馬鹿王子、王様の逆鱗に触れる
一方、見目麗しい「少年」を連れた第一王子エヴァンは、父で有る王に報告すべく、謁見の間へ向かうのだが、「少年」には一切、伝える事なくグイグイ進んでしまう。
「何だよ!放せ!!」
「駄目だ。
君は私の『伴侶』として、
我が国を守って貰わねばならぬ存在…
我が領土から出られては困る」
伴侶の意味すら判らず、何処かへ連れて行かれる
そうして謁見の間で聖女召喚が成功し、エヴァンが聖女を連れて来るのを今か今かと待つ王と王妃の姿が有った。
「おお!聖女様を連れて来てくれたか」
「はい父上。
目的通り『彼女』を私の妻として下さるのでしょう?」
エヴァンが連れて来た人物の瞳と態度を見て、宰相から報告を受けて居た王が意味を知る事となった。
「待ちなさい…
瞳の色は作り物では有るまいな?」
「えっ?!正真正銘のオッドアイ…でしょう?」
このトンチンカンな王子は、召喚した人物を鑑定する事なく「見た目だけで」連れて来たのだ。
「そなた…聖女様で有る、
と言う事実を鑑定で見極め連れて来たので有ろうな?」
「見極める必要など、御座いません。
見目麗しき姿、オッドアイの瞳…そして黒髪。
全てが聖女を示し得る証では有りませんか!」
とんでもない事を言った…王の顔は青白くなり、自分の息子ながらオツムの無さに頭を抱えてしまった王妃。
宰相は鑑定を掛けており事前に、王へと「召喚されてしまった少年」で有る事を伝えて居た。
「…お前は見た目に騙されおって…
瞳の色は黒目。そして何より『性別が違う』」
「えっ?!何処をどう見ても女性…です…が…」
そう、第一王子が連れて来たのは、女性の
しかも言葉遣いにすら気付いて居ないのだから
「・・・言葉を不敬に取られてしまうが言わせて貰う。
男だと判る言葉を使って居るのに気付かないとか有り得ないだろ!
さっさと俺を元の世界に戻せ!」
そう言うとウィッグを取り、怒りを表すかの如く腕を組む姿を見て、ようやく自分が鑑定を掛けないまま手を引いて来た人物が、男性だったのだと顔色を悪くさせたのだ。
「そなたは暫く謹慎しておれ!
騎士団長…いやアレンは今どこに出ておる?」
「第二王子様でしたら今は…
一番危険と称されて居ます
『名も無き村』周辺の魔物討伐に赴いておいでです」
「何たる事だ…
近衛兵だけで聖女様を見つけ出すのは至難の業…」
「御意。聖女様は自由を求め姫騎士の姿となり
『名も無き村』に向かいましたが、
恐らくは…魔物に襲われてしまわれるかと」
「常々、我が息子ながら馬鹿だ馬鹿だとは思って居たが、
ここまで馬鹿だったとは・・・」
頭痛が痛い…。言葉としては使い方を間違っては居るが、そう表現せざるを得ない状態に
「このような方法を取りたくはないのだが、
聖女様を『手配』してしまおう。
そうして我が国を救って頂けるよう、誠心誠意伝えるしか我が国の存続は無いやもしれぬな」
「陛下・・・」
宰相の手により犯罪者では無いものの手配書が作られ、聖女を探す目的で手配犯とされてしまう事になった。
その手配を見た冴子の怒りが王都の破滅へと導く事になって行くのだった
(後に廃れた王都が復興して行く事となるのだが、そうなるとは限られて居なかった故の見解である)
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