新たな牢屋で知る真実1
サクヤから念話で脅しを受け、何も発言する事が出来なかった宰相ではあったが、牢屋に収監され、見張りもいない状態である、と気づいた時に王へと真実を伝えたのだ。
(新たな牢屋での身支度を請け負うのは侍女たちは勿論だが、
手の空いた女性たちも手伝ってくれる事になった)
宰相はサクヤから受けた忠告を綺麗に忘れていた。
「王様」
「何事だ宰相」
「先ほど、この牢屋へ案内してくれた若者ですが…」
「ああ、青い瞳で独眼の…確かサクヤだったか。彼が?」
「はい…私に対して発言を許さぬ状態に追い込まれてしまい、
教える事が出来ませんでしたが、
今は彼がいませんので伝えさせて頂きます。
彼の本来の名はサエコ様で、
エヴァン様が置き去りにしてしまった聖女様ご本人で御座います」
「はぁ?!何だって!?
彼女が
何たる事だ!!」
「エヴァン様は置き去りにし、
召喚に立ち会った全ての者すら立ち去り。
彼女は放置されてしまわれたのです」
「ま、まぁ!何て事をしたのですか!
「彼女は怒り心頭で、
騎士の生死を無視し出ても、
王城から出ようとなさりました。
流石に魔の森へ行くには装備が必要ですので、
持たせる為、私が直接、
会話をさせて頂きましたので間違い御座いません」
「詫びを・・・詫びを直接伝える手段は…」
「王様、お忘れですか?
王様が封印されている言葉は聖女で御座いますわよ?
その言葉を使わずして謝罪など無理では御座いませぬか?」
「うっ・・・」
そんな会話が交わされるだろうと先読みしていたサクヤが、サーヤの衣装で姿を現す事となる。
「・・・どのような謝罪をなさったとしても、
あの時の屈辱を忘れる事は出来ません」
「「「えっ?!」」」
「成功した、と発言して連れて行ったのは、
女性の恰好をした男性。
間違って連れて行ったと言うなら、
私も一緒に連れて行く筈でしょうに、
誰1人として私に手を貸す事もせず、
声を掛ける事もなく、
誰もいなくなった場所に置き去りにされたわ」
「も、申し訳御座いません。
聖女様!どうか…どうか我が国の為、
龍王様を説得して頂けませんでしょうか?!」
「嫌よ」
「そ、そこを何とか!
エヴァン様は言葉自体を封印され発する事を禁じられ、
王妃様はエヴァン様、
王様は聖女様と言う言葉を封じられております。
どうぞ我が王国の存亡を救って下さいませんでしょうか?」
宰相が訴え掛けても、サーヤの目は悲しみに彩られている。
「・・・あの時、立場的には一緒に召喚されてしまった私に、
手を差し伸べて下さる騎士の方でも、
それこそ王子様でもいれば変わってたわ。
でも、存在すら気付いていないかの如く、
無視して立ち去ったのは宰相様とてご存じでしょう?
宰相様すら手を貸さなかった事を忘れた…と言うのかしら?」
それは、もはや脅しそのもの。
サーヤこと冴子が召喚された時、傍にいた男性が聖女とみなされ連れて行かれた事実を消す事は出来ない。
それだけでなく、召喚に立ち会った全員が、冴子の存在を無視し、その場に置き去りにした事は、紛れも無く記憶として刻まれている。
「・・・忘れて…おりません。
召喚魔法が発動し、
異世界から聖女を呼び寄せる事が成功し、
エヴァン様が聖女を謁見の間へと連れて行く為に控えておられ、
召喚に立ち会った魔法職の面々も、
騎士も、そして私ですら手を貸す事が有りませんでした。
聖女様の怒りを買ってしまったのは間違いありません」
サーヤの心には、怒りしか無かった。
自宅に帰った瞬間に魔法陣が発動し、気づけば異世界へ飛ばされ、説明をしてくれるものもおらず、座り込んでいる自分に、手を貸す者すらいなかった状況を、まざまざと思い出してしまうのだ
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