第95話 掌(たなごころ)の中(うち)


人に生かされている


人に守られている


そのあたたかさの、えもいわれぬ、ここちよさ



たとえ、

その掌の中よりこぼれることがあっても、

そのぬくもりは、わすれない



ありがとう


あなたにいかされていた時間があるから、

わたしはここに立ち、ここまで歩くことができた



ゆるやかなえんを描きつつ、

近づき、はなれるえん



せかいのきせきは、

じつは、

そうした流れそのものなのかもしれない


こころはのこす


掌の中へ


たとえそれが、かえされたように見えたとしても


たなごころのうちに、

そのぬくもりはある




ありがとう


きみにあえてよかったと、


そういえる気持ちへと、きづくぬくもり



ちかづきはなれるえん


またちかづくえん


そのきせきは




わたしの掌の中に





ありがとう


いまはもういないあなた


いまはもういないきみへ




わたしはここで、


人に生かされているよ





ありがとう



たなごころのうちにある、あなたのぬくもりとともに





またすこし




あるいてみようとおもう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る