閑話~不運な騎士

 時を遡る事数年前…。


 * * * *


 王城で聖女召喚が行われるとの事を聞き、騎士団から精鋭数名が召喚の間での護衛を任される事になったのだが、その役を騎士になりたての新米で有る俺が指名されるとは。


「誰か嘘だと言ってくれ…」


「残念ながら、その書状は紛れも無く指名書だ。

 聖女様に逢えるんだから役得だ!とでも思ってろよ」


 んな事いわれて「はい、そうですか」とか言える訳ねぇだろーが馬鹿野郎。


 精鋭でも無い俺に白羽の矢が刺さったのは、単に剣術に長けて居るからだろうとは思うが…荷が重い。


 滅茶苦茶おもてぇぞ!



 * * * *


 召喚の間には魔法を管理する部門の連中が、書物片手にブツブツ…。


 聞き耳を立てて我が耳を疑ったのは言うまでも無く


『おい。本当にこの詠唱で間違って無いだろうな?!』


『知るか!過去の記録を調べたが一切、

 詠唱に関する書物は残って無かったんだ。

 文献から拾い集めるしか無いだろう!?』


 あー…詰んだ。完全に行き詰ってやがる。


 こんなんで本当に聖女様を異世界とやらから迎え入れられるんだろうか?


 出入り口を固める任に着いていた俺は静観するしかないのだが、何ともお粗末な連中だなと思ったのは秘密にしておいた。


 そりゃな?不敬罪で断罪される可能性があるからだ。


 俺だって騎士になったばかりで職を失いたくねーし…とは思うが「あんなん」で来るのかねぇ…



 * * * *


 第一王子様が臨席する中、行われた召喚…。


 何故か2名の女性…やっぱ付け焼刃で唱えた詠唱の影響じゃね?


 思ったって何の解決にもなりゃしねーのは判ってるが、言いたくもなるだろ。


 それはそうと本物の聖女様は…鑑定で大人な女性が聖女様と出てるのに何やってんだ?


 あの王子は…。しかも宰相様だとは思うが、誰1人として手も貸さないとか鬼畜かよ!


 まあ俺も任務外だから手を出せば罰が下るから出したくても出せないが、置き去りとか…。


 ご愁傷様…っと思ったんだが、聖女様・・・そりゃーそうなるわな。


 怒り心頭で外に出ようとしたモンだから俺は慌てて


「お、お、お待ち下さい!

 何も持たず外に出るのは危険すぎます!!」


 そう伝えるも怒りが収まる訳も無いよなぁ。


「あら?今の今までしていた癖に何様なの!?」


「うっ」


 判ってるよ!言われなくても放置して行ったのは「第一王子」と「宰相」と「魔法師」の連中・・・てか、召喚の間にいた全員だよ!!


「だったら危険を回避するだけの武器なり金子なり渡して下さい。

 私巻き込まれただけの存在…ですよね?!ね!?」


 巻き込まれたのは…明らかに第一王子様に連れて行かれた「男性」だと思うんだけどな?


 怒りしか今は感じて無い聖女様に何言っても無駄だよなぁ。


 固まる俺に天の助けが来たのは直ぐの事だった。



 * * * *


 王城から聖女様が出て行かれてからは何が起きるか判っている民が、次から次へと近隣の村へと向かい始めていると聞き、危機的状況だと…城を任されていた俺も感じてはいたが、流石に王様や王妃様を残して退避する訳にも行かず、聖女様が龍王を封印なさるまで…新米ではあったが城を守る事が決定してしまったのは不幸とも幸福とも言えるのか?



=完=



と言いつつ「あとがき」があったりする

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