第64話 扉

-まえがき-

大元は20代の頃に書いた詩ですね。

紛失して完全なものは残っていません。


頭に残っていた、いくつかの言葉の断片に、

心の奥に潜って得た当時の感情を継ぎ足しながら再生してみました。


でも、全く同じにはなりませんね(苦笑)

当時に考えを合わせたつもりでも、やはり同じにはならないし、書き方も変わりましたから。

当時は言葉を足すことを意識して書いていました。

今はどちらかというと、書かないで感じてもらえたらと思っています。


迷走の結果、再度生み出されたものですが、ご笑納いただければ幸いですm(_ _)m


---


照らすのは光


出来るのは影



影に潜み闇を覗く


闇にあるのは一枚の扉


 ◆


閉ざされた扉

その前に立つ



扉へと触れようとし

ためらい


やがて

扉の前から去る


それを繰り返す

繰り返し続ける



開けられない扉


出来ない自分を嘲り

自らを傷つける



 ◆



何もできず

影に横たわる



腐りゆく自分を

感じながら


死すべき時を

待ち続ける


ただ嗤いながら

涙を流しながら



自らをごまかして

暗い影に潜む


闇に溶ける影だと

そう思い込む



 ◇



そして光と出会う


光のもとに晒されて

照らされたのは

みすぼらしい自分


光を受けて

痛みに喘ぐ


光に痛みと

温かさを感じる



そしていつしか

光に憧れる



 ◇



光のかたわらには風があった


風は影に潜む自分の友でもあったが

風は煩わしい相手でもあった



風は言った

高め合う関係でありたいと


そうしたいから

そのために光のそばにいると



風にも

光にも

憧れを持ち


その気持ちを押しつぶし

心を殺してごまかしながら


風に共感し

嫉妬し

自嘲し


傷つき

痛みに喘ぐ



光のそばにいたい

光のそばにはいられない


自分は風のようにできない

風が持つ心地よさを持てない



自分には何もない

できるのは相手を縛ることだけ



 ◇



光や風のように

高く高く飛びたい



影の中にいた自分は飛べない

空を見上げ悲しみ

自らを省みない



光に照らされた姿が見える


翼があるのに、その身を鎖で縛り

その手で、縛る鎖の端を握りしめ

暗い色の涙を流す姿が



 ◆



光が去り


風もまたいずこかへ行った



闇に残る自分



少し変わる心


暗い闇に居ても

影に潜むことはせず

自らを意識し始める


影に潜み

影のような自分


けれど影ではない

自分は自分

自分は、何だ



そして、

また、扉の前に立つ


できないかも知れない



その時は、もう決めてある

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