移送
移送を開始して間もなくの事、宰相がサクヤの歩き方を見て気付いてしまった。
(この歩き方は…あの時にエヴァン様が無視なさった聖女様では!?)
宰相が歩き方に気付く事は察知していたサクヤは、エヴァンと一緒に乗せられた宰相に振り向き念話を送る。
『私が聖女だと王や王妃…
ましてや第二王子に暴露しようものなら、
更なる烙印を押すと言う事をその身に刻みなさい!
そこの王子が同時に、
召喚してしまった事を詫びる気配すら持たず、
私を置き去りにした屈辱…よもや忘れたとは言わせないわよ?!』
いきなりの念話実験だったけど、宰相様の顔が真っ青になったから聞こえたのかな?それなら御の字だ。
王都から聖なる村までは森を切り開いていない時は1日掛かる距離ではあったが、木を切り出した関係で通路が確保され半日もせずに到着できるまでになった。
* * * *
「サクヤ、こんな場所に新たな牢屋などあるのか?」
聖なる村から少しだけ離れた場所・・・自然に出来た洞窟に到着しようとしていた。
「ええ。見た目では洞窟のように見えますが、
安全で頑丈な場所は此処しかありませんでした。
王城地下と比べられない程の粗末な牢屋で申し訳ないのですが…」
「仕方ないだろう。
聖なる村に王城など建設できる程の余裕は無い。
俺が住まいとして作って貰った場所を、
仮の城としているくらいだからな。
あそこで牢屋は無理だろ」
「ここでしたら魔物の心配も要らないでしょう。
開拓時に徹底的に討伐してしまいましたし…」
(結構、いたのよね~魔物。
それを全部とは言えないけど周囲の巣は一掃できたと思う)
「ほんとに、お前…何者だよ。
聖なる村での家屋建設に携わったり、
騎士たちの怪我を治してしまったり、
魔物の巣窟と化していた森を開拓してしまうなんて、
普通の騎士じゃ出来ないぞ?」
「そこは普通じゃなかったってだけですよ」
(うわぁ~動きすぎたかな。
巣窟を一掃しちゃえば、そうなるのか。
バレるのも時間の問題カモ)
「納得いかない…」
(これで納得しないって言ったら白状する方向に持ってくか)
「…でしたら俺が実は女性で聖女だって告白すれば納得するのですか?」
「い、いや…そう言うつもりで、
納得しないと言った訳じゃないんだ…すまん」
そう反応するのか、なら暫くは誤魔化せるね。
それでも自重できないくらい忙しいんだけど…王都を聖なる村にするつもりでアレン様は動いてるしなぁ…。
私は私で動かざるを得ないし…、難民を受け入れる為に家屋は増加の一途を行くし、俺と同年代と言えばレイ1人くらいだから、木材を切り出すのは王都から来てくれた大工たちに願い出るしか無いもんな。
はぁ…まさか聖女の仕事が都市開発だった…なんて洒落にならんぞ?!と悪態ついとく。
顔に出す事なく、悪態をつけるくらいには肝が据わってしまったサクヤ。
彼が彼女に戻れる日が来るのは近いだろう。
その事実を知った時のアレンは、彼に対して何を思うのだろうか?とサクヤは内心不安なのだ
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