第29話 冬告鳥(ふゆつげどり) ―冬のつばさ―


実りの秋の、やわらかく、さわやかな風が、


透明で冷たい、刃のような乾いた風に変わってゆく。



澄みわたる高い蒼空そらは、遠くどこまでも広がっていたけれど、


空は澄んでいても、どこか、上から覆い被さってくるような感じを受けるものへと変わった。




冬を告げる鳥がやってくる季節だ。




曇天の翼を大きく広げて、冷たく乾いた刃の風を吹かせ、


風雪かざゆきの混じる冷たき飛礫つぶてを散らし、冬の澄んだ冷たい空気を我らへと届ける。




夏の木々や獣、虫や魚は眠りにつき、


冬の眷属の季節がくる。


冬の翼が大きく羽ばたくような、

切り裂く冷たい風に導かれて、


眷属の冬鳥たちは、

はるか北の、冬の世界からここへと訪れてくるのだ。



(※なろう版、写真あり)



昼の光と太陽が退き、


夜の闇と月、星が歩を進める。



冬の寒さと宵闇の季節が訪れる。



人たちは、暖かな住処すみかで春の日差しと乙女を待ち、

そして安らかな眠りへといざなわれてゆく。



冬の翼は大きく広がって、世界を寛大に覆い尽くし、


世界を静かな眠りへと導く。

世界は白く染まってゆく。




(※なろう版、写真あり)



冬告鳥の翼は暁色ぎょうしょくに彩られる。



冷たき空気の中、

世界はふたたび目を覚ます。









― あとがき一言 ―


朝の風景をみて思いついたものです。


いい朝を迎えてゆきたいものですね。

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