罪人の輸送

 聖なる村にもアレンが発行した通達書が届き、村の掲示板に貼り出された。


「流石は第一王子様や王様とは違うな」


「ああ、聖女様を無視した王子と比べては駄目だが、

 これを知れば聖女様も許して下さるだろう」



* * * *



 そんな事になっているとは知らないサクヤは、アレン王子と共に旧シオールへと足を踏み入れていた。


「たった…たった1か月だと言うのに、

 ここまで森が浸食してしまうのか」


「龍王様の怒りと聖女様の怒りが加わってしまった結果…

 かも知れないが、確かに酷いな」


 自由を求めて城を出た時は、ここまで酷くなかったものね。


 市民…こちらの言い方をすると、民が暮らしていたであろう家屋は、蔦に覆われ、馬車が通っていたであろう場所は、雑草と木が生い茂り見る影も残って無い。


「すまないなサクヤ、

 君に荷車を持たせてしまって・・・」


「それこそ王子様に荷車など持たせた等と言われたら後が怖いですよ。

 この調子では王城に入るのも難しいかも知れませんが…」


「そこは大丈夫だ。

 数人では有るが騎士を待機させているんだ。

 父上や母上、兄上に宰相が城に居る状態だから守りもかねて、

 残って貰っている」


 宰相様がいるならバレてしまうかしら。


 でも恰好は男だし、独眼にしているし…どうみても元騎士にしか見えてないらしいから…大丈夫よね?バレそうになったら睨みつけるか。



 * * * *


 王城に到着すると、荷車は玄関先の騎士に預け、地下へと続く階段をアレンに案内される形で降りて行く。


 脱出する時は怒りに駆られて出口しか見てなかったけど、こんな所に地下牢への入り口があったのね。


 あの馬鹿もいると思うと、顔つきが怖くなりそうね。


 平常心…ポーカーフェイスを保てるかな?


「父上、母上、お二方を新たな王都、

 聖なる村へとお連れします」


「「聖なる村?」」


「はい、元を正しますと名も無き村・・・改名したそうで、

 今は錆びれた村の印象は無く、

 主要都市だと言われても支障が無い状態となっております」


「そう、か。所で一緒に来たのは見た事が無いが、

 騎士だった者なのだろうか?」


「紹介が遅れてしまい、申し訳ございません。

 私は元騎士で今は聖なる村で医療に従事させて頂いております、

 サクヤと申します。

 新たに設けました村の牢へとご案内させて頂きます」


「第一王子も一緒…と言う事で合っていますか?」


 王妃様は息子の名前を封じられてるんだっけ。


 なら第一王子としか言えないかぁ。


「ええ…。ここより待遇が悪くなってしまいますが…」


 すんごくヤだけど、このまま王城に放置すると城が木々に覆われ近づく事すら不可能な状態になるって精霊に聞いているのよね。


「申し訳ないが案内を頼む」


「お任せ下さい」


 臣下の礼で挨拶を交わし王様と王妃様を牢屋から出し、暴れるのが判っているのだろう。


 第一王子は後ろ手に縛られ、片足に鉄球が括りつけられていた。


 そして宰相は、サクヤをサーヤであると気付く事は無かった

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