第36話 あなたの手を離さない

どこにもいかないで


私のはじめてのお願いです



あなたとの時間が楽しすぎて


私はここに長居してしまったのです



あなたの旅立ちの日を


わかっていた筈なのだけれど


私はきっと目を背けたままだった




連れてって


そう言うことはどうしても出来なくて



私は泣きながら


あなたの手を握りしめていた



あなたとの別れの時がきて


私は微笑んだけど涙は止まらなかった




いかないで


心の中でだけ泣き叫ぶ



あなたはまた来るからと


そんな本当にならない約束を告げて


私から離れてゆく



遠ざかってゆくあなた


私はまたひとりに戻る




私はその夜


泣きながら眠って



幻のあなたと


夢の中でふたたび出会った












「ちくしょう…」


目覚めた私はそう呟く


腫れぼったい目をこすりながら


私は枕元の煙草に火をつけた







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