活気を取り戻した村と衰退し始める王都

 王都シオールでは、第一王子の失態が尾ひれが付いた状態で、噂され始めている。


「今回の召喚に関して、何か聞いているか?」


「ああ聞いた聞いた。

 何でもエヴァン様が、

 聖女様を無視して巻き込まれた方と結婚する、

 などと言う妄言を発したとか」


「エヴァン様は鑑定を持っておられるのに…

 何をしていたのやら…」


「どうやら見た目で、

 聖女様か否かを判断したらしい」


「何ともお粗末な王子様だねぇ」


 エヴァンは頭脳が無さ過ぎたとか、男性と知らずに結婚すると宣言しただとか、一緒に召喚された聖女様を置き去りにした…などなど、多岐に渡る噂が蔓延はびこっている。


 じわり…じわり…と王都が衰退して行くのを商人たちは気づき始めていた。


「シオールも終わりかも知れないな」


「ああ。聖女様がいらっしゃれば別だろうが、

 エヴァン様が何もしなかった所為せいで行方知れずとなられたとか」


「このままでは王都はすたれ、

 誰も住まぬ廃城と廃墟の都市となりるな」


「今の内に別の場所に拠点を作った方が良いかも知れない」


「だったら噂でしかないが、

 名も無き村が改名した途端、

 昔以上の豊かな村になったと聞いた。

 そこに行くか?」


「ああ。そうしよう」


 商人が去り、人が去って行き始めた王都。


 それを止める騎士団も今は行方が判っていない状態なので、人々の流出を止める術は持ち合わせてないのだ。


「何たる事だ…何たる失態。

 エヴァン…そなたが浅はかな行動をしておらねば、

 このような事態になっておらぬと言う事を理解できるか?」


 謹慎処分では甘い、極刑に処すべき…そんな訴えが多く上がり王も決断をすべき時が来たと考え、エヴァンを謹慎棟から連れ出して貰い問い正す事にしたのだ。


 が、お花畑な頭で理解できるハズも無く…。


「何故です?

 私は見た目が美しい女性が聖女だと判断したまでの事、

 ここまで騒ぎになる事自体、

 間違っているのでしょう。

 早く彼女に逢わせて下さい。

 私の未来の妻と逢えないなど、

 あってはならぬ事でございます」


「未だ言うか。

 そなたはを謁見の間に連れて来たか、

 と言う事すら抜け落ちておるのか?!」


「誰と申されましても、

 聖女様をお連れし・・・た・・・あれ?」


 少ない脳みそから引き出した記憶にあったのは、自分が男性を女性と見間違ってしまった、と言う光景だけだった。


 一緒に聖女が召喚され彼女の存在を無視して去った、と言う事は覚えていないのだ。


「どうした?そなたが連れて来たのは聖女だったのか!?」


「…いえ…男性…ですが…

 あの時…で、

 女性とは人物が…いた…?」


 召喚の儀式に参加していた宰相に目を向け、自分の記憶に残らなかった事を聞く事にしたのだ。


「…エヴァン様は、

 謁見の間に連れて来られました方しか、

 見ておりませんでした。

 残された女性は怒り心頭のご様子で、

 城から出て行かれ行方は探しておりますが、

 遺体すら見つかっておりませぬ」


「エヴァン、そなたには失望したぞ。

 民からも処分が甘い、

 聖女様をないがしろにした代償は大きいと、

 訴えが多数寄せられておる。

 したがって、そなたの王位継承権を剥奪の上、

 隣国の姫へ婿として向かわせる」


「そ、そんな父上!

 あんまりで御座います!

 隣国の姫君は年増で見目が悪いと言う噂では有りませんか!

 そのような姫に婿?!有り得ません!」


「そなたは継承権を剥奪されたのだぞ?

 それくらいしなければ民の暴動を止める事など、

 難しくなっておるのだ。

 しかも、そなたの身勝手な思い込みの所為せいで、な」


「ち…陛下!隣国だけはお許し下さい!!陛下!!」


 流石に身分を剥奪されたと言われ、改心したのでは無いが言い直す辺りは、褒めるべきではあるが、この脳内お花畑は元の鞘に収まってしまうのだからタチが悪い。


「宰相よ、早々にこやつの婿入りを通達し、

 向かわせる用意をして欲しい。

 聖女様が見つからぬ今、

 この王都も年月を掛けずとも崩壊して行くであろう。

 その覚悟もしておかねばならぬ」


「・・・御意」


「父上!お待ち下さい父上!!」


 脳内お花畑なエヴァンの叫びもむなしく、王は謁見の間から自室へと戻り身辺整理を始める事となったのだ

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