5-2

 江端の義妹は、川端紀子といい、歳は弘蔵より三つ下の三十七でバツイチだった。

 弘蔵はそれを聞かされてやっと納得した。

 やがて前菜が搬ばれると、話題が一気に料理に向いた。

 弘蔵もそのほうが気が楽で、このままずっとこういった話題がつづけばいいと思った。

 酒が好きな江端は、ビールで乾杯をしたあと、ボーイを呼んで紹興酒を言いつけた。

「やはり中華はこれじゃないとな……」

 江端は嬉しそうな顔をして、みんなのグラスに注いで廻った。

 弘蔵は注がれたグラスを手にしたまま口に持って行った。

 正直なところ、あまり好ましくは思わなかった。独特な揮発臭が咽喉を塞いだ。

 正面の紀子は平気な顔でグラスを舐めるようにして味わっている。

 史江は、遠慮をしているのかなかなか箸のすすまない紀子に、しきりに料理を勧めながら、さかんに「おいしい」「久しぶりだわ」を連発した。

 そんな様子を見て取った弘蔵は、見合いというよりも食事会と言ったほうが似合っていると思いながら箸を搬んだ。

 

 結局、弘蔵の見合いは二時間もかからないうちにお開きとなった。

 支払いを済ませた史江は江端を呼び寄せて何か耳打ちをする。

 何度も点頭しながら聞いていた江端は、言い聞かされた子供のような諦め顔になって、ふたりに近づく史江の背中を眺めていた。

「私たちは子供が待ってるから……。

あなたたちいろいろと訊きたいことや話したいことがあるでしょうから、これからまだ時間もあることだし、どこかゆっくりと話のできるところにデートでもしたら?」

 ふたりの傍に歩み寄って話しかけた。

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