第106話 つよさ -強くなりたい-
強くなりたいね……。
-強くなれ。-
ある人の言葉だった。
わたしの
物語のなかでの
わたしの
わたしが語った言葉を作ったのだけれど、
その原典となる言葉わもう、彼の記憶の中に埋もれてしまっている。
わたしの言葉……、過去の物語の言葉……。
---
かずまくんのことを正面から見据えて、口を開く。しっかりと、言魂をのせるように。
「かずまくん、カッコよくなりなさい。
猫又ちゃんでも、他の女の子でもふり向かせるくらい。
「毎日、いろんな経験して、
失敗してもいいから、繰り返さないように考えて、
上手くいったら喜んで、毎日を元気に楽しく、笑って生きるの」
「困っている人を助けたり、悲しんでいる人をなぐさめたり、
かずまくんがそれを出来る人だってことを私は知ってる。
「あなたは子どもの時、
大変な目にも、悲しい出来事に会っているってこともわかってる」
「今はまだ出来ないかもしれないけど、
かずまくんは将来、猫又ちゃんを振り向かせる男になるって、私は信じている。
「だから、
今は毎日元気に、楽しく過ごしなさい。
元気のないかずまくん、カッコ悪いよ」
---
わたしの言葉はこうだった……。
あの人わ、もういない人の物語では何を書いたのだろう?
思い出せないあの言葉を、わたしなりの言葉で書き綴ってみる。
言霊を込めて。
◇◇◇◇◇◇◇◇
強くなりなさい。
わたしの信じてる、これを見ているあなた。
強くなりなさい、
あなたのたいせつな心を守れるように。
あなたの心を大事にしてくれたひとが、
困って悲しんでいるとき、苦しくて立てないときに、
あなたの手を、その人に差し出せるように。
強くなりなさい、
あなたの好きな人が笑ってすごせるように。
その人と手をつないで、
どこまでも、ずっと、
幸せな道のりを、一緒に歩いてゆけるように。
強くなりなさい、
立ち上がってまた歩けるように。
苦しい気持ちを笑い飛ばせるように。
悲しみのなかでも、
あなたの周りへとその目を向けられるように。
苦しみや悲しみに閉じ籠らないで。
周りの人たちのことを忘れないで。
あなたが周りに差しのべていた手は、
いつかきっと、あなたへと差し出される手に繋がるから。
強くなりなさい。
望むままに進めるように……。
でも、強いということは、
ただ立ち向かうことだけではないのだと知っておいて。
周りのことをよく見て、
あなたにできることと、できないことを考えてみてね。
たとえ少しでも、少しだとしても、
できることをして、できた自分のことを誉めてあげて。
出来なかったことで悲しんで、自分のことを責め続けないで。
悔やみ続けることに、あなたの心が引かれると、
それは、治らない傷を残すことになるのかもしれないから。
出来ないときには、
なぜ出来なかったかを考えて、できる道を探すの。
それはいつか、
あなたの、歩き続けてゆくための糧になるとおもうから。
ひとりで出来ないことは、一緒にできる相手を探しなさい。
信じられる相手を見つけるの。
あなたの周りにはいろんなひとがいるけれど、
よく見れば、
あなたのことを正しく見てくれているひとが、きっといるから。
出来なかったことを人のせいにしないでね。
失敗のことをごまかして、その事を誰かに押しつけると、
一時、その心は軽くなるのだけれど、
軽くなった心はだんだんと弱くなるから。
自分の気持ちを省みて、
自分の心をはっきりと見てあげて。
あなたにしか、本当のあなたは見られないのだから。
あなたにしか、本当のあなたを見てあげられないのだから。
あなたの心は、あなたしかわからない。
けれども、あなたのしていることは、あなたが見ている。
あなたの心は、
あなたのしていることは、
あなたがすべて知っているのだから。
あなたが誇らしいと思うことも、
あなたが恥だと感じることも。
悲しみの心、
喜びの心、
愛する心、
恨みの心も、
全部、あなたが見て、知っているのだから。
強くなりなさい。
すべての気持ちがあなたの中にあること。
それを認めて、自分の気持ちを育てなさい。
急がなくていい……。
焦って、あなたの気持ちから目を背けて、その心を弱くしないように。
あなたに、あなた自身がたいせつにする想いがあるように、
あなたではないひとにも、
あなたとは違う、その人がたいせつに想うものがあることを、
そのことを間違えないように、解ってあげてね。
想いのたいせつさは同じ。
それぞれの人の、それぞれの想いは、すべてが宝物なのだから……。
人の想い……。
あなたの想いも、あなたではない人の想いも、みんな同じ。
違う想いでも、同じように大事な宝物。
人の想いに気づいて、大事な想いを解ってあげられるようになってね。
強くなりなさい。
あなたが今、できることをすればいい。
たとえ小さなことでも、
小さなことしかできなくてもいい。
一歩一歩、強くなりなさい。
わたしが信じてる、あなたへと贈る言葉……。
頑張って、強くなってね。
あなたが信じる、あなたのために……。
◇◇◇◇◇◇◇◇
わたしわ想う。
わたしのたいせつなあのひとのことを。
たいせつな人との出会い。
出会ってから過ごす、その時間は刹那の泡のようなもの。
あとに残るのはその人と自分との想いだけ。
その一瞬の想いは、たいせつな宝物としてわたしの中へと溶けて、
わたしの想いとひとつになってゆく。
わたしのたいせつな宝物。
そうしてわたしの中でふえてゆく。
ひとりきりの、さみしい夜のぬくもりとして……。
ひとりで歩いてゆく、その道ゆきの杖として……。
強くなりたいね……。
いつか、
いつか……
〈おわり〉
-つぶやき-
むずがゆさと歯がゆさとが入り交じった感じです(^_^;)←読み返してそう感じました(苦笑) あやは、稲荷狐の
自キャラ、稲荷狐の言葉は難しいです。←読み返しながら、自己欺瞞に陥ったりとかします( ̄▽ ̄;)
自分はこれほど公明正大でもなく、良いひとでもありませんから。←実際、もっとキツい表現を使いますし、書いたほどにはできないことも多いですね(苦笑)
でもまあ、できるできないはともかく、信じる気持ちはあります。
ある意味で、彼女の言葉はわたしの杖ですね(^ω^)
余談ですが、
ここで書いた、彼の物語の言葉はもっと厳しいものでした。←彼の世界は戦乱に明け暮れる世界だったようなので。
そういった意味で、ここで書いた文章とはまったく違っていますね。
彼の物語のなかで、
主人公へとヒロインの彼女が語った言葉、使われていた言葉はもう忘れています。
言い回しは忘れてしまっておりますが、
厳しい言葉ではあっても、主人公を鼓舞し、奮起させるための思いやりを持っていたものであるように思えます。
想いだけは覚えているのですね。
ここから居なくなった彼の物語の言葉には、おそらくそうした言霊があったのだろうと、そんな風に思っています。
物語の途中で退会した彼……。
今、自分の胸に宿っているのは、
強くなれ。と言っていた、その言葉だけです。
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