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生ビールが搬ばれると、ジョッキを合わせて一日の仕事が終わったことを感じあった。
申し合わせたように大きな息を吐くと、ガラスの器に盛られた枝豆に手を伸ばす。
「弘さん、話っていうのは、他でもないんだが……余計なことかもしれないが、所帯を持とうと思う人はいないのかい」
江端は真摯な顔付きになって、真面目な話であることを見せた。
「いえ、いません。私のような者について来てくれるような、そんな奇特な女の人はいませんよ」
弘蔵はビールジョッキに目を落とした。
「本当なのかい? それ、まともに受け止めていいんだね?」
江端は身を乗り出すようにして確かめた。
「ええ、本当です」
「そうか、よかった」
江端は安心したかのように、貯めていた息を躰ごと吐き出した。
「それがどうかしたんですか?」
「いやね、うちの家内の妹で、弘さんにつり合う年格好のがいるんだが、どうだろう?」
江端は笑いながら弘蔵の顔を覗き込む。
「はあ、いえ、そのう……」
弘蔵は突然のことに言葉が澱んだ。
「どうしたんだい? 身を固めるつもりはないのかい? ちょっと待って、その返事を聞く前にビールを頼もう」
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