第45話 くらきおり あるいは はこのなか ―ここは、どこ…?―






まっくらで、なにもみえない



じぶんのてのさきも、みえてこない


かがんで、ゆびさきでゆかをさわると、

コンクリートのような、ざらざらしたかんしょくがする


ゆかについたてのひらに、こいしやすなつぶがこびりつく



たちあがり、

てをはたいて、はいているズボンでぬぐう


てをまえにさしだしながら、

なにかにさわらないかと、しんちょうにすすむ



なにかゆびさきにあたって、あわててひっこめて、

ゆっくりと、てをのばしてさわりなおす


ゆかのコンクリートのようなてざわりの、

ざらざらとした、たいらなかべにゆきついた



どちらにゆこうか…


さしだしたみぎてで、かべにふれながら、

ひだりのほうに、ゆっくりとあるきだす


どれくらい、すすんだろうか…


かべはやがて、ざらざらしたコンクリートのかんしょくから、

なめらかでつめたい、金属だろうとおもえるかべへと、とつぜんにかわった


あつみはかなりあるようで、

ちからをいれて、そのかべをおしたくらいでは、

たわむような、おしかえしてくるようなかんしょくがなかった


冷たさをゆびさきであじわいながら、

そのまま、ひだりへとすすみつづけてゆく




とうとつに、かべのかんしょくがなくなる


あわててふりかえりながら、てをふりまわしてみるけれど、

かべらしきものには、まったくふれられない


てをふりながら、やみくもにあるきまわり、

なにかにつまずく


いきおいよくころんで、

ゆかへと、はげしくからだをうちつけた



くらやみで、おもわずつぶっためを、ゆっくりとひらく

なにもみえない


ひざや、じょうはんしんをさわりながら、

いたいところをさがして、てであちこちをさわる


ざらつくすなつぶと、みにつけた布のてざわり

ひざに、にぶいしびれるいたみをかんじる


かおをさわり、あたまへとふれてから、かみをさわる



かすかないたみ


ゆびさきに、ぬるりとしたかんしょく


なめると、てについていた鉄とわずかな塩からさ、

じゃりじゃりした、すなつぶのにがみが舌にひろがる


かおをしかめて、すなつぶをつばといっしょにはきだす


すぐにおきあがるきにならなくて、

くらやみのなかで、そのままよこになった







どのくらいたったのか、わからない




おきなくちゃ…



ゆっくりとたちあがり、

にぶくいたむ、ひざをかんじながら、

ながれる血のことはわすれて、てをさしだしてかべをさがす



かべは、どこだろう…


あるきながら、いくらてをのばしても、

かべに、そのてがふれない


かべはどこ…?






それよりも、

ここは、どこ……?








どこなの…




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