第25話 最終目標が決まりました


 随分とあっさりと倒せましたねぇ……。しかし、ブレインの話では、同じ姿に転生するそうですから、ちゃんと消しておきましょう。

 私は倒れている魔王を火葬しようと近づきました。


 カタカタ……。


 はて?

 魔王の体が小刻みに揺れていますね……。

 復活でもしますか?

 私は少し距離を取り、魔王の死体を観察します。


 魔王の死体の震えは徐々に大きくなり、やがて魔王城全体が激しく揺れ始めました。


「魔王城まで揺れていますねぇ……。自爆でもするつもりですかね?」


 自爆されて瓦礫に埋もれるのは嫌です。魔王城の崩壊と魔王の死体が連動しているんならば、魔王の死体を塵に変えてしまいましょう。

 私は魔王の死体に魔力を全力で込めて剣を振り下ろします。

 しかし、私の攻撃は魔力の障壁のようなものにより弾かれてしまいました。


「はて? なぜ死体から魔力障壁が発生しているんですかね?」


 まさかと思いますが、この揺れは魔王の復活を意味しているんですか?

 まぁ、こちらの攻撃が通用しないのならば、事の成り行きを見守りましょう……。

 さて、魔王がどうなるか楽しみです。


 しばらく待っていると、魔王の体の揺れが止まり、体が宙に浮き始めます。

 ご丁寧に、私が斬ったはずの体もくっついています。


「ふむ。さっきまでの魔力よりもさらに強力になっていますね……。これが本当の力なのですか?」


 魔王の体が完全に元に戻り、魔王は目を開きます。


「まさか、私が殺されるとはな……。だが、見てみろ。私の力を……」


 魔王は復活したのに、自分の体を忌々しそうに眺めています。


「魔王を殺す事は不可能なんだ……。こうやって死んでもさらに強力になって生き返る。人間にとっては絶望だろう? これが神の所業だ。神にとっては、私に死なれては困るらしい」


 ふむ。

 どこか悲しそうな顔ですね。

 その顔も気になりますが、神というモノも気になりますねぇ……。


「という事は、魔王を倒しても世界が平和になる事はないのですか?」

「あぁ……。そういう事だ。人間にとっても魔族にとっても永遠の平和というのは、夢のまた夢だ」

「ふむ。という事は勇者という存在は完全に無意味って事ですかね?」

「いや、勇者が無意味というわけではない。勇者により魔王が討たれた場合、神の気紛れが済むまでは、仮初の平和が与えられるさ。しかし、人間がどれだけ神に祈ろうが縋ろうが、私は復活してしまうんだ」

「なるほど。でも、今回の復活は早いですね。ほぼ一瞬じゃないですか」


 魔王自身も勇者に討たれたがっているのですかね?


「貴方が復活したいと望んだのですか?」

「違う!? 我はそんな事を望んでいない!! これが神の意志だ!!」


 随分と悔しそうに叫びますね。

 もしかして、これが魔王の本音なのですか?

 

「わかりました。もう休めるように、どんな手を使ってでも殺しつくしてあげましょう」


 とはいえ、どうやって殺しましょうかね? しかも、殺しても生き返るという事でしょう?

 何かいい案が思いつけばいいのですが……。



 答えが出ないまま、私達の戦いは丸二日間続いていました。


「さすがに眠くなってきました」

「まったく信じられない事だ。私はもう五回は死んでいるというのに、貴様は一度も死んでいない」

「私は一度死ねばそこで終わりですからね。そもそも、何度も蘇るのであれば、エレンだって生き返っているはずです。しかし、私が殺した教皇も神官も国王も生き返りませんでした。復活するのは、魔王や勇者だけ……もしくは魔族だけかもしれませんね」


 私はこの二日間で考えた事を話します。教皇を殺してから、何日間は王都にいましたが復活する事もなく、死んだままでした。

 そこで思い出したのは、「魔族は突然発生する」と紫頭が話していた事でした。

 そしてマジックは「同じ姿で転生する」と言っていました。

 しかし、魔王は転生ではなく生き返っています。

 つまり、魔王を殺し続けても、神の意志とやらで復活するので、一度で死んでしまう私では、ジリ貧になるという事です。

 このまま意味のない事を続けるのは私としても面白くありません。私は魔王と戦いながら、ある一つの魔法を思いつき、それを使用するためにタイミングを計っていました。


「さて、魔王さん。今度の眠り・・は私が死ぬまでか、神を殺すまで続きますが、何か言い残す事はありますか?」

「どういう事だ? もう何度も目にしているだろう? 私はすぐに復活するぞ?」

「そうですね。それが神の意志? とやらである以上そうなるんですよね。ただ、今回は復活させません・・・・・


 ふむ。

 根拠もないのに信じませんかね?

 しかし、魔王は軽く微笑みました。


「そうだな……。お前が何をしようとしているのは知らんが、もし私を殺せるのなら、一つだけ頼みを聞いてほしい」

「はい? 聞ける内容ならば聞きますよ」

「あぁ……。私を殺した後、魔族が復活したとしても静かに暮らすのならば殺さないでやってほしい……」

「はて?」

「私の望みは……。神に縛られない世界で、あいつ等と笑って過ごしたい……それだけだった……」


 魔王はそう呟き魔剣を捨てます。私は魔剣を拾い上げます。


「おい。人間が魔剣を持つと死んでしまう……? お、お前……体に異常はないのか?」

「はて? ないですよ……。この魔剣、ものすごく使いやすそうですね。これ、貰ってもいいですか?」

「なに?」


 流石に断られますかね? でも……。


「もう必要ない・・・・でしょう? 貴方が次に復活する・・・・時には、もう神の意思に従う必要がありませんから」


 魔王は一瞬だけ驚いた顔になり、そして大声で笑います。


「お前がどういう方法を使うかは私にはわからん……。だが、もう疲れた。そろそろ眠らせてくれないか?」


 魔王はそう言って、目を閉じ玉座に座りました。

 私は、思いついた魔法を使います。

 


 私は、無言で部屋を出ようとします。部屋を出る時に、振り返って玉座を見ると、魔王は静かに座ったまま眠っています。

 私は魔王に封印を行いました。私の瞬間的に出せる全ての魔力を使い、何重にも結界を張ってあるので、神といえど封印を解くのに時間がかかるでしょう。

 その間に神のお気に入りの勇者を甚振り殺します。

 復活するのが嫌になるほど痛めつけてやりますよ……。


 そして最後は……。

 

 神を殺します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る