第8話 アブゾル? 知りません。


 あぁ、ウキウキしてしまいます。

 教会を潰した後に出会える王族が何を言うか今から楽しみで仕方ありません。

 もし、国王と同じく下らない事を言うのならば、首を軽くひねってやりましょう。苦しむ姿が楽しみですねぇ……。

 私が上機嫌で教会に入ると、神官達が慌てふためきます。

 どうしたのでしょうか?


「あ、アイツだ!! テリトリオの神官長や神官達を殺したのはアイツだ!!」


 はて?

 テリトリオなど聞いた事もありませんが、神官長を殺したと言っているのですからあの町の事なのでしょう。

 しかし、おかしいですねぇ……。


「貴方が前の町から逃げ出した神官だというのであれば、私は教会関係者を二度と名乗るなと言っていませんでしたか? 約束は守られなかったのですね。今度はちゃんと殺してあげます」

「な、何を言っている!? ここは神聖な教会だぞ!? 貴様がここにいるという事は町はどうなった!?」

「あぁ。今更ですが、テリトリオの町はもう存在しませんよ。私が焼き尽くし・・・・・ましたから」


 私は笑顔で神官にそう教えてあげます。

 神官はショックだったのかその場で膝をつきます。


「ま、まさか、町の人間を全て殺したのか? たった一人の娼婦のた……ぎゃあ!!」


 おっと、娼婦などというふざけた事が聞こえましたから、ついつい顔面を殴ってしまいました。

 まぁ、良いでしょう。どうせ殺すんですから。


「どちらにしても、貴方は私との約束を無視しました。死んでください」


 私は神官の首をナイフで一突きします。すると神官は体を痙攣させてその場に倒れました。


「さて、今回の事で神官は逃がしても嘘を吐く事が証明されてしまいました。もう、逃がしてあげる必要もないでしょう」


 あの町から逃げてきた神官をアッサリ殺した事で、他の神官達にも恐怖を与えれたようです。

 逃げようとしている様ですが、扉が開きません。

 はて?

 私は扉や窓には細工をしていないのですが……。

 まぁ、どうでも良いです。

 私は逃げようとする神官を一人ずつ殺していきます。


「お、お前はなぜこんなに非道な事をする!? この行為を神アブゾル様は許しはしないぞ!」


 神? アブゾル?

 そういえばこの教会の名前はアブゾル教でしたね。

 という事は神の名前がアブゾルなのですね。

 

 ……。

 まぁ、どうでも良いですけど……。

 

 私は開かない扉を必死に開けようとする神官の下へと向かいます。

 神官は泣きそうな顔で私にこんな事を言ってきました。


「ま、待ちなさい!! こんな事をして、聖女……エレン……が喜ぶと思っているのですか!?」


 ふふっ。

 エレン……ですか……。

 先程まで娼婦呼ばわりしていた屑共が、エレンの気持ちを代弁するとは、どこまで私を怒らせれば気が済むんでしょうね。


 これ以上は聞くに堪えないので、エレンの事を口にした神官の首にナイフを突き立てて、黙らせます。


「あはは。貴方達にエレンを語る資格はありませんよ。それに、教会を襲っているのはエレンの為ではありません。エレンはきっと優しいからこんな事を望んでいないでしょう。でも、私の心が貴方がたを許せないと叫びます。殺せと囁きます。すべては私の為にやっている事です!! とまぁ、悪役っぽい事を言ってみましたが、誰も生き残っていないので聞いて貰えませんねぇ……」


 どちらにしても、私がやっている事は復讐です。

 復讐は何も生みださないなどよく言われますし、間違っているかどうかなんて知りませんけど……、どうやってもエレンは帰ってきません。だから、殺すんです。


 私は教会にいるであろう教皇の気配を探します。


 ……。

 

 最上階に三人いますね。

 私は気配を感じた部屋へと向かいます。

 長い階段には光の魔石も設置していないので薄暗いです。

 この最上階にいるのですね。

 階段を上りきると、そこには扉が一枚あるだけでした。

 この奥が教皇の部屋という事ですか。


 さて、扉の奥で誰かが私を警戒している様ですね。

 一人は扉を守るように立っています。


 まずこの人から殺しましょうか。


 私は扉を蹴破ります。

 すると扉の前に立っていた神官が扉と一緒に壁に激突します。


「まずは一人ですね」


 部屋の中には豪華な服を着た老人と槍を持った神官が立っています。

 もう一人は扉と一緒に……いえ、立ち上がりました。意外とタフなようですね。

 私は老人を一瞥してからタフな神官の首筋を斬りつけます。すると首から鮮血が噴き出してその場に崩れ落ちます。

 あっけないですね。


「な!? き、キサマ。そう簡単に人の命を!?」

「何を言っているんですか? 貴方達も気付いていたでしょう? 下の階で神官が殺されていく様を」

「く、クソっ。それ以上近寄るな!」


 もう一人の槍を持った神官が私を怒鳴ります。


 ……駄目ですよ。


 殺すと覚悟した時にはすでに攻撃を終えていないと、覚悟の意味がなくなります。

 まぁ、もう遅いですけどね……。


「がふぅ……」


 神官の胸には私のナイフが根元まで突き刺さっています。

 神官は血を吐き、恨めしそうな顔で私を見たまま崩れ落ちました。


 二人の神官を目の前で殺された教皇は少し青褪めています。


「き、君が何者かは知らん。だが、こんな事をして何の意味がある!?」


 はて?

 意味とは何でしょう?

 私は無言で教皇を斬りつけます。


「ぐぁ。ま、待ちたまえ!? 私を殺せば神の怒りに触れるぞ!」


 神の怒りですか……。


 私は教皇の足をへし折ります。


「ぎゃあ!」


 足の骨が折れた教皇はその場に座ります。


「うぅ……。な、なぜ君はこんな事を……」

「なぜ? 復讐ですよ」

「な、なに?」

「まぁ、良いです。貴方には聞きたい事があります」

「き、聞きたい事だと?」

「そうです。エレンが聖女に選ばれた理由は何ですか?」


 私がそう聞くと、教皇の顔が青褪めます。

 もしかして知らないのですか?

 私は教皇の頬を叩きます。


「まさか、知らないとは言いませんよね。貴方は教会のトップの教皇なのでしょう? 知らないはずはありませんよねぇ……」


 私はもう一度頬を叩きます。


「ち、違うんだ。アレは勇者様がテリトリオでエレン嬢を気に入ったらしく……」

「あぁ、その程度だったんですか……。すべての元凶は勇者タロウという事ですね。ありがとうございます。貴方はもう死んでいいですよ」


 私は教皇の頭を思いっきり蹴ります。

 どうやら首の骨が折れたらしく教皇はその場で崩れ落ちました。


「なんですか。こんな一撃で死にましたか」


 私は教皇の頭を踏みつぶし、教会に火を放ちます。

 よく燃えるといいですねぇ……。

 

 燃え盛る教会から出てくると、先程の兵士達とは違う鎧を着た騎士達が教会の前に立っています。

 騎士は私を睨みつけている様です。


「貴様が教会に火を放ったのか!?」

「そうですよ。見ればわかるでしょう」


 そういえば、レッグさんや教会を囲っていた兵士がいませんね。


「そうか。ならば、貴様を生かしておくわけにはいかん」

「そうですか。まぁ、次はお城の番ですから……」


 私は笑顔でナイフを取り出します。

 私が戦う意志を見せると、騎士達が襲いかかってきました。


 さぁ……殺し合いましょう。

 いえ、違いますねぇ……。


 一方的な殺戮を始めましょうか。

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