第23話 魔族の全て? 知りませんね。


 何度かマジックと剣を交えましたが、マジックの剣技は見事な物でした。

 もしかしたら、今まで戦った誰よりも強いかもしれません。殺さず倒すのは難しいかもしれませんが、頑張るしかありません。


「貴方は他の四天王達とは明らかに格が違いますね。素晴らしいです」

「そうか? お前も剣技には程遠いが、面白い戦い方をしているな」


 マジックは、剣を振るいながら笑っています。とてもじゃありませんが、復讐の為に戦っているとは思えない顔です。

 そんな顔を見てしまえば、私もついつい楽しくなってきてしまうじゃないですか。


 しかし、マジックという名前なのに、魔法は使わないのですね。不思議なモノです。


「魔法は使わないのですか? もしくは使えないと?」

「ん? それはこちらも同じだ。お前はさっき魔法を使っていただろう?」


 もしかして、私が使わないから使わないと?

 随分と余裕なんですねぇ……。


「余裕ですか? ムカつきますねぇ……」


 確かに、マジックの剣技は素晴らしいです。しかし、私も殺さないように戦っているので、本気ではないですよ?


「しかし、困りましたねぇ……。私は魔法を使えませんし……」

「なんだと? さっき使っていたではないか」

「あぁ、使えますが、この戦闘では魔法は使えません。使ってしまえば、貴方を殺す事になってしまいますから」


 私は笑顔でそう言います。マジックは、苦笑いを浮かべています。


「ほぅ。つまりは、手加減して戦っていると?」

「そうですよ? さっき言ったじゃないですか。殺さずに戦うと」


 そもそも復讐の為に戦おうとしている人は嫌いではありません。

 だからこそ、マジックを生かしておこうと思ったのです。


「そもそも、私は最初にこう言ったんですよ。四天王全員でかかって来いと」

「俺達に魔族の……四天王の誇りを捨てろと? ただの小娘を自称するお前相手に、誇りを捨てて寄ってたかって襲えと言うのか?」 

「誇り? そんなモノが何の役に立つのですか? そんなモノでお腹が膨れますか? そんなモノがあれば幸福に生きられるとでも? 詭弁ですね。誇りだのなんだの考えられる時点で、貴方達魔族は恵まれているのですよ」

「恵まれているだと?」

「そうです。人間の中には親に捨てられて、子供の頃から一人で不安に生きている者もいます。それに、女というだけで奴隷商に狙われたりもします。そんな人たちには誇りなんて言ってられませんが?」


 私の言葉をマジックは静かに聞いています。

 しかし、重く低い声で「貴様は、魔族ついてを全てを知って尚、そのような事が言えるのか?」と聞いてきました。


 魔族の全て?

 何を言っているのでしょう?


「それを聞いて、私が考えを変えるとでも?」


 マジックの魔力が高まっていきます。どうやら本気になったという事でしょうか?


「お前は魔族が恵まれていると言っていたな。何度も同じ姿に転生させられて、毎度毎度、勇者や人間を憎むように造られて・・・・、そんな俺達が恵まれているだと?」


 はて?

 同じ姿に転生するですか?


 そういえば、ブレインも「また会おう」と言っていましたね。

 しかし、造られて・・・・ですか……。

 

「その辺の話をもう一度……。詳しく聞きたいですねぇ」


 私は剣を収め、話を聞こうとしますが、マジックはもう話す気もなさそうにしています。


「貴様と話をする事はもうない!! 跡形もなく消えてしまえ!!」


 マジックは魔力球を私に投げつけてきます。

 ふむ。高濃度の魔力球ですね。流石の私でも、これをまともに食らえば……痛いので、消滅させましょう。

 私は、右の拳に魔力を集中させます。


「えい!!」


 私の本気のパンチです。

 私のパンチの衝撃波で、魔力球は轟音とともに消滅していきます。


「はい。消滅完了です」

「ば、馬鹿な……。あれは、俺の必殺技だ。今まで誰にも破られた事のない、最強の魔法だぞ!?」

「そうなのですか? 当たれば痛いと思ったので、消させてもらいました」


 少しばかり痛めつければ、おとなしくなるでしょう。殺さずに捕まえるのであって、痛めつけても大丈夫そうです。


「さて、そろそろ魔王を殺しに行きたいのですが、まずは貴方を倒すとしましょう。さっきの話もゆっくりと聞きたいですからね」


 私は、マジックの顔面を思いっきり殴り飛ばします。そして仰向けになったマジックに馬乗りになり、何度も殴ります。

 三十発くらい殴ったら気絶しました。


「さて、起きるのを待つのは暇ですから、魔王を殺しに行きましょうか」


 私は、マジックを放置して先に進みます。

 この先にきっといるのでしょう……。


 暫く進むと、豪奢な扉があります。私は扉をゆっくりと開けます。


 扉の向こうには大きな玉座があり、何かが座っていました。

 その姿は、銀色の長い髪の毛で、眼は真っ赤に染まり、角が生え、2対4枚の翼を持った、浅黒い肌の男性でした。

 大きさは、私の2倍くらいでしょうか? 威厳というモノがあります。


「貴方が魔王ですか?」

「そうだ……」


 男性はそう答え、ニヤッと笑い立ち上がりました。

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