聖女の結婚

 晴れ渡る日差しの元、王都は聖女とアレンの結婚を祝う為、人々は通過するであろう馬車道へ花々を飾り立てていた。


「今回、異世界から来られた聖女様は、

 全てを終わらせたと聞いている。

 何とも素晴らしい方であらせられるな」


「ああ!300年に1度、

 異世界から呼び寄せていた歴史を閉じ、

 封印してしまわれたのだからな、

 感謝以外の言葉は無いだろう」


「それにしてもアレン様と聖女様の結婚式を、

 私たちまで祝えるのは有難いわねぇ」


「聖女様のお望みだそうだ」


 一度は聖なる村へと逃げて居た人々の顔から不安は綺麗に取り除かれ、2人の新たなる門出を祝う為に嬉しそうだ。


 刻一刻と王城ではアレンとサーヤの結婚式が始まる時間が迫り、サーヤは緊張のピークを迎えている。




 * * * *


 も、もう!どうして日本では無く異世界でお嫁さんになるハメになってしまったの?!それも王家…王子様のお嫁さんとか…夢じゃないでしょうね!?


 何度も何度も自分の顔を軽くたたいて見るものの、現実だと言う事が突き付けられるだけだった。


 本来なら、彼女の父親がエスコートするおだが、サーヤは日本で孤児。


 そして異世界に単身、送り込まれたのだから、父親役は聖なる村へ案内して養父となってくれたイアンが担当する事となった。


 レイはサクヤがサーヤと言う聖女だと、初めて知ったのって、私が依頼に村へ戻った時だったのよね。


 あの時のレイは、目が飛び出るんじゃないかしら?と言うくらいに驚いてたわ。


 メリーはアレン王子と結婚が決まった事を凄く喜んでくれたし、レイが気になって居ると告白されて、ちょっとドギマギしてしまったのよね。


 これから私はグランシオールで生きて行かなければならない。


 その不安はアレン様が解消してくれる筈・・・。


 こんなに幸せで良いのかしら?


 異世界あっちでは、オッドアイで髪色は光の加減で金色・・・それ故、不気味がられ、嫌われいじめめられて来た。


 それなのにグラシオールは、オッドアイを持つ女性を聖女だと言ってうやまってくれたものね。


 過去を振り返って居たサーヤにイアンから声が掛かる。


「サーヤ様、そろそろ時間ですよ」


「・・・はい・・・」


 ベールを被り、椅子から立ち上がると、控えていた侍女が扉を開け始め、イアンがサーヤを見て嬉しそうになった。


「美しいな。貴女が我が村に来た時は、

 王家に対して怒りしか持っておらず、

 手配されてしまった状態だったのにな。

 それが今は幸せそうな笑顔だ。

 それもこれもアレン王子のお陰かい?」


「イアンさん…いえ・・・義父とうさん、

 アレン様がサクヤを友として・・・

 サーヤを今から妻として接して下さると、

 約束して下さいましたから・・・」


「では、アレン様の元へ…」




 * * * *


 衣擦れの音が廊下に響き、王城内の制度へと向かう。


 入り口を固めて居た騎士が扉を左右…観音開きで開き、中から集まった貴族たちの注目が、一気に集まる。


凛とした佇まいで、正々堂々と進み、アレンの横まで来るとイアンが


「二度と王家が裏切らぬよう、願います」


と脅すような発言をしてしまう。


「勿論、裏切らないと約束しましたので、

 幸福だと毎日、思って頂けるよう努力しましょう」


 アレンの惚気のろけた言葉に頬を赤く染めたサーヤ。


 アレンに恋したのが初恋だから仕方ない。


 どうして彼は、私を愛してくれるのかしら?聖女だから…では無いと言ってくれた。


 一目で恋に落ちていた…と。信じて良いのかしら…?


 サーヤは不安を隠し切れないのだが、誓いの言葉を交わし、指輪を交換して誓いの口づけの瞬間


「サクヤでありサーヤ、

 一生涯、君を幸せにすると歴代の聖女の前で宣言させて貰うよ」


 と歴代聖女の肖像画レリーフが飾られた聖堂で、誓いを立てサーヤは、アレンの言葉を信じようと瞳を閉じ、触れるだけの口づけを交わし、新たな王と王妃が誕生し、サーヤは聖女として…サクヤとして…グランシオールでの生活が始まる事となるだろう


=完=


 と言いつつ番外編があったりする

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