第9話 お城というのは壊しがいがあります。あ、壊しちゃダメですか?


 しかし、歯応えの無い騎士達です。

 騎士は立派な鎧を着て立派な剣と盾を持っています。それに人数も二十人を超えていました。

 それなのに……。

 ナイフしか持っていない私に皆殺しにされるなんて、なんて情けないのでしょう。

 しかもです。

 誰一人として、私に一撃を加える事もできませんでした。

 十数人殺した後は、騎士達は逃げ回っているだけでした。

 まぁ、生かしておく必要もありませんでしたし、殺しましたけど。

 

 私は燃え盛る教会に騎士の死体を放り込んで、城へと向かいます。


 ここから見るお城は立派で大きいですねぇ……。


 

 私は、ファビエ城の大門の前に立ちます。

 しかし大きいです。

 

「このお城を破壊し尽くすのは難しそうですねぇ……。でも、難しい程にやりがいを感じます」

「おい。お嬢ちゃん。いま、物騒な事を言わなかったか?」


 大きな門を守っていた兵士さんが私の下へと歩いてきます。

 独り言を聞かれていたようで、ちょっぴり恥ずかしいです。


「聞かれてしまいましたか。恥ずかしいです」

「いや、恥ずかしいとかどうかという問題ではないんだが……」

「え? 物騒ですか?」

「あ、あぁ。城を破壊すると聞こえたんだがな」

「あ、それは空耳でもなんでもないですよ。ちゃんと言いましたから」

「な!?」


 壊すのが楽しみでついつい笑顔になってしまいます。

 しかし、兵士さんは怒り出して、「冗談でもそんな事を言うんじゃない!! 誰に聞かれているか分からないんだぞ!!」と怒鳴ってきます。


 誰に聞かれているか分からないですか……。

 正直な話、聞かれていたらどうなるんでしょうかねぇ……。

 そもそも破壊するのを邪魔してきた人は殺せばいいだけです。


「もういいですか? 貴方が何を言おうと私は城を破壊し尽くすだけです」


 そう言って、お城に入ろうとすると、兵士さんが私を止めます。


「待て。お前を通すわけにはいかない」

「そうですか」


 それは死にたいという事ですね。

 ならばお望み通り殺してあげますよ。


 そう思って、スカートのポケットに入ったナイフに手をかけた時、レッグさんがお城の中から出てきました。


「おぅ。レティシアちゃん。やっと来たな」

「レッグさん」


 兵士さんはレッグさんに気付き頭を下げます。

 おや? レッグさんはただの冒険者だったんじゃないんですか?


「レッグ様。この娘は……」

「あぁ。気にすんな。今からネリー姫に合わせる・・・・・・・・・。それだけ言えばわかるだろう?」

「分かりました」


 ネリー姫?

 私に会おうと言っているのは姫様なんですか?


 兵士さんはレッグさんに頭を下げて門の見張りに戻っていきます。


「本当は教会の事が終わった時点で迎えに行く予定だったが、騎士達に邪魔されてな。何かされなかったか?」

「え? 全部殺してきましたよ」

「そ、そうか……。アレは国王派の騎士達だ。しかし、派手に教会を燃やしたなぁ……」

「そうですか?」

「普通の人間が見れば酷い事・・・なんだろうな……」


 酷い事……ですか。

 何をもって酷い事と言っているのかは知りませんが、別に酷い事ではありませんし、それに……。


「このお城も教会みたいになる予定なのですが……酷い事ですか?」

「ちょ、ちょっと待て。この城を破壊されるのは困る。お前だってこの城が破壊されるのは困るはずだ」

「はい?」


 私が困る? 

 どう困るのでしょうか? 


 あ!

 もしかして挑発ですか?

 ふふふ。

 レッグさんも大胆ですねぇ……。


 私はレッグさんに向けて殺気を放ちます。


「お、おい。なぜ殺気を放つ?」

「え? 喧嘩を売られたので買おうかと」

「ちょ、ちょっと待て!? 俺はお前に喧嘩なんて売ってないだろうが!?」


 はて?

 間違いましたか。


「じゃあ、私が困るというのはどういう意味ですか?」


 もし挑発でないのであれば、理由を話せるはずです。


 そもそも、このお城が破壊されたところで私に困る事などありません。

 エレンがいなくなった今、この世界の人間がすべて消滅しても悲しくもありませんし、なんとも思いません。


 そうです。良い事を思いつきましたよ。

 レッグさんには物語の主人公をしてもらいましょう。


 レッグさん貴方の選択で、この国が滅びるかどうかを決めてください。


「さぁ、私が困る理由を話してください」


 答えを間違った瞬間貴方もろとも国を滅ぼします。

 さぁ、困る理由とは?


 さぁ、どういう答えを出すか楽しみです。

 しかし、レッグさんからは面白くない答えが返ってきます。


「それはネリー姫と会ってからだな。俺が理由を話すよりは王族であるネリー姫から聞いた方が良いだろう」

 

 ぐぬぬ……。

 一番面白くない答えです。

 私としてはレッグさんが慌てふためいて悩む姿を見たかったのですが……。

 まぁ、良いでしょう。


「私自身も姫様に会ってみたいですからね。今はその答えでいいですよ」

「あ、あぁ……」

「しかし、良かったですねぇ」

「なにがだ?」

「選択を間違えなくて・・・・・・ですよ。貴方の答え一つで私がこのお城……いえ、この国を滅ぼしていたかもしれないんですから」


 私はそう言ってレッグさんに笑いかけます。

 するとレッグさんは完全に青褪めていました。


 ふふっ。

 面白い人です。


 私はレッグさんの案内で姫様の部屋へと向かいます。

 さて、私と姫様の出会いは、この国にとって吉と出るか凶と出るかですよねぇ……。


 あぁ、楽しみです。

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