第6話 くも -のこるもの-

もう何日も動いていないようだ。


空のくもは毎日流れたり、雨を降らしていたけれど、


破れた網の上で、いのちの去った、からっぽの殻は、


流れるくもを動かしているのと同じかぜに吹かれて揺れている。



むしの殻はいのちのあった姿とかわらずに、


そのいのちが去った後も、


いつか誰かにかたづけられるまでそこに残りつづける。



わたしが去っても、ここの、わたしに書かれたお話は、


やはり誰かがかたづけるそのときまで、ここに残りつづけるのだろう。



わたしの殻だ。



ふと、そんなふうに思えた。





―あとがきかな―


今日は良い日ですね。


蒼空が高く、筆で書いたような雲が、スッと流れるような日です。




あの人の作品は、まだここのサイトの中にあります。


もう書くことはできないと、あの人が吐露されてから、一年が過ぎようとしていますね。


たぶん、あの人はもう居ないだろうけれど、

でも、あの人の書いたお話はここに残りつづけるのでしょう。


誰かにかたづけられるまでは、

あの人の魂のかけらはここにあります。

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