第51話 心情 ― 二重写しのせかい(ぶれるせかい、かさなりあうせかい) ―
(いちわ)
いつか撮った写真を見返して眺めてみた
見える景色
あの時に撮った写真の風景と
記憶の中で覚えている風景は
どこか違う
機械の目で見るものと
自分の心で見るものは
たぶん違っている
それはさながら二重写しのよう
彼女が撮った花の写真
僕の撮った同じ写真
やはりどこか違っている
彼女の心が求めたものと
僕が心で欲したものは
同じものを撮っていても
きっと違うものを見ていたのだろう
似ていても重ならない
あの日
好きな人の姿が欲しくて
こっそりと彼女を撮った写真
いつだったか
まだ好きになる前に
何気なく彼女を被写体に選んだ写真
それは違って見える
同じ人を撮っているのに
別の人を撮っているみたいだ
決して重ならない
何かを想う心で撮るとき
その写真には
撮っている人の心が見えるのだろう
今、一緒に過ごす僕と彼女との重なる時間
彼女が僕を撮った写真と
僕が彼女を撮った写真は
どこか似ている
比べてみて気づいた
うん!
とても好い気持ちだ
僕は彼女のことが大好きだ
きっと彼女もそうだろう
違う写真に
重なり合う想い
気持ちを伝えたくて
僕はスマホへ手を伸ばす
スマホが鳴った
彼女からの
◇◇◇◇◇
(にわ)
いつか撮った写真を見返して眺めてみた
見える景色
あの時に撮った写真の風景と
記憶の中で覚えている風景は
どこか違う
機械の目で見るものと
自分の心で見るものは
たぶん違っている
それはさながら二重写しのよう
せかいを見るとき
その景色は二重写しのように見える
現実の景色を見ながら
まぼろしのように
在りもしない世界と
居もしない人たちのことを想う
私は現実のせかいと
私の空想のせかいの間を旅している
現実の
空想の
世界を創ることは面白い
私は神様ではないけれど
私の中には世界が広がっている
私が現実の世界に住むように
私の空想の世界にもたくさんの人が住んでいる
私が現実の世界で育てられたように
私の空想の世界でも人たちが育てられている
私の得たもの
私の受けたもの
現実のものごとを
空想に注ぎ込んで
私の世界は大きく広がってゆく
世界の人たちも生き生きとしてゆく
私の中の空想の世界
現実から生まれている私の世界
私は今も現実の世界で
二重写しの世界を見ている
世界は生き生きと鮮やかに
今も二重写しに輝いている
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