2-5
弘蔵は相変わらず俯き加減のまま歩いている。
どこまで歩くのか見当もつかなかった。
そんな不安なまま歩いていたとき、こんなところに神社があるのにはじめて気がついた。
自分ではまったく記憶にない。
弘蔵はわき目も振らぬまま、階段をゆっくりと昇って行った。
神社の階段には灯りというものがまったくなく、ただ階段の最上段の辺りが微かに明るいくらいで、鬱蒼とした
江端が階段の下で弘蔵の後ろ姿を眺めていたとき、自分が来た方向とは別の方向から、ヒタヒタと跫音が聞こえてきた。
江端は慌てて隠れるように民家の玄関先に身を移す。
その光景を目の当たりにしたとき、江端は信じられなかった。悪い夢でもみているような気がしてならなかった。
老婆が孫らしき幼い子供の手を引き、急ぐように神社の階段をいまにも昇ろうとした姿を見た。愕いたことに、老婆のもう一方の手には切断された子供の肱から下の部分がしっかりと握られていたのだ。
一瞬我が目を疑う
子供は、泣き声ひとつ上げず、ただ黙って老婆にひかれたまま神社の階段を外股になりながら昇って行った。
不思議なことに血というものが一滴も流れていなかった。
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