聖女との結婚に向けて・・・

 * * * *


 龍王を封印してから1年が経過し、聖なる村にのがれていた人々は、王都シオールに戻り始め、アレンを支えるべく、戻って来た使用人たちは、慌ただしく走り回っていた。


 それもその筈、アレンと聖女が結婚する日時が決まったのだ。


 洞窟の牢屋で反省していた王と王妃、そしてエヴァンと宰相は、王城に戻されたものの、エヴァンは洞窟の牢屋から王城の牢屋へと移されただけだった。


 王と王妃そして宰相の烙印はサーヤが解除し、開放された王と王妃はアレンに目通りの許可を貰う事にした。


「アレン、聖女様との面会を許可してくれないだろうか?

 正式な謝罪をしておらぬので、謝罪を申し入れたいのだ」


「・・・父上は聖女を探し出す為に手配してしまった、

 と言う事実を・・・その事が聖女で有る彼女を傷つけてしまった、

 と言う事を判っておられるのですか?」


「十分、承知しておる。

 エヴァンが馬鹿な事をした、と宰相から聞かされ、

 聖女様が王都を去ってしまったと聞き、

 私は愚かにも聖女様を手配してしまった。

 罪人でも無い聖女様を『探し』『保護して欲しい』と願うどころか、

 罪人と同じ扱いで通達を出し、

 指名手配した事実は変えられぬ。

 その事も含め、謝罪したいのだ」


「・・・判りました。聖女様に聞いてみましょう」


 許される事は無いだろう。


 それでも謝罪したい、と望む父親の希望をサーヤに伝えるべく、色々と準備に忙しくしているサーヤことサクヤの元へと向かった。



 * * * *


 「サクヤ」


「アレン様、如何いかがなさいましたか?」


「実は父上が聖女様に謝罪を申し入れたいそうなのだが、

 面会は可能だろうか?」


「・・・今夜、謁見の間に向かって事にしましょう」


「有難い・・・」


 使用人がいる前では、サクヤはサーヤとして振る舞う事は決してない。


 だからこそ「向かう」と断言するのではなく「向かって頂く」と言葉にしたのだ。


(どんな顔で謝罪するのか判らないけど、

 逢うのまで許さない…じゃあ悪役よねぇ…。

 だったら面会して謝罪の言葉に誠実さが有れば、

 水に流す事にしましょう。

 もし、それすら感じなかったら死ぬまで、

 言葉を封印しましょうかしらね)


 使用人たちに次々と作業依頼をこなしつつ、聖女が居室として使っている部屋へ「言葉を伝える為に向かっている風」を装って向かい、中にいるよう見せかけ、室内へと消え、サクヤからサーヤへと変わって行く。


 彼女であり彼である、と言う事実は、聖女付きの侍女だけが知っていて、誰にも本当の事を言わないと契約を交わし、身の回りを手伝って貰っているのだ。



 * * * *


「今夜、謁見の間で王様と王妃様に、

 面会する事となりましたので、準備をお願いします」


「畏まりました聖女様。

 ウェディングドレスの試着を頼まれておりますが、

 今から向かわれますか?」


「そうね。行きます」


 聖女がサクヤだ、と言う事に気付かれない対策として、聖女の顔を挙式が終わるまで見てはならぬ、と言う伝説を利用し、ベールを頭から顔を隠すように被る事になった。


 衣装をドレスに着替えると試着室へと向かい、微調整が行われた。


 そして、その夜・・・王は正式な謝罪を聖女に行い許され、アレンとの結婚式への同席が認められたのだ

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