います。

 いえ、笑いはしていますけど、その目は怒りに染まっているように見えました。


「で? 貴方は何しに来たんですか?」

「当然、お前を殺しに来たのだ。強いて言うならば、他の三人や殺された魔族達の復讐だな」


 まぁ、そうでしょうね。それにしても復讐ですか。私と同じですね。

 しかし、殺しに来たというならば、どうして不意打ちしてこないんでしょうね?

 私が首を傾げていると、マジックが私の疑問に答えてくれます。


「今から俺とお前は殺し合いをする事になる。それが済んでしまえば、どちらかが生き残り、どちらかは死ぬ。その前に、お前と話をしておきたくてな」

「話とは何ですか?」


 マジックは、私が警戒すらしていない事に少し呆れながらも、私に聞きたい事を聞いてきました。


「まず、お前が魔族を襲う理由を聞きたい。お前はただの小娘で、勇者ではないだろう? そもそも、勇者はタロウとか言う人間の男の筈だ。あいつはまだ、勇者としての力を使いこなせていない」


 ん? ブレイン達が報告でもしたんでしょうか?


「随分と詳しいですね。まぁ、あのウジ虫の事はどうでも良いです。私が、魔族を滅ぼそうとする理由……」


 私は、マジックにエレンの事を話します。

 私が話しているうちに、マジックの顔が怒りに染まります。


「まさか、たった一人の人間の為にここまでの虐殺を行っていると? しかも、お前の話では、魔族だけじゃなく人間の一部も復讐対象になっているだと?」

「そうですよ? 現に、王都の教会と教皇は既に始末しました。国王も始末しましたし、人間側は、後は勇者一行だけです。本来は、王族である姫様も殺そうかと思っていましたが、彼女は私にとってと判断しました。紫頭……たしか、ケンといいましたっけ? 彼は魔族ですが、面白かったし、自分に素直だったので気紛れで生かしました。今の所、生かしておく魔族は紫頭だけの予定です……が」


 私は、マジックを指差し「貴方も生かしておこうと思っています」とにっこり微笑みます。

 私の突然の行動にマジックは、顔を怒りで歪ませながら、笑います。


「良い冗談だ!! 俺をに倒す事が出来たのなら、お前に従ってやろう!!」


 そう言って、マジックは魔剣を召喚します。

 さて、殺さずに戦うとしましょうかね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る