第27話 町に変な人がいましたから、倒しておきました。


 私は、近くの噴水で顔を洗って、お城に向かいます。これで、顔は綺麗になりましたよ。

 しかし、先ほどの兵士さんの言っていた通り、町がなぜかピリピリしています。


「事件の詳細は聞いていませんけど、町全体がピリピリしているみたいです」


 姫様が王様になれば、町の様子が良くなると思ったのですが、流石にすぐには無理ですよね。


 お城に向かう道中なのですが、町の人達にジロジロと見られているみたいです。

 顔を洗ったとはいえ、魔族とはいえ血の色は赤。服にも魔族の血がついていますからね。普通の人から見れば異質でしょう。もしくは殺人事件の犯人と思われていますかね?


 私は、少しだけ早歩きになります。間違えられたら堪ったものではありませんから……。

 

 お城が見えてきました。もうすぐ到着です。

 私はお城に急ぎ足で歩いていると、大通りの方で町の人達が騒がしくなっています。。

 私は、気になったので見に行ってみる事にしました。


 はて?

 大通りに出たのはいいのですが、人が多くて何も見えません。

 私は、目の前にいるおじさんに声をかけます。


「あの~。何があったんですか?」

「あぁ……!!?」


 おじさんは、私を見て顔を青ざめさせます。。


「お、お嬢ちゃん。その恰好は?」


 そうです。

 ここは素直に本当の事を話しておきましょう。


「魔族を狩りに行っていました。魔王を倒したので、帰って来たんです。この血は魔族の返り血です」


 私がそう言うと、おじさんは少し笑顔になります。


「魔王を倒すのは勇者の役目だろう? でも、……その勇者が……」

「どうしました?」


 おじさんの話では、勇者というウジ虫が女の人をナンパ? したそうです。しかし、女の人は誘いを断ったそうです。ですが、怒ったウジ虫が女の人を斬ったそうです。そして、ウジ虫はそのまま逃走。女の人は死んでしまったそうです。


 今は、兵士達が勇者を探しているそうです。

 ツルツルが国王の時は、勇者が何をしても許していたそうなのですが、今は姫様が国のトップなので、ウジ虫が勇者であろうと、犯罪は犯罪なのでしょう。私も町の人は殺すのは止めておきましょう。

 私は小さいので人込みを抜けるのは簡単なので、騒ぎの中心に近づきます。


 道の真ん中には、血塗れで倒れている女の人がいました。

 倒れている女の人は、きっと痛かったのでしょうね。苦しんだような顔をしています。

 私は女の人に近づき、目を閉じさせます。


「大丈夫です。ウジ虫は私が殺しますから……。簡単には殺さずに、恐怖のどん底に堕としてから殺しますので、安らかにお眠りください」


 私は殺された女の人に手を合わせ、その場を去ります。女の人の遺体は兵士の人がちゃんと弔ってくれるそうです。


 私はお城の大門までたどり着きました。すると、何かの視線を感じました。

 あの宿屋の方向からですか……。

 中……、窓からですかね? いえ、違いますね。

 建物の影ですか。


 私は気付かない振りをして、宿屋に近付きます。

 すると、突然手を引かれて建物の陰に連れ込まれてしまいました。


「痛いです。何をするんですか?」


 私の手を引いたのは、茶色い髪の毛で整った顔をした青年でした。

 青年は、私を見て口角を吊り上げました。気持ち悪いです。


「おいおい、お前みたいなガキが、良い剣を持っているな。それは俺が使ってやるよ。ついでにお前の体でも遊んでやるぜ」


 はい? なぜ、得体も知れない人に剣を渡さなきゃいけないんでしょう? それにしても気持ちの悪い顔ですね。

 私は、青年の腕を握りつぶします。


「ぎゃああああ!!」


 青年は痛みで声を上げます。そして、私を睨みつけ叫び始めました。


「汚い格好の小娘が俺様に逆らうんじゃねぇ!!」


 そう言って、襲いかかってきました。

 よく見れば、青年はズボンをはいていません。汚いモノが股間にぶら下がっています。


 そういえば……。


 昔、エレンに聞いた事があります。男の人は股間を蹴り上げると無力化できると。この汚いモノが急所なんですね。蹴り潰しておきましょうか?

 私は股間の汚いモノを思いっきり蹴り上げます。

 蹴った瞬間、青年は顔を青褪めさせて、泡を吹いて倒れます。

 一度では潰れたかどうかわからないので、何度も踏みつけておきます。

 股間が血塗れになったので、満足しました。あぁ、靴が汚れたので後で捨てておきましょう。


「しかし、話には聞いていましたが、ものすごい威力ですね。ちょっと蹴っただけですのに、いきなり気絶するとは思いませんでした。しかし、王都というのはどうして変な人が多いのでしょう」


 私は青年を引き摺り、宿屋の前に置いておきます。


 靴を捨てた後、青年の様子を離れた建物の影で見ていたのですが、宿屋のお客さんが青年に気付いたようです。


 どうやら思い通りに騒ぎになったみたいです。

 私は満足してお城に入ります。


 お城に戻った私は、真っ先に姫様への報告へと向かいます。

 部屋に入ると、姫様から先にお風呂に入るように言われました。

 そういえば、服が血で汚れていましたね。


 私は姫様のお付きのメイドさんであるカチュアさんに連れられて、お風呂へと向かいます。


 魔王を倒した疲れを癒すために、お風呂でゆっくりと使っていると、外が騒がしくなりカチュアさんに呼ばれました。


「どうしました?」

「勇者タロウが帰還したそうです……。帰ってこなかったらよかったのに……」


 カチュアさんはとても嫌そうな顔をしていたので、ウジ虫は嫌われているのでしょう。

 カチュアさんもウジ虫に言い寄られた事があるそうで、股間を蹴って逃げたそうです。その後は姫様がカチュアさんを守ったそうです。


 私はお風呂から上がった後、姫様と会いました。

 姫様は少し疲れた顔をしていて、私にこう言いました。

 

「レティ。貴女も勇者タロウと会って欲しいの。そこで魔王の事も報告してくれない? あ!! 私の許可があるまでタロウを殺さないで欲しいの」


 そこは大丈夫です。

 ウジ虫は痛めつけてから殺すので、今は殺しません。

 私は了承して、姫様について行きます。

 さて、ウジ虫とはどんな人物なんでしょうね……。

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