3-2
そこには想像もしなかったまったく異なった世界が繰り広げられていたのだ。
驚愕が身を震わせた。
裸電球の灯りが煌々と闇を遠ざけ、無数の露店が軒を並べていた。
両側に店の並んだ筋が二タ筋あった。その先がどこまでつづいているのか測りようがない。
まるで夢の中を歩いているような景色だった。
通路にはどうやってここに来たのか、数多くの人の姿が目に映った。
祭りの夜店を愉しむかのようにそぞろ歩きをする者、何かを求めて性急に店を探す客……そんな思い思いの人々が渾然となって夏の夜を徘徊していた。
江端はしばらく市場の入り口に佇み、茫然としていたが、やがて何かに引き込まれるようにそろそろと市場に足を踏み入れる。
江端は最初の露店を覗き込んで仰天した。
その店先に並べられてあったのは、様々な形をした両手の指先で、掌に五本揃っているものがあれば、一本一本ばらされたまま並べられているものもあった。
掌を開いたもの……
拳を握ったもの……
何かを掴もうとするもの……
指を曲げたもの……
何かを指差すものなど多種多様だった。
見る限りでは、どうやらここは男性専用のパーツの店らしかった。
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