湖の浄化と騎士団の世話

 多くの騎士たちを休ませる空間が無いのよね、路上になってしまうのは気が引ける。


 体育館くらいの広さなら騎士団が怪我を負っても収容は可能かしら?


 イアンさんに木の切り出しを依頼して駄目って言われたら又考えるか。


「父さん、この森の木々って、勝手に切って処罰されるって事ない?」


「処罰はされない。

 とは言えサクヤ、何をするつもりだ?」


「出来るか否か、

 判らないけど医療が出来る空間を作りたい、

 と思ったんだ。

 怪我人を休ませる空間を作りたいと思ってね」


「村の病院は1人を見るのが精いっぱいの空間…だからな。

 大人数ともなると新たに作るしかない、

 って事か。切り出すのは村の連中に頼もう」


「助かるよ父さん」


 空き家を使って重傷を負った騎士の方には休んで貰ってるけど、それでも足りないから男性しか居ない家にお願いして休ませて貰ってるのよね。


 これが大人数を収容できれば万々歳。


 切り出して貰う間に浄化しちゃうか。


 根源は…っと検索サーチを掛け…そこか。


 村全体に掛けられてしまった穢れの根源は湖に有った。


 そこはヘドロが溜まってしまい、美しさの欠片も残って居ない。


 サクヤはドロドロの土を除去して綺麗な湖を想像し、根源を取り払うと荒れた大地が蘇り、枯れた井戸に水が戻った。


(戻るの早っ!)


「サクヤ、建物を作るとか言ったらしいが、

 どれくらいの範囲に作るつもりだ?」


「レイ?そうだな…廃屋になってしまった場所が、

 入り口近くに二棟にむね、有ったよな?」


「そこを潰して作る気か」


「討伐で怪我人が出れば必ず、

 入り口に人が集められるだろ?

 効率イイじゃないか」


(一石二鳥って言いたいけど、この世界に無い言葉だとしたらレイには性別をいつわってるしバレたら困る)


 村に残った若い人材が手を貸してくれて簡易では有るけど、病院の原型を作る事が出来た。


 魔法を使うと早いの何の。


「サクヤの家で休んでる人、目を覚ましたみたい」


「そうか。

 まあ討伐の報告に城へ戻るまでには至らないだろうが、

 様子を見る事にするよ、有難うメリー」


 すっかり男性言葉も姿も歩き方も何もかもが板に付いちゃったのよね。


 それもこれもシオール王城の馬鹿どもの所為せいよ!


 私が居ないだけでも厄災は起きるのなら村に居座ってヤル!


 内心、悪態をつきつつ、自宅として村が用意してくれた家屋へと向かい、ベットで動けない状態の騎士が無理に起き上がろうとして居るのを見とがめた。


「動くんじゃない!

 それ以上、

 体を酷使して俺みたいになるんじゃない!

 大人しく横になるんだ!!」


「・・・え・・・?」


「ったく…お前、団長か副団長だろう?

 責任感が強いのは判るけどな、

 自分の状況を良く思い出すんだな」


「ここ、は?」


「ああ、聖なる村と名を変えたが

 『名も無き村』だ。

 お前たち騎士団が大けがを負い、

 村の近くで倒れて居るのに気付いた村の者が運び入れたんだ」


「…そんなに酷い状況…だったのか?」


「そうだな。

 普通に女性が悲鳴を上げ気絶する程にな。

 腕が取れてしまった者も居たし、

 脚が取れてしまった者も居たが全員、

 元通りの生活に戻れるだろう」


「えっ!?ま、まさか村には治療師が居るのだろうか。

 いや治療師だけでは無い、回復師も居るのか?!」


「ぷっ…あはは!

 両方を1人がヤったと思わないんだな。

 おもしれぇ」


「両方?もしかして君が?!」


「名乗るのが遅くなったが、

 君が体を休めて居る家の住人サクヤだ。

 治療と回復…まあ医療に特化した能力持っては居るけどな。

 何せ片目が『これ』だから、

 まともな場所では働けない。闇ってやつさ」


 設定としてあやふや…かなぁ。


 闇医者ってマンガの世界にしか居ないんだよね。


 異世界に居るなら有難いんだけど無理だわ。


 さて、この人の身分を知れるかしら?


「団員たちの命を救ってくれて有難う。

 私は第一騎士団団長で有り第二王子でもあるアレンだ」


 へっ?!間抜けな声、出しそうになったじゃん。


 彼が賢王になるだろう、と言われて居るアレン様なの?


 すんごいイケメーン眼福~。


「王子様とは知らず大変、

 失礼な態度を取りました事をお詫び致します」


 まあ、元騎士って設定にしてるから臣下の礼だっけ、右手を胸に当てて腰を折っておくとするか。


「君は…元…騎士…なのか?」


「ええ。この目になってしまいましたからね、

 出身村でも有る此処ここに戻って、

 医者のような事をやり始めたって所に、

 騎士団一行が大けがで運び込まれたので御座います」


「そう、か。助かったのだな。ありがとう」


「今は養生して下さい。

 王城には知らせと言う形を取っておりませんので、

 未だ討伐して居ると思わせた方が心労にならないかと」


 人生24年しか経験して無いけれど、偽りの言葉って案外スラスラ出るものなのね。


 こうしてサーヤとアレンは、怪我人と助けた人として初めて出逢ったのだ

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