7-2
今回は二度目となるので、市場の中の様子はほとんど把握していた。
この前とは逆の順路で店を廻る。
先回よりひとが増えているように思えた。
左右に目を配りながら歩く。この界隈は臓器を主に商いをする店が固まっていた。
心臓、腎臓、肝臓、肺臓、膵臓、脾臓、膀胱、胃……
ありとあらゆるものを拡げていた。
どの臓器を見ても、膜をはったように渇ききった表面をして、色といえば、鮮やかというには程遠い色を程している。
自分の躰の中にこれと同じもの収まっているのかと思うと、釈然としない感情に見舞われた。
しかし、どれもいまのところ江端には用のない部品ばかりだった。
通りの中ほどまで来たとき、店先に並べられている品物を見て目を疑った。
人間の躰の一部なのだから別に不思議なことではないが、こうやってあからさまに展示されるといささか戸惑うものがあった。
男女の性器がステンレスの平皿に入って並んでいたのだ。
江端は興味が湧いたというわけではないが、店に近付いて品物定めをするかのように覗き込んだ。
いろんな形の陳列に目を奪われ、しばらく動くことができなかった。
「旦那、どうですか? ひとつ。男のも女のもどちらも三年だ」
店主は頭の禿げた初老の男で、江端の顔を見て下卑た薄笑いを浮かべながら言った。
江端は黙って首を横に振るだけで、店主と目を合わせようとはしなかった。
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